ーデートー6

 そこに気付いたのか、利之の方は慌てたように、


「え? あ、だ、大丈夫だよー。 きっと、司は司が居た時代に戻れるってー! うんうん、多分、大丈夫だと僕は思うんだけどな」


 そう一人納得している利之だったのだが、急に司は利之の両腕を力強く掴んで来て、


「利之っ! 利之には分からないかもしれないのだが、私の気持ちなんか利之のは分からないだろうな! 確かに、自分が作った発明品で私はこの時代へと来てしまったのだから自業自得だと言えば自業自得だけど……自分が自分の居た時代へと帰れないなんて事、私からしてみたら、寂しくて辛くてどうしようも無いのだぞ!」

「司の気持ちも分かるよ……。 例えば、僕も自分が知らないような世界に行って、誰一人として知り合いがいなかったら寂しくも辛くも感じるのかもしれないのだけど……。 でもさ、今司には僕が居るじゃない? 少なくとも一人ぼっちじゃないじゃない? ちょっとは寂しさは紛れてくれてたらいいかな? って僕は思ってるんだけど……それじゃあ、ダメなのかな?」


 利之は司に向かって笑顔を見せるのだ。 いつもは演技で出している笑顔なのだから本気の笑顔じゃないのかもしれないのだけど、プライベートで見せる笑顔をというには、本気の笑顔だろう。


「もし、そう思ってくれていないのなら、逆に僕の方は悲しいのかもしれない。 それに、僕は司を初めて見た時から気になってしまっていた。 って言ったでしょう? だから、本当に司は僕の事を思いっきり頼ってくれていいから……それに、僕の方は司と居れるようになって楽しくなって来たんだからね。 僕だって、あの広いマンションで一人で居たから、寂しかったんだよ。 有名人になれたのは嬉しい事なんだけど……でも、まさか、仕事が終わった後とかって、こんなに寂しい気持ちになるなんて事、思ってなかったのかもしれないな。 だってさ、有名人になると、こうやって簡単に外に出る事だって出来ないしね。 一般人の時に比べたら、自由っていうのが無くなってしまったように思えるし……。 住んでる場所だって、一般人に知られると大変な事になるだろうしね。 昔の友達とも簡単に遊べなくなってしまったし……ある意味、今の僕の立場って、司みたいなもんなのかもね。 だからさ、なんていうのか……僕の方も司の気持ちっていうのは分かるような気がするな。 僕的には司がずっと居て欲しいっていう気持ちもあるけど、やっぱり、自分が住んでいた時代の方がいいのだから、いつ戻ってもいいよ。 っていう気持ちもあるかな? でもさ、何だかそういう事って難しいから、そういう事は後にして、今は今を楽しもうよ! 次は司にも楽しんで欲しいしね。 それに、司が現代に居る時は、僕がいっぱい色んな事、教えて上げるし、楽しませて上げるからさ!」


 再び利之の方は笑顔になると、今度利之の方が司の腕を掴み人混みを歩き始めるのだ。

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