第33話
「今日は皆さんに、新しいお友達を紹介します」
亀太郎宅にて、いつもの黒ムツ仲間達……牛糞、黒鈴、大谷翔平の三人に、亀太郎はれもんのことを紹介した。
「かに玉ちゃんの妹で、神園れもんちゃんと言います。高校一年生。とても良い子ですので、どうか皆さん仲良くしてあげてください」
「……よろしくお願いします」
自己紹介とか苦手だから、ということで亀太郎に代行してもらったれもんはそう言ってひょいと頭を下げた。如何にも所在なさそうな様子。緊張故の無口、虚勢故の無表情。あんまり行かない親戚の家に来た時と一緒のその振る舞いを、わたしはお姉ちゃんとしてちょっと心配する。……やっていけるか? 馴染めるか?
「おい亀太郎」牛糞がクレームを付けるように言う。「全ての猫の敵は俺達の味方だ。だから、そいつが黒ムツだというなら仲間に入れるのも構わん。しかし俺は『カミゾノレモン』なんていうハンドルネームの黒ムツを知らんぞ?」
「だから本名なんでしょ」黒鈴が小ばかにしたように言う。「っていうか牛糞、こないだゲドンかられもんって名前の妹がいるって話聞いたばかりじゃない。鳥頭なの? シコった時にザーメンと一緒に脳味噌でも射精してるのかしら?」
「今のはそいつのネット上での素性や黒ムツとしての実績を言えと遠まわしに伝えただけだ。この程度の文脈も読めないのかこの低学歴」
「今のはただあんたを罵る為に上げ足取りをしただけで、その文脈とやらを分かってなかった訳じゃないわ。それに文脈っていうなら、亀太郎の口ぶりからその子にネットでの活動歴がないことは分かるでしょう? それをあえて無視して新入りにマウントを仕掛けるあたり、完全に嫌なおっさんのムーヴよね。そんなんだからモテないのよ、この童貞」
「どどどど童貞ちゃうわ」
牛糞と黒鈴の掛け合いを目の当たりにして、れもんは引き攣った表情で身を退いている。どん退きである。ほら~バカやってるから早速心が遠のいたじゃんかよ。
「俺は大谷翔平です。今中一で、野球部です。よろしくおなーしゃす」
そんなれもんの不安を察知したのか、翔平くんが前に出て礼儀正しく挨拶をした。それから緊張して固まっているれもんに軽く笑いかけると、「かに玉さんの妹さんなんすよね?」と問うた。
「え、ええ。そうです」
「動堂高校の学年一位ってお姉さんからは聞いてます。すげーアタマ良いんすね」
「……えっと。はい」
「尊敬す。あ、そうだ。ここの人ら、ちょっと癖強いすけど、でも皆仲間には優しいんで。ちょっと遠慮がないだけなんで。俺も最初戸惑ったんすけど、すぐ慣れたんで、れもんさんも大丈夫だと思います。なんかあったら亀太郎さんに相談すれば良いす。俺もできる限りのことはするんで、何でも言ってください」
「え、ええ。あ、ありがとうございます……」
「うす」
ハキハキと気使いを口にする翔平くん(かわいい)。れもんはどっちが年上か分かんなくなりそうな程恐縮して翔平くんにぺこぺこしている。本当この男の子良くできてるよね。
「牛糞さんと黒鈴さんも自己紹介しますか?」と亀太郎。
「嫌よ面倒臭い」とだるそうな黒鈴。
「おまえがやれ。任せるから」と鬱陶しそうな牛糞。
「こちらの可憐な女性は黒鈴さん、こちらの勇ましい男性は牛糞さん。ネット上ではそれぞれ名の知れた黒ムツです。黒鈴さんはイラストレーターを生業の一つにしていて、殺した猫の死骸の絵を描くのが得意です。牛糞さんは保健所勤務の公務員で、黒ムツ界隈で一番の事情通と言われています」
