第5話

8月8日、花火大会当日。


自身の浴衣姿に唖然とした。




「驚くほど似合わない……」


「何故?可愛いじゃない!」




叔母さんが着付けしてくれた浴衣には赤の椿が派手に広がり、

薄い私の顔にはとても似合わなかった。



「……じゃあいってきます。」



叔母さんの笑った顔で少し自信が出た。




普段しないお化粧。付け慣れてない髪飾り。

履きなれてない下駄。見慣れないお祭り景色。




「よっ、夏。浴衣かわいーじゃん」



そして、横にいる君。




「葵も、、浴衣似合ってるね。」



慣れない景色に驚きが隠せず彼の言葉にまで動揺をしてしまう。



「どうした?」


「な、何でもないよ。それより真希は?」



プルルルルルル


「あ、ごめん。電話、多分真希からだ。もしもし?」


「あ、出た。ごめん二人とも!私屋台の店番やらされちゃってさあ……ごめんだけど二人で回ってくんない?」


「そりゃ仕方ねえー、店どこ?行くよ」


「焼きそば屋ー、お父さんの声目立つからすぐ分かるよ」


「了解。んじゃまたなー」


「真希、なんて?」


「親父の屋台手伝わなきゃなんねーらしいから二人で回って、との事です。」


「二人……」


「俺と二人でも平気?」


「葵がいいなら私は平気だよ」


「俺はむしろラッキーて感じ」


「え、?どういうこと?」


「まあまあ、でなんか食いたいもんある?」


「りんご飴……!」


「行くか!」



葵は颯爽と私の腕を引っ張る。


その横顔が少しずるかった。




きっと私は特別な気持ちとして彼を見てるのかもしれない。

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最後の贈り物 天風羅 @tempuratabetainari

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