第22話 真実を求めて ~Before 61 Days~

 プラトン採掘基地の港は二つある。


 一つは採掘した鉱石を運搬する資源港だ。

 資源港は管制棟が建っている周辺一帯であり、船はちゅうで係留するか、月面に直に着陸する。

 整地はしているが、「空いているので、どうぞ泊めてください」という状態だ。


 地下にある採掘場に繋がる出入り口から鉱石を運び出して乗せる。

 価値がない岩石も運び出す時は、膨大な宙に岩石の塊が漂って異世界を思わせる幻想的な景色になる。


 もう一つの港は船の整備を行えるドックだ。

 ドック全体を密閉して気圧を保つことができる。

 設備は無人化されているので、一人で船を修理することも可能だ。


 ドックに着いた私は一通り設備を稼働させ、異常がないか点検していく。

 その後、ドックに併設されている格納庫に入る。


 「あった」


 一人乗りの小型宇宙艇。

 港で貨物の運搬に使用することを想定しているため、操縦席も剥き出しだ。

 必ず活動服を着こんで、搭乗する必要がある。


 宇宙艇を外に押し出す。

 操縦席に座ると熱量エネルギーを供給して、制御システムに異常がないか確認する。

 軽く動力に火を入れ、宇宙艇を飛行させる。


 一年位、乗っていなかったが異常はないようだ。

 基地の方を振り返る。


 この飛行艇ならルナシティまで往復で、三時間位で行ける。

 もうすぐ、お昼だ。

 現地調査に使える時間は二時間か。


 悪いことしている自覚はある。

 悪い行いをすることは望んでいない。


 それでも知りたいんだ。

 オキナと正しく向き合うために、必要なことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る