「なに人の職業勝手にバラしてんのよ」と黒鈴。
「プライバシーの侵害だぞおまえふざけんな」と牛糞。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」鬼の形相の二人に、亀太郎はあたふたした様子で必死で釈明していた。「お二人ともネット上に晒してる範囲の情報だから良いと思って……ごめんなさい許してくださいお願いやめて嫌いにならないで」
「いや任せてって言ったのあなた達じゃないですか」わたしは思わず言った。
「自分から言うのは良いんだけれどね、人にばらされるのは我慢ならないわ」「そうだ。それは権利の侵害で、つまり社会的攻撃を受けたということになる。看過しがたい」
どんだけ余裕ないんだこの兄妹。「今日はわたしの妹が初めて参加するんですから、あんまり威圧的な態度はやめて欲しいです」
「そのおまえの妹とやらがこのままじゃまずいんだ」と牛糞。
「なんですって?」とわたし。「れもんのどこが気に食わないんですか?」
「ここは動物虐待の同好会であると同時に、ペット大嫌い板のオフ会でもある。だからこそ俺達は本名は名乗らずネット上のハンドルネームで普段のやり取りをしているんだ。その娘もそれに習ってハンネの一つも決めておくべきだろう」
一理ある。そりゃあ、オフ会の場所とか日取りとかクリティカルな情報はクローズトな方法で行うようにしているけれども、日頃の猫殺しを自慢したり画像をアップロードしたりは通報対策を施した上でオープンな掲示板で行うことが多い。そこに参加することを考えれば、固定ハンドルネームは必要だろう。
「確かにそうかもしれないですね」亀太郎はうんうんと頷いて言った。「れもんちゃん、わたし達は主にインターネットの掲示板を活動場所としています。れもんちゃんにもそれに参加してもらえると嬉しいんです。さしあたり、ネット上でのれもんちゃんのハンドルネームを一緒に考えて行きませんか?」
「必要なんですか、それは?」とれもん。
「なにがなんでも必要な訳ではありません。しかし、コードネームみたいで恰好良いです」
「なんか思いつく、れいちゃん?」
わたしが尋ねると、れもんは「うーん」と首を捻って俯いた。
「すいません、ちょっとすぐには……」
「公募でもしますか?」と亀太郎。「皆で候補をいくつか考えて、その中かられもんちゃんが選んだり、参考にしたりするんです。どうでしょう?」
「それでも良いですけど……」
れもんの了承を経て、数分の沈黙の後、皆がそれぞれの思い付きを口にする。
「海夫くん」と亀太郎。
「奥義堕胎パンチ」と牛糞。
「便所水」と黒鈴。
「菅野智之」と翔平。
「カタストロフィ焼き鳥」とわたし。
「どれが良いですか?」と亀太郎がれもんに水を向けると、れもんは相当な苦渋の選択をするかのような表情を浮かべて、絞り出すような表情で口にした。
「……姉さんの奴でお願いします」
「本当にそれで良いの?」意外そうな顔で黒鈴。「亀太郎のは流石に論外だとしても、他にもっと良いのがあるでしょう?」
「佐々木朗希ならどうすか?」と翔平。「山本由伸なら? 千賀とか今永も渋いすよね」
「糞尿漏﨑悟(ふんにょうもらしざきさとる)ってのも考えてたんだが……無理に姉さんの顔を立てなくても良いんじゃないか?」と牛糞。
「いえ、本当にこれが一番マシなんです」憔悴した表情でれもん。「できればこれも遠慮したいんですが、消去法的に、こう……」
「自分では何か思いつかないのか? 普段ネットで使ってるハンネとかは?」
「ゲームのキャラの名前とか使ってますけど……」
「なんて名前だ?」
「ジバニャン」
それを聞くと、牛糞と黒鈴が同時に噴き出して、そのまま両足をばたつかせながらその場で笑い転げた。
「アハハハハハハ」「キャハハハハっジバニャン!」「ジバニャンって! ジバニャンっておまえ! おまえ幾つだよ! おまえ!」「ジバニャンってなくない? その年でジバニャンってなくない?」「大好きか! 妖怪大好きか! ネットのハンドルネームにするほどか! アッハッハッハ! アハっ。アハハハハッハハ!」「キャハハハハハッハハ、キャハハハ、ハハハっ!」
「やめたげてよぉ!」わたしは思わず叫んだ。
れもんは顔を真っ赤にしてその場でプルプル震えている。ああっ、今にも泣き出しそうだ。妙にプライド高い癖気ぃ弱いから言い返すこともできないし……。もうダメだ。これ完全に態度が他人にイジメられた時の奴だ。
「……別に良いと思いますよ、れもんさん。俺も小さい頃やってましたよ、妖怪。おもしろいっすよね。アニメとか。見てました。俺今中一なんすけど回りでも隠れてやってる子いますし、大丈夫だと思いますよ?」
翔平くんがそう言って慰めるけれど、でもそれは微妙に追い打ちだ。泣きそうな女の子を守ろうとしているだけで無自覚なところが猶更性質悪い(でもかわいい)。
「妖怪体操やってくれよ、妖怪体操!」と牛糞。
「振付覚えてるんでしょ? キレッキレで踊れるんでしょう? やってよ!」と黒鈴。
「何のゲームソフト好きでも私の勝手でしょうがっ!」れもんがキレた!「私が妖怪やることであなた達に何か迷惑かけましたか? もう帰ります!」
そう言ってれもんは無言で玄関まで行って脚を付けたまま座り込んだ。やっべぇこれちゃんと謝るまで相手のこと完全に無視して黙り込むウザい奴だ!
「ちょっと怒っちゃったじゃないですか牛糞さん黒鈴さん! ちゃんと謝ってあげてください!」わたしは訴えた。
「ええちょっと……マジでおこな奴? うせやろ?」と驚いたように牛糞。
「……そんな帰るとか言われても困るんだけど」と面倒臭そうに黒鈴。
「この子一回拗ねたらほんっっっっっっっっっっっっっっとうに長いし面倒臭いんですから! 今の内にちゃんと謝りましょう! ねぇ?」
わたしがそう言うと、牛糞と黒鈴がれもんにごめんなさいしたので、その後の亀太郎のとりなしもあってなんとかこじれずに済んだ。この兄妹本当害悪だな……。
そのようなすったもんだを経てれもんことカタストロフィ焼き鳥(決定した)は無事に黒ムツ達と馴染むことが出来た。今はソファに小さく腰掛けて「良いですよね、妖怪のこと好きでも別に良いですよね」と呟いては左右から亀太郎と翔平に慰められている。子供か。
「なんとか打ち解けてくれてよかったですよぅ」そう言って亀太郎がれもんの肩を握る。「名前も決まって良かったですねぇ。よろしくお願いします、焼き鳥ちゃん」
「よろしくな、ヤキ」と牛糞。
「よろしくね、トリ」と黒鈴。
「……略し過ぎでしょわざとやってんですか?」うんざりした顔でれもん。
「焼き鳥さんで良いですかね?」気遣わし気に翔平。「お姉さんの名前と似ててなんか良いっすね。俺の『大谷翔平』も兄ちゃんのハンネ参考にしたんすよ」
「え? そうなの?」その言葉に、わたしが食いついた。「翔平くん、お兄ちゃんいるんだ」
「……いる、というか……ええ。そうなんす」翔平はそこで少し複雑そうな表情を浮かべ、黙り込む。……なんだ?
「そう言えば翔平くん。ちょっと訊きたいことがあるんですけど」亀太郎がそこで翔平に尋ねる。「『姫島道太郎』って探偵の名前に聞き覚えはありますか?」
「……あるっすけど。どうしたんすか?」と翔平。
「かに玉さんから、最近わたし達の周りを嗅ぎまわっている探偵がいるって話を伺いまして」それから亀太郎はわたしの方にも視線をやる。「そうですよね? かに玉ちゃん」
「ええ。そうなんです」わたしは頷く。「この間、猫を殺す為に公園の下見をしていたら、声をかけられたんです。ハルマゲドンかに玉……つまりわたしを追っているとのことでした。被害にあった飼い主に雇われたとかで」
「かに玉さんも会ったことあるんすね」翔平は意外そうにする。「バレなかったんすか?」
「大丈夫だったよ。普通に散歩してるJKで対応したし」
「かに玉ちゃんならボロは出さないでしょうし、そこは信頼しています。もちろん、ボロを出してしまっていたとしても、仲間であるわたしは全力でその子を庇護するよう動きます。だから、何かあったのなら、何でも正直にわたしに話して欲しいのです」そう言って亀太郎は翔平に微笑みかける。「わたしは翔平くんの最大の味方です」
その慈母のような微笑みに、翔平はその場で硬直して息を呑みこむ。何か彼の内部で深い葛藤が起きているのが見て取れる、そんな態度だ。
しばしの沈黙の後、翔平は絞り出すような声で言った。
「……すんません」翔平は軽く頭を下げて見せる。「実は俺、その姫島道太郎ってのに、猫殺してるトコ見付かっちゃいまして」
「なんでそれを早く報告しない?」牛糞が咎めるように言った。「ホウレンソウもできないのかおまえは。社会に出てやっていけんぞ」
「許してあげてください。どんなにしっかりしてても十三歳です」亀太郎は牛糞をそう宥める。
「すんません。言い出そうとは思ってたんすけど、なかなか切り出すタイミングが分からなかったんす。あの、なんで分かったんですか?」
「その姫島道太郎という人に、わたしが探偵を付けていました。姫島が調べていることを調べて欲しいと。そしたら、猫を殺している中学生を一人発見したらしいという報告を受けたのです」
見付かっちゃったのか。……まずいんじゃないか? 一人見付かったら芋蔓式に全員というのが集団で犯罪をする時の欠点だ。わたし達のこともバレないとも……。
「見付かってしまったことは本当にすんません。でも、誓って言いますけど、俺は亀太郎さんや皆さんのことは一言も話していませんし、これからも話すことはありません。……絶対に」翔平は決意に満ちた表情で言う。信じてあげたいな、と思う。しかし……。
「それは信じています」亀太郎は真剣な顔でそう頷いて、安心させるように微笑みを浮かべる。「尋問は受けていますか?」
「ええ。調べていることがあるから警察に通報しない代わりに直接質問をさせてくれ、と俺の親を説き伏せたみたいで、何度か家に来て俺に色々訊いてきます。何匹殺したかとか、どこでどうやって殺したかとか、仲間はいないかとか、色々と」
まずそうだ。わたしは思う。
あの姫島道太郎という男は見るからにただ者ではなかった。何を考えているのか話していてもまったく伺えず、それでいて予測できないタイミングで鋭い揺さぶりを繰り返して来る。
亀太郎さんの言う通り、翔平がいくらしっかりしていると言っても所詮は中学生だ。あの探偵の毒牙にかかればボロを出すのは時間の問題に思える。そうでなくとも、彼の行動は今後監視されてしまうだろうし、そうなるとわたし達と接触しているところを見られればわたし達は全員捕まってしまう。
「…………わたしは翔平くんを心から信頼しています」亀太郎は立ち上がり、慈母のような表情で翔平の肩に手を置いた。「ですが……いくら翔平くんがわたし達のことを守ろうとしてくれたとしても、その姫島という悪い人はあなたの顔色を読み取ったり、あなたの後を付けたりして、わたし達の犯行の証拠をも掴んでくるでしょう」
「……やっぱりそうなっちゃいますよね」翔平は後ろめたそうに言った。「やっぱ、俺、ここの仲間、抜けなくちゃいけなくなるんでしょうか……?」
