嵐の前の空
これは今から一年前高校2年生の夏、僕が自分を幸せだと疑わなかったときの話
「父さんいってらっしゃい」「あなた、いってらっしゃい」夏休み真っただ中の僕と専業主婦の母さんはこの猛暑の中主張に行く立派なサラリーマンである父さんを見送った。東京から大坂に行きそこから三か月以上の長期主張だった。なんでも大掛かりなプロジェクトらしい。その辺はよくわからないが。そういうわけで次会うのは秋ごろになる予定で少し寂しくなるなと思いながらも父さんが「行ってきます!二人ともお土産楽しみにしてろよ~」なんてのんきなこと言うもんだから最後に三人笑って送り出した。
こんな風に僕等新路(にいろ)一家は他から見ても仲のいい家族だったと思う。
最高の家族だ、なんでも言い合えるし、 家にいて三人でいるのが一番好きだ。
父が出張に行き母親と二人での生活になった。僕も思春期と呼ばれる時期ではあったが母のことを煩わしくなんて思ったこともなかったので二人で父がいないあいだ長い長い夏休みを過ごした。父がいない日々はいつもより少し味気なくていつもより少し退屈な時間を過ごした。今はのんびりとした生活を送っているが来年になれば進路を決めることになる。僕自身は成績も悪くないし、人間として最低限の常識は持っているので生きてはいけるだろう。僕が目指すものは両親を幸せにしてあげることそれが一番の目標だ。そのために生きていけたらなと思う。それだけ両親のことが好きだから一緒に入れるときは両親と一緒にいたいのだ。それだというのにせっかくの夏休みに出張だなんてついてなさすぎる。この夏はみんなでいろんな事がやりたかったのに なんて考えても仕方がない。今僕ができることは父を応援して無事に帰ってくるのを祈るだけだ
そうやって父が帰ってくるのを当たり前のように思っていた。
人間はそうやって現実から目を背ける。小さな可能性を都合の悪い時だけ切り捨てる。必ずそこに存在するリスクをないものとして扱う。だから急な事態に対処できない。
だからこそ一つのイレギュラーですべてが壊れる。
僕もその程度の人間だったからこそ積み重ねてきたものすべてをひと夏に奪い去られたんだ。
いつかの夏が続く
そして羽ばたく僕等 ピッキー @pikkey
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。そして羽ばたく僕等 の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます