敬語の五分類
第1話 尊敬語
尊敬語とは、相手側または第三者の行為・物事・状態などについて、その人物を立てて述べる語です。
動詞を尊敬語にする方法
動詞の尊敬語には「いらっしゃる」「なさる」のように動詞そのものを尊敬の形に言い換える「特定形」と、「お(ご)〜になる」のようにさまざまな語に適用できる「一般形」を付加する場合があります。
特定形の例
する ⇒ なさる
言う ⇒ おっしゃる
行く・来る・いる ⇒ いらっしゃる
来る ⇒ 見える
くれる ⇒ くださる
食べる・飲む ⇒ 召し上がる
着る・風邪をひく・気に入る・年をとる ⇒ 召す
知る・知っている ⇒ ご存じ
一般形の例
★お(ご)〜になる ⇒ お聞きになる・ご出席になる
(見る) ⇒ ご覧になる
(来る) ⇒ おいでになる・お越しになる
(寝る) ⇒ お休みになる
(着る) ⇒ お召しになる
このように、動詞を変えて挟む語もあります。
★〜(ら)れる ⇒ 来られる・始められる・聞かれる・出席される
★〜なさる、ご〜なさる ⇒ 「◯◯する」というサ行変格活用動詞については、「する」を尊敬語特定形「なさる」にすることで尊敬語化できます。「出席なさる」。
この形へさらに「ご」を付けることもあります。「ご出席なさる」
ただし「ご〜なさる」は謙譲語Iの一般形「ご〜する」の「する」を尊敬語の特定形「なさる」に切り替えたものなので、敬語のブレを感じさせます。
★お(ご)〜くださる ⇒ 相手の行為がこちらの利益になってありがたい、ということを表現する「〜してくれる」という語形があります。「考えてくれる」。
この「くれる」を尊敬語の特定形「くださる」にした「考えてくださる」と表現できますが、これ以外にも「する動詞」の語幹や動詞の連用形で名詞化した形から「お(ご)〜くださる」という形を作ることもあります。「お考えくださる」「ご指導くださる」
★お(ご)〜だ ⇒ する動詞の語幹(「出席(する)」)や動詞の連用形で名詞化した語(考える⇒考え)を「お(ご)〜だ」で挟んで尊敬表現を作れる。「考える」⇒「お考えだ」、「出席する」⇒「ご出席だ」。
尊敬するべき本人にではなく、第三者に対して使うことが多い。部下に「山田様がお帰りだ」と伝えるような場合です。
◎敬意の高さでいえば、
(1)特定形 例「召し上がる」
(2)一般形「お(ご)〜になる」 例「お飲みになる」「お考えになる」
(3)一般形「(ご)〜なさる」 例「飲食なさる」「考えなさる」
※「ご飲食なさる」(謙譲語Iの一般形「お(ご)〜する」の「する」を尊敬語の特定形「なさる」に変えているため、本来「ご〜なさる」は不適切ですが現在は許容されています)
(4)一般形「お(ご)〜くださる」 例「お飲みくださる」「ご飲食くださる」「お考えくださる」
(5)一般形「〜してくださる」 例「飲んでくださる」「考えてくださる」
(6)一般形「〜(られる)」 例「飲まれる」「考えられる」
(7)一般形「お(ご)〜だ」 例「お飲みだ」「お考えだ」
が肌感覚ですが、人により前後するので実際には「慣れ」の要素が強いです。
形容詞・形容動詞が述語のときの尊敬語
単純に形容詞・形容動詞の語頭に「お(ご)」を付けられるものは、一部に限られます。
「お優しい」「お美しい」「ご立派だ」などですね。「お白い」「お難しい」とは言いませんよね。
そのため単に「お(ご)」を付けるだけでなく、さらに「〜ている」「〜てある」「〜でいる」「〜である」のように動詞をプラスしてその尊敬語の特定形である「〜ていらっしゃる」「〜でいらっしゃる」に変えることで比較的に汎用的な尊敬表現が可能となります。
「お白くていらっしゃる」「お美しくていらっしゃる」「ご立派でいらっしゃる」がその形です。
それでも「お難しくていらっしゃる」はなにか変ですよね。「難しい」は語り手の判断であるため、それを相手の判断として尊敬表現すること自体が似合わないからです。
名詞が述語のときの尊敬語
名詞は単に「お」「ご」を付けると美化語になってしまい、尊敬表現にはなりません。
そこでいったん形容動詞と同じく「〜だ」の形にして、それを「〜である」「〜でいる」と動詞にしてから尊敬語の特定形「〜でいらっしゃる」とします。
「お名前でいらっしゃる」の形ですが、「お中学生でいらっしゃる」とは言わないのでこの場合は「中学生でいらっしゃる」と「お(ご)」をとらないこともあります。
名詞そのものを尊敬語とするには
一般には、敬うべき相手にかかわるもの(所有物・側面・作品など)に「お(ご)」を付けたものが名詞としての尊敬語です。「おからだ」「お名前」「お手製」「お導き」「ご住所」「ご厚誼」「ご意見」などですね。
謙譲語Iとは異なり、「する動詞」以外の名詞も尊敬語化できます。
他にもあります。
有名なものは「御(おん)社」「御(ぎょ)物」「御(み)心」「貴信」「玉稿」のように「御」「貴」「玉」などを付けたもの。
「ご高配」「ご尊父」「ご芳名」「ご令息」「ご賢察」のように「ご(御)」とともに「高」「尊」「芳」「令」「賢」を加えるものがあります。
このような「御」「貴」「玉」、「ご高」「ご尊」「ご芳」「ご令」「ご賢」を付けるものは、とくに改まった文書で使われるものです。
どういう語があるかは、たくさん改まった文書に接して慣れるほかありません。
接尾辞「さん・様・殿・氏・方(がた)」や役職名「先生・部長」などを付けてその人を立てます。
最後に
今回は「尊敬語」について述べました。
尊敬語は三分類の頃から変わっていないので、学習するうえでの難しさはありません。
敬語の最たるものである以上、「尊敬語」は不動なのです。
だから、まずは「尊敬語」を使いこなして、相手の動作を立てる表現を身に着けましょう。
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947.敬語篇:尊敬語についてhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054892614724
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