第17話 会談 その1 ~Before 62 Days~
椅子にもたれかかりながら、
向かいの空席に、
明らかに
彼女は私に対して警戒感を抱いていない。
彼女から月の現状を聞き出せればそれでよい。
船の修復に協力してもらって、共に地球に帰還すればいい。
そうなれば自分の目的も叶うはずだ。
さて、そろそろ連絡が来ても良い時間帯だ。
こちらから連絡してみるか。
「そっとしておいてくれないか」
部屋の入り口から呼びかけられた。
一瞬、体を硬直させ、閉じた扉を見る。
「あの子なりに思案して、学習している最中だ。正しい徳を積もうしている若者を誘惑せんでくれ」
扉が開いた。
老人が一人、立っている。
頬はやせこけ、濃い髭面と顔の皺が老人の積み重ねてきた苦難を表している。
年齢は七十歳を超え、肉体が衰えているように見えるが、肉食獣のような鋭い眼光をこちらに向けている。
敵意だ。
あの
「ご
席から立ち上がり、床に片膝をつき、
彼と自分は対等ではない。
それを態度で示す必要がある。
「
「地球が今更、月に
「評議会から月の現状調査を命じられております。
「
「月から地球の様子は見えている。生存圏の一つを放棄したのが、復興への道筋か」
「恐れながら、住民は
「生存圏の拡大を辞め、守勢に転じたところで先は見えておろう」
「もう地球にはないのだろう。新たなホシクズが。放棄された
やはり
だからこそ、月の開発計画や他の計画が推進されてきた。
「今の地上は、かつての未来計画で予測された中でも最悪の部類だ。いずれ、統治機構が崩壊し、人類は揺るやかな絶滅に至る」
それを
雰囲気を偽るには、まだ若過ぎる。
「貴様が命じられたのは、調査ではなく月のホシクズを回収することだな。それで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます