15
氷漬けになった藍子は身動きが取れない。その間、藍子はこれまでに出会った人々の事を考えた。これまでに出会った人々のためにも負けられない。必ず世界を救うんだ。そして、元の姿に戻るんだ。その気持ちで生きていた。
だが突然、藍子の体は光に包まれた。そして、氷が粉々に砕けた。それを見たダークドラゴンは驚いた。まさか、こんな事が起こるとは。氷漬けになったのに、氷を砕くとは。ものすごい生命力だ。こんなにも強い怪獣は初めてだ。
「うっ、うっ! うわぁぁぁぁぁぁ!」
ダークドラゴンは悲鳴を上げている。まさかこんな事になるとは。だが、何が何でもこいつを倒さなければ。この世界を暗黒に導くためにも。世界を我が物にするためにも。
藍子はダークドラゴンをじっと見つめている。何が何でも負けられない。みんなのためにも。だが、どうやったらダークドラゴンを倒せるのか、わからない。
「な、何?」
その時、まばゆい光が差し込んだ。その光は、藍子を包んだ。藍子は驚いている。自分の身に何が起こっているんだろう。全く想像できない。
「な、何だ、この光は?」
ダークドラゴンも驚いた。氷が砕けた後、何が起こるんだろう。こんな怪獣、見た事がない。みんなの思いが奇跡を起こしているんだろうか? いや、そんなことはない。みんなの願いは届かないはずだ。このダークドラゴンに、世界中の人々の思いなど、届くはずがないのだ。
だが、藍子の耳には、世界中の人々の声が聞こえる。自分に秘められた力だろうか?
「藍子さん、負けないで!」
「必ず世界を救って!」
「ダークドラゴンなんか、倒せ!」
「負けるな! 世界の運命はお前にかかっているんだぞ!」
これまでに出会った人々の声が聞こえる。どうしてこんな遠い所まで思いが届くんだろう。藍子は信じられなかった。その声は力となり、藍子の力になっていく。藍子もそれを感じていた。そして、自分が大きくなっていくのを感じていた。
「な、何だ? みんなの力が・・・」
徐々に大きくなる藍子を見て、ダークドラゴンは驚いた。怪獣が大きくなるとは。またもやまさかの出来事だ。ダークドラゴンは徐々に焦り出した。藍子に負け、倒されるんじゃないかと思った。
「私は、世界を救う光になるんだ!」
その時、藍子の口に力がみなぎった。そして、光の息が出来上がっていく。その光は、世界を照らす光のようだ。その時、藍子は思った。みんなの思いが詰まったこの光の息で、ダークドラゴンを倒すんだ。
藍子は光の息を吐いた。それを浴びたダークドラゴンは苦しんでいる。こんな奴に私は倒されるのか? そんなの嫌だ。だが、とても強い。このまま自分が殺されてしまうんだろうか?
「うわぁぁぁぁぁ!」
大きな声を上げて、ダークドラゴンは消えていった。ダークドラゴンは藍子に倒された。藍子は驚いた。まさか、こんな力が自分に秘められていたとは。だが、その力は怪獣の力だ。あってはならない。自分は人間に戻らなければならない。
「や、やったのか・・・」
「そうね」
藍子は息を切らしている。あまりにも気を使いすぎたのだろう。ジームは心配そうに見ている。苦しそうだが、命に別状はないようだ。そして、藍子は元の人間の姿になっていく。それを見て、藍子はほっとした。やっと人間の姿に戻れた。そして何より、この世界に平和が戻った。
「藍子さん、ありがとうね、私の名前は京子」
「き、京子?」
それとともに、ジームは京子の姿になっていく。藍子は驚いた。まさか、ジームが京子だったとは。きっと、天国の京子が自分にチャンスを与えたんだ。
「そう、あなたの娘!」
ジーム改め京子は笑みを浮かべた。それとともに、藍子はまばゆい光に包まれた。今度は何だろう。全く想像ができない。
光が収まると、そこは自分の家だ。いつもの日常の風景だ。何日ぶりだろう。もう何日も刑務所にいたので、ここにいるとホッとする。だが、どうしてここにいるんだろう。全くわからない。
今は夜で、とても静かだ。月の光が窓から差し込んでくる。
「ん? 夢か?」
藍子はベッドから起きて、辺りを見渡した。その先には、京子のベッドがある。京子はかわいらしく寝ている。よく見ると、京子の顔にアザがない。まだ虐待される前のようだ。藍子はほっとした。まだここなら、人生をやり直せるだろう。これからは虐待をせず、京子と楽しい日々を過ごそう。
「京子・・・」
藍子はジーム、いや京子の事を思い出した。ダークドラゴンが倒された今、あの世界はどうなっているんだろう。とても気になる。だけど、その世界にはもう戻れない。夢の中でしか、みんなに会えない。
「ゆ、夢だったのか?」
再び、藍子はベッドに横になり、寝入った。そしてその中で、ジームと再会した。ジームはドラゴンの姿で藍子を見ている。藍子は嬉しそうな表情だ。再びジームに会えた。夢の中とはいえ、とても嬉しい。
藍子はジームの背中に乗った。ジームは大きな翼を広げ、飛び立った。藍子は空から地上の風景を見ている。よく見てみると、これまでに出会い、助けた人々が手を振っている。そして、みんなが幸せそうな表情をしている。私は、彼らの笑顔を取り戻したんだ。この世界の平和を取り戻したんだ。これで、京子を虐待死させた事を償う事ができたかな? それに、虐待する以前に時間を戻してくれた。これはきっと、神様からのプレゼントかもしれない。そのプレゼントをしっかりと受け取って、これからの人生を大切にしていこう。そして、京子の成長を見守っていこう。きっと彼らも、私を見守っているだろう。そう思うと、彼らのためにも恥ずかしい日々を送りたくないと思ってくる。
私はこの日々を忘れない。ジームと一緒に北に向かい、自分を見つめなおした、かけがえのない7日間を。
怪獣は北へ向かう 口羽龍 @ryo_kuchiba
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