そのことが受け入れられなくて、翔平くんは探偵に見付かったことを言い出せなかったらしい。彼はれもんを除けばわたし達の中では一番の新参だったが、しかしそれでも彼なりに猫に対しては穏やかならぬ感情があるようで、それを理解してくれた亀太郎さんや牛糞さんを信頼していた。
「まさか。追い出すような真似はしません。翔平くんのご家族は猫の所為で無茶苦茶にされた。だからあなたは猫が憎いし、あなたの憎しみは猫を殺すことでしか癒えることがない。……それは尊重されるべき感情です」
亀太郎はそう言って翔平くんの頬に手を当てる。
「ですが、翔平くんが今のお家にいる限り、姫島はあなたのところに何度でもやって来てあなたを追い込むでしょう。そしてすべてが明らかになってしまった時、あなたにとって大切な居場所であるわたし達の集まりは、存続できなくなってしまいます。……分かりますね?」
「……はい」
「だから……翔平くんはもう元のお家にいるべきではないのです」
「……え?」
凄まじい論理の飛躍があった。翔平は面食らっている。亀太郎は慈母のような微笑みを浮かべると、本気でしかない表情でとんでもないことを言いだした。
「わたしが翔平君のお母さんになってあげます」
周りで聞いていたわたし達は、皆一様に動揺し、表情を引き攣らせて亀太郎の顔を見た。
亀太郎は真剣そのものの表情で翔平に語り掛ける。「このままお家にいたらあなたは姫島に良いようにされてしまいます。そんなことはいけません。だから、わたしが守ってあげます。住む場所はこの家で良いでしょう。お勉強ならいくらでも見てあげられますし……何なら今からもう働くのだって立派な選択肢です。わたしが今やっている商売のお手伝いをやってください。簡単なお仕事がたくさんありますし、それも嫌なら知り合いに頼んでいくらでも他のお仕事も融通してあげられます。決して不自由な思いはしません」
「ちょっと待ってください、亀太郎さん」わたしは声を発した。「それ、本気で言ってるんですか?」
未成年略取極まりない。翔平も混乱した表情で呆然としているし、周りの皆も開いた口が塞がらない様子だ。
「本気ですよ」亀太郎は真顔で言った。「わたし、子供は結構欲しかったんです。ですが、言葉も通じないような小さな子供なんて、うるさくて言うこと聞かなくて大変じゃないですか? だからある程度育った状態から子育て始めたいんですよね、翔平くんならちょうど良いです。……年齢差的にもなんとか親子で通じる範囲ですし」
「前から気になってたけど、あんたって若そうに見えて実際幾つだよ」牛糞が指をさして言った。
「それは訊かないでくださいよぅ」亀太郎は頬に手を当てて顔を赤らめる。「翔平くんならわたしは大歓迎です。どんなワガママでも叶えてあげますし、嫌なことは何もしなくて良いです。今の家でまともな子供時代を過ごして並の人生を送るより、ずっとずっと豊かでエキサイティングであることを保証します。……どうでしょうか?」
本気で言っているなら異常極まりないことだ。そんな簡単に他人と他人が親子などになれるはずがない。冗談にもならないような荒唐無稽なその提案を……しかし亀太郎はひたすら真剣な表情で翔平に投げかけていた。
その黒い真珠のような大きな瞳に魅入られて、返答を求められた翔平は、しばらくの沈黙の後にたどたどしい口調でこう言った。
「すんません。それは無理です」
亀太郎は一瞬だけ瞳を細めると、すぐに落胆したような表情になって問うた。
「それは何故?」
「俺、野球選手になりたいんです。それは、多分、亀太郎さんと一緒に暮らしながら出来ることじゃないと思うんです」
「できます。わたしは何でもできます。どんなことでも叶えます。ですから……」
「それから」翔平は言う。「どれだけ無茶苦茶にぶっ壊れていたって、兄ちゃんが二人ともいなくなったって、俺の家族は一つだけなんすよ。……ごめんなさい」
その言葉を聞いて、亀太郎は失望をその瞳に浮かべると、小さく息を吐きだしてから言った。
「……残念です」
わたしは胸騒ぎがした。
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