オッサン2(猫喫茶利用型)

 マーサはウータンを連れて街に戻った。冒険者ギルドへ行く前に、モンスター討伐で荒れた心を静める為に、猫喫茶に来ていた。

「ウータン。これが猫だよ?ウータンと一緒なの?」

 マータンはウータンが豚であることを認めさせようとしていた。それは、意地悪な心からではなく、純粋に間違っている認識を正そうとしての事だった。

「一緒でしゅね。毛が生えてて、目があって、フワフワで可愛いでしゅ」

「うん、そうなんだけど、フォルムが違うの分かる?」

「?」

(なんで分からないのこの子……)

「ウータン。コブタも可愛いよ」

「そうでしゅね」

「だから、ウータンはコブタなのよ」

「?」

(なんで、理解してくれないんだろう?)

 マーサはウータンの認識を改める事に失敗した。


 そんなマーサに中年男性が話しかけてきた。

「その子はあなたのペットですか?可愛いですね」

「ええ、そうなんですよ。この子、凄いんですよ。人間の言葉が分かるんです」

「へぇ~。そいつは凄いな、僕は……」

「BAN(即死魔法)」

 中年男性は白目をむいてその場に崩れ落ちた。

「お客様、大丈夫ですか?」

 店員が中年男性が倒れたのを見て、駆け寄ってきた。

「息をしてない……。死んでる!!!!!!」

「STOP(時間停止魔法)」

「ちょっとウータン!なんで殺したの!」

 時間が停止した世界でマーサだけは動けた。


「まず、猫喫茶に居るのに女性客に話しかけた時点で有罪でしゅ」

「え?何で?ウータンが可愛いから話しかけてきただけでしょ?」

「ダメでしゅ。可愛いのは、そこかしこに居るでしゅ。なのにマータンに話しかけて来ました。出会い目的のゴミでしゅ」

「ちょっと、厳しすぎんじゃない?」

「そもそも、ウータンの魔法は神様が与えてくれたものでしゅ、その魔法で死ぬという事は、オッサンは有罪でしゅ」

「その理論、おかしくない?ウータンや神様が間違ってることってない?」

「神様に間違いはないでしゅよ?」

 ウータンは、つぶらな瞳でマーサに答えた。

「それならいいけど、何で時間を止めているの?」

「ああ、店員しゃんには刺激が強かったみたいでしゅから、オッサンが存在しないことにするために時間を止めたでしゅ」

「え?どういうこと?」

「こう言う事でしゅ。DELETE(存在削除)」

 ウータンの魔法で、中年男性の存在が消滅した。彼は、生まれなかったことにされてしまった。

「神様、もう良いでしゅよ」

 ウータンがそう言うと時が動き出した。


 店員は何事も無かったように立ち上がり通常業務に戻っていった。

「これで、一件落着でしゅ」

(アレ?これで良いんだっけ?一人の人間が無かったことにされてる。私は大丈夫なの?)

 だが、マーサの前に1匹の猫が来たことで、状況は変わった。

「可愛い~~~!ねぇ、撫でても良い?」

「なでるがよいと言ってましゅ」

「ウータン。猫語分かるの?凄いね~。猫さん可愛い♡♡♡」

 マーサは猫を撫でるのに夢中で、ウータンがやった事を深く考えるのを止めた。

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自分をネコだと思い込んでいるブタ野郎は、今日も理由を見つけてオッサンを処刑する 絶華望(たちばなのぞむ) @nozomu_tatibana

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