第27話

いや武士かよ。


アニメとかでよくあるよねこういうシーン。

戦いが始まったと思ったら高速で2人が動いて、その結果最後にどちらか片方が倒れるってやつ。


でもさ、実際にはそんなことにはそうそうならないんだわ。

だって僕達ってゴキブリと虎だぜ?

武器も刀じゃなくて牙と爪だ。


今こうして僕とあいつが高速で動いて位置が入れ替わったのも、お互いに速すぎて攻撃が当たらなかっただけだ。


それなのに、

それなのになぜ僕たちは今残心をしている!


こんなことする必要は無い、なのに何故か気がついたらこんな行動を取っていた。

これはそういうものなのか?

このシチュエーションになると全員が全員残心を行うのは演出上の問題じゃなくて生き物としての性質だったのか?


まあ、いい。

さっさと振り向いて戦闘再開としよう。


振り向くとそこにはドヤ顔(?)を決めている虎。


いやなんでお前はそんな誇らしげなんだよ!

互いに攻撃を当てられなかったことくらいお前も分かってるだろ!

そしてその期待に満ち溢れた眼差しをやめろ!

倒れねえから!ぜってえ倒れねえから!


時間が経つにすれて虎の顔が少しづつ歪んでいく。


やめろその顔!

なんかこっちが悪いことしてるみたいじゃねえか!

泣きそうになるな!

頼むから泣きそうになるな!


そして虎はなにかに絶望したような顔をした後、体をこちらに向け直した。


っく、罪悪感がすごい...

まさかこれもやつの攻撃のひとつ...なわけあるか!

こんな攻撃あってたまるか!


はあ、なんか疲れたな。

だがやっと向こうも戦闘態勢になったようだ。

第2ラウンドといこうじゃないか。


これが本当の「遊びは終わりだ。」ってやつか?


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遊びの終わった僕と『トライガー』の戦いはそれはもう白熱していた。


グアアアオオオオオオ!!


『パワーファング』!


っっ....!

これで10発目。

攻撃、あったんねー。

互いに速すぎて、相対速度がえらいことになってるんだわ。


一応相手に『重力魔法』はかけてるんだけど...

あの強靭な足の前には大して効果はなさそうだな。

過剰重力グラビティ・オーバー』でないと意味が無い...なら一旦魔法は切っておくか。

魔力は節約すべし。


重力魔法から解放された『トライガー』は僅かながらにスピードを上げ、こちらに迫ってくる。


一応少しだけは効果があったのか。

だが素の速さでも僕の方が少し速いんだよな。


自分に放たれる強靭な爪の攻撃を僕は余裕をもって躱す。


躱すだけなら割と簡単。

だが攻撃が当たらないのはこちらも一緒。

やはり僕の速度をもっと上げる、もしくは相手に遅くなってもらうしかないな。

どちらにせよもうちょい速度に差が欲しいってことだ。

こちらの速度が速くなれば僕はもっと速く体を動かせるようになるので相手に攻撃を与えられる、相手の速度が遅くなってくれれば攻撃を当てやすくなってダメージを与えられる。


過剰重力グラビティ・オーバー』を使うのは絶対。

だがこれだけじゃあそこまでの差はつかないだろう。

雑魚狩りをするには最適の相手の動きを遅くする『重力魔法』は強敵相手にはあまり役に立たない。

相手の足がムキムキだったりすると重力を重くしたところで大して変わらないからね。


ならば自分の速度をあげるしかない、か。


その方法に心当たりはある。

だが正直使いたくは無いっていうのが本音なんだよなぁ。

その方法とはズバリ、相手の重力を重くするのの逆で自分の重力を軽くすればいいじゃない、というものだ。

まあこんな方法割と誰でも思いつくだろう。


だがこの方法にも懸念点があるのだ。

自分の重力を急に軽くするんだ、制御に失敗した時に大変なことになる可能性がある。

宇宙の彼方にレッツゴーするのも嫌だし、速すぎて歯止め効かずにそこら辺の岩に突っ込むのも嫌だ。

出来れば1回でも練習を挟んでから使いたいものだ。


だがそんなことを考えている間も『トライガー』の攻撃は止まらない。


でも埒が明かないよなぁ。


うーん。

結局使わなくちゃいけないということなのか。

まあやらない後悔よりやる後悔とも言う。


仕方ない。

いっちょやるか〜!


まずは『過剰重力』グラビティ・オーバー


「『我が力は星の力』『存在を理解することすら出来ない大いなる力』『だが今汝はその身をもって知ることになろう』」


「『過剰重力グラビティ・オーバー』」


魔法の発動と同時に『トライガー』の動きが少し鈍る。


だがこれではまだ足りない。

それでは自分にかかる重力を軽くさせよう。

魔法名すら知らない未知の魔法。

だが『魔導』のスキルがあるおかげなのか何となくどのようにして魔法を打てばいいのかがわかる。


「『星の力と共にある者』『それを理解し共存する者よ』『今ここで大いなる力から解き放たれよ』」


「『重力解放グラビティ・リベレーション』」


きた。

きたきたきた!!!


体が軽い。

月に上陸した人間の気持ちってこんな感じだったのか。

これなら奴に攻撃を当てられる。


さあ、行くぜ。


地面を蹴ると、僕の体は目にも止まらぬ速さで突き進み始める。


『トライガー』も急な加速に驚いているようだ。

攻撃を躱そうと体を捻らしているが、それじゃあ遅い。


もらった。


『パワーファング』!!!


『トライガー』は俊敏性には優れているが、耐久性は『ディアブリテイン』と比べると圧倒的に劣っているように見える。


お前じゃ『パワーファング』は受けられねえよ。


その言葉通り『トライガー』の体は『パワーファング』によって引き裂かれる。


ゲームセット、だな。


『トライガー』に致命傷が入ったのが分かり勝ちを確信する。

しかしその直後、僕の体は『トライガー』とは逆の方向へと、超速で跳ね返された。


え?


グガッ


グガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッグガッ




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転生G〜ゴキブリから始まる異世界転生。最強目指して頑張ります〜 @tomato4040

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