自分をネコだと思い込んでいるブタ野郎は、今日も理由を見つけてオッサンを処刑する

絶華望(たちばなのぞむ)

オッサン1(ペット利用型)

 とある剣と魔法のファンタジー世界で駆け出しの冒険者マーサ(20歳女戦士)は、冒険者ギルドの依頼『スライム討伐』の帰りに、奇妙な動物に出会った。

 それは、ブタのような生き物で、毛は白く長くフサフサで全体的にモフモフしており、体は小さくまんまるで、大きさは500mlのペットボトルサイズだった。

「ナニコレ、かわいい~(ハート)」

 マーサは、その動物の可愛さに心を奪われ駆け寄って抱き上げた。その動物は逃げるでもなく怖がるでもなく、のほほんとマーサにされるがままだった。

 マーサは、ブタの様な動物を撫でながら話しかけた。

「お名前、何て言うの?名前がないなら私が付けて上げりゅ(ハート)」

 マーサは、答えなど期待していなかった。だが、その動物は言った。

「ウータンでしゅ」

「ウータン?しゃべれるの?かわいい~。私はマーサ、マーサ、言えるかなこれ」

 マーサのテンションは、限界突破して上がっていた。

「マータン?」

「かわいい~。言えないの~。いいよ~マータンで」

「マータン」

「かわいい~。ねぇほっぺぷにぷにしていい?」

「いいよ~」

「良いの?料金はいくら取るの?」

「タダでいいでしゅ」

「良いの、タダなの!優しい~」

 マーサは、よく分からないハイテンションのまま、ウータンのぷにぷにのほっぺをぷにぷにしていた。


 そこへ、オッサンの冒険者が通りかかり、ウータンのほっぺをぷにぷにしていたマーサに声をかけた。

「かわいい動物ですね。なんの動物ですか?」

「コブタです」

 マーサの答えにウータンが、何を言ってるのか分からないと言った表情で、次のように答えた。

「ウータンはネコでしゅよ(困惑)」

「かわいい~。ネコだと思ってるの!かわいい~」

「そうですか、変わったネコさんですね。もし、よろしければ、僕にも触らせてくれませんか?」

「ウータン、お兄さんも触りたいって、言ってるよ?触らせてあげる?」

「BAN(即死魔法)」

 ウータンが魔法を使うとオッサンは白目を剥いて膝から崩れ落ちて即死した。

「え?ウータン何したの?」

「変質者をコロチマチタ」

「え?変質者?違うよ!お兄さんはウータンに触りたかっただけだよ?」

「ちがうでしゅ、オッサンは、ウータンに触るふりしてマータンに触ろうとしてたでしゅ、だから死刑に処しまちた」

「そんな事ないよウータン、もしそうだとしても、殺さずに街の衛兵(警察のようなもの)に渡さないとダメだよ(メッ)」

「ダイジョブでしゅ、ウータンは神様の使いで来た天使でしゅ、独断でオッサンを殺す権利をもってましゅ」

「そうなの?でも、いきなり殺しちゃメだよ?ウータン」

 マーサの言葉を理解できなかったウータンは、マーサの顔を見て首をかしげるだけだった。

「ウータン、分からないの?」

「?」

 ウータンは『なんのこと?』みたいな顔をしていた。

「犯した罪に対して罰が重すぎだよ!」

「えっと~」

 ウータンはそう言いながら、どこからかマニュアルのようなものを取り出し読み上げた。

「性犯罪者の再犯率は異常に高く改心が見込めない為、死刑に処すことが天界で決まりまちたでしゅ。また、性犯罪者の遺伝子が残ると犯罪が無くならないので、軽微な罪であっても死刑でしゅ」

「かわいい~。そうだったの~。じゃあ~しかたないね~。でも、死体どうしよう?このままは不味いよね。最悪の場合、私が殺した事になるのかな?」

 現実に戻ったマーサは、急に心配になってきた。

「ダイジョブでしゅ、ほら、お迎えがきたでしゅよ」

 ウータンが指し示す空からマッチョの天使たちが現れ、処刑されたオッサンの死体を持ち帰った。

「ウータン、本当に天使だったの?」

「そうでしゅ、マータンなら、ウータンを飼ってもいいでしゅよ?」

(え?どうしよう?かわいいけど、飼いたいけど、天使って飼って大丈夫なの?分からない、分からないけど、かわいいから飼っちゃう♪)

「ありがとうウータン。マータン大事に育てるからね(ヨシヨシ)」


 こうして、冒険者マーサとブタの姿をしているのに自分はネコであると主張するウータンの世にはびこる犯罪者オッサンを処刑する旅が始まった。

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