敬語の副読本〜相互尊重の精神

カイ.智水

敬語の学び直し

敬語の概要

第0話 改めて、敬語とは

 学校で敬語を習ったときのことを思い出してみてください。

 分類は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つの分類でしたよね。

 しかし2007年2月、文化審議会が「敬語の指針」を文部科学大臣に答申しました。

 そこでは敬語の分類は五つに増えています。

 「そんな。私が習った敬語じゃもうダメなの?」

 とお考えかもしれませんがご安心ください。

 「謙譲語」が「I」と「II」に分けられ、「丁寧語」から「美化語」が分離しただけです。

 つまり実用のうえでは三分類でも五分類でも違いはありません。


 古く、身分制度が絶対なもので、上下関係もそれに伴って固定されていた時期があります。江戸時代の士農工商などですね。天皇がいちばん上で、将軍、武将、武士と下っていき、商人や農民はつねにこれらよりも下に位置しました。

 だから、昔の敬語は身分によって使い分けていたのですが、昭和の高度成長期あたりから敬語は相対的な立場を表すように変化していきました。


 自分たちの会社の上司は身分が上だから「尊敬語」を使いますが、この上司を他社との会話で持ち出すときは「謙譲語」で語ります。

 けっしてわが社の上司の地位が落ちたわけではありません。

 商談相手を上に持ち上げ、わが社を下げる。相対的な立場によって敬語が変わるのです。


 では「尊敬語」「謙譲語I」「謙譲語II」「丁寧語」「美化語」の五つの概要をお示し致します。





尊敬語

 尊敬語とは、相手側または第三者について、その人物を立てて述べる言葉です。

 「いらっしゃる・おっしゃる・なさる・召し上がる」「お使いになる・ご利用になる」「読まれる・始められる」「お導き・ご出席・お忙しい・ご立派」「(立てるべき人からの)ご説明・お手紙」などです。



謙譲語I

 謙譲語Iとは、自分側から相手側または第三者に向かうものごとについて、その向かう先の人物を立てて述べる言葉です。

 「伺う・申し上げる・お目にかかる・差し上げる」「お届けする・ご案内する」「(立てるべき人物への)お手紙・ご説明」などです。



謙譲語II

 謙譲語IIとは丁重語ともいい、自分側のものごとを、話し相手や文章の読み手に対して丁重に述べる語です。

 「参る・申す・致す・おる・拙者・小社」などです。



丁寧語

 丁寧語とは、話や文章の相手に対して丁寧に述べる語です。

 「です・ます・ございます」などです。



美化語

 美化語とは、物事を美化して述べる語です。

 「お米・お料理」「おなか」などです。





謙譲語の分類

 「行く」の謙譲語は「伺う」と「参る」です。これがなぜ謙譲語Iと謙譲語IIに分かれるのか。

 敬意を立てる相手が異なります。


 「田舎に住む祖父の家に参ります。」は、この話の聞き手に対しての謙譲語です。

 「田舎に住む祖父の家に伺います。」が合わないのは、「伺う」は動作の受け手を立てる謙譲語だからです。

 「祖父」は身内ですから、へりくだるべきは聞き手に対してであり、祖父ではありません。


 では「先生の家に参ります。」と「先生の家に伺います。」は動作の受け手は身内ではなく立てるべき相手なので、動作の受け手に対しての謙譲語である「伺う」が当てはまります。

 もちろん「参る」でも間違いではないのですが、その場合の先生は身内扱いになります。


 だから、謙譲語を使うときに「誰に対してへりくだって言うのか」が「謙譲語I」と「謙譲語II」を分けます。

 動作の受け手が敬意を示すべき人物であり立てるべきときは「伺う」つまり「謙譲語I」を用います。

 動作の受け手が身内で、話し相手を立てて丁重に話すときは「参る」つまり「謙譲語II」を用います。





丁寧語の分類

 これまで丁寧語としてひと括りにされていた「です・ます・ございます」と「お・ご」ですが、新たな区分で「お・ご」は美化語という括りとなりました。

 これは「です・ます・ございます」が聞き手に対して敬意を払った物言いなのに対し、「お・ご」は単語そのものを上品に述べるために用いられる物言いであることに起因します。


 つまり「お茶・ご飯」は、そのものを上品に述べているのです。「茶・めし」ではただのもの扱いですからね。


 尊敬語・謙譲語Iにも「お手紙・ご説明」などが割り振られています。こちらは立てるべき相手とのやりとりを表す言葉なので、動作を伴う敬語として解釈されます。





最後に

 今回から短期集中で「敬語」を取り上げます。

 敬語は日本人なら誰しも学校で習いますが、すべての人に身についているかというとそうでもありません。

 肉体労働などの敬語を必要としない職業に就いているとなかなか勘所がつかめないですよね。

 私は販売業に従事していた時期が長いので、ある程度の敬語は扱えます。

 しかし新たに「五分類」とされた敬語を勉強してみたところ、以前よりはわかりやすくなっているな、と感じました。





 今回の勉強で履修に使った書籍は下記のとおりです。

【参考書籍】

 『日本語検定公式テキスト・例題集 「日本語」上級』東京書籍(税別1100円)


 ぜひ本書籍を購入して、テキストとして役立ててくださいませ。

 私の学習内容よりも深い表現もありますので、より腑に落ちるはずです。




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