ーデートー7
半分利之は強引に司の事を引っ張って歩き始めたのだから、側から見ればこのカップルというのは、女性が男性をリードして歩いている姿にしか見えないだろう。
それに今日の利之というのは、いつも以上にはしゃいでいるのかもしれない。
司が利之の前の現れる前というのは、オフの日はオフの日で部屋で籠り。 外にも出れず一日中ボッーとしているという事しか出来なかったのだが、司が利之の所に来てからは、色々と毎日の生活が楽しくなってきたようにも思える。
きっとこうやって外に出る事さえ簡単な事ではなかったのだから。
こう司が現代へと来てくれて、二人で出掛けられるようになって、ある意味利之からしてみたら有名人になる前の生活を取り戻せたように思えるからなのであろう。
確かに今は利之は女装はしているものの、こう映画館や水族館を女性一人で行くって事は出来ないし、行けたとしても色々な意味で鼓動が爆発しそうな感じでいなければならないのだから。
逆に今は司が居て、側から見れば、二人は完全なカップルでしか見えないのだから、ごく自然な感じでこの人混みの中を居られているのかもしれない。
それに今の時代、女性がリードして動くっていうのはわりと当たり前になってきているのだから、本当にこの二人のカップルというのは自然なのであろう。 それに誰が見ても女装をしている俳優の穂村利之には見えてないのだから。
モデルばりの身長の高いお姉さんにしか見えてないのかもしれない。
人混みの中を歩く中、あるビルの前で利之は立ち尽くす。
「ここで、いいんだよね?」
本当に東京に来てからの利之というのは、自分で歩いてなかったからなのか、全くもって何処に何があるのか。 っていうのは分からなかったようなのだが、今の時代というのはスマホにナビという物がある。
そのナビに合わせて、辿り着いた場所というのは、今の場所のようだ。
スマホにある画像と今いるビルとで照らし合わせる利之。
「うん! ここで、大丈夫みたいだよ!」
そう司に言ったつもりだったのだが、司の方はその利之の言葉に首を傾げてしまっていた。
「あ、ああ! そうだったね。 司に話題を振っても分からないんだっけ? ま、とりあえず、ここみたいだから、行くよー! 僕は東京に来てからは一回も来てなかったっていうのか……そりゃ、舞台挨拶とかでは訪れた事があったけど、一人では来た事がなかったっていうのかな? とりあえず、中に入ってチケットとポップコーンとジュースを買わないとね!」
きっと最後の方は自分に言い聞かせるように言っていたのであろう。 その後は司の手首を引きながら映画館へと足を伸ばしたのだから。
過去未来 君と僕とのラビリンス 掛川ゆうき @kakeyukira
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