第一幕 アオハル②
まずは男子組。
健生のさほど広くもない部屋に、健生、一、護、雄馬、冬樹、凛夜の六人が集合することになった。さすがに男子高校生六人が集うと手狭である。ちなみに母親の笑美は健生が友人を五人も連れてきたことで「まあまあまあ! 健生のお友達がこんなに来てくれて嬉しいわあ! 今日のお夕飯は中華三昧よお~!」と狂喜乱舞していた。
健生の部屋で、雄馬がどこからかホワイトボードを取り出し会議の進行役を買って出る。
「よっし‼ 会議と言ったらこの俺、菊池雄馬だ‼ というわけで、健生のデートプラン詰めてくぞ‼ まずは健生‼」
「はっ、はい!」
「良さげな初デートスポット‼ 一つ挙げてみろ‼」
「あっ、えっと、え、映画館!」
「ナンッセンス‼」
「だから何で⁉」
「理由は凛夜‼ 答えてみろ‼」
「ぼっ、ぼく⁉ えっと、えっと……あまりお話できないから?」
「そうだ‼ 元々会話が弾んでるとか、観たい映画があるとか、そういう奴らはいいだろう‼ だがしかし、健生、お前のところはそういうのあるか⁉」
「あ、ありません!」
「そうだ‼」
「ねえ、これ何見せられてんの……?」
「菊池おもろ~」
「雄馬殿、文化祭会議で反省した結果こうなりましたからな……」
「文化祭何があったんだよお?」
冬樹、一、護がぱりぽりとポテチを食べながら冷静に状況を見守る中、ホワイトボードにどんどん文字が書き込まれていく。ちなみに凛夜は完全に雄馬のペースに巻き込まれた。健生と一緒にホワイトボードの前で正座させられている。
「……ここまでのことを踏まえてだな、どこか良いデートスポットに心当たりはないか、健生‼」
「そんなこと急に言われてもな……」
と、言いかけた健生の頭の中に一つ。一つだけ良い案が浮かんだ。
「そういえば、あそこはどうだろう……」
健生の意見を聞いた一同は「おお~」とそれぞれ感嘆の声を上げる。
「いいじゃねえか、健生‼ じゃあこれから細かいところ詰めてくぞ‼ 後ろでポテチ食ってる三人も一緒になあ‼」
「げ、バレた」
「バレましたな」
「めんどくせ~」
こうして男子組の会議は意外にも順調に進んでいく。時には冗談が、時には真剣な意見が飛び交いながら、健生は男子高校生ならではの青春を味わうのだった。
続いて幸、恋羽、美緒、茜の女子四人組。
彼女たちはショッピングモールに幸のデート服を見に来ていた。幸はウキウキワクワクしている恋羽と美緒に囲まれ、茜は美緒に引っ張られながら、それぞれショッピングを楽しんでいる。茜は自分まで呼ばれると思っていなかったのだろう、所在なさげに視線をきょろきょろさせている。
「あ、茜ちゃんまで連れてきていいの……?」
「もちもちだよぉ~、クラス違ってあんまり話せないし、それじゃあ寂しいよぉ~」
「美緒先輩さすがですわ! 茜先輩も……思うところはありますが、これから仲良くなればいいのですわ!」
「アンタら、一体なんなの……?」
「こういう方たちなのですよ、茜さん」
たじろぐ茜に、幸は声をかけた。茜はそもそも幸以上に友達付き合いに慣れていなさそうな節がある。副作用の攻撃性が抜けた今、神木茜の危険度は大きく下がっていた。そういう事情もあり、幸は彼女がショッピングに同行することを許したのだ。
ひとまず、美緒がみんなでクレープを食べたいということだったので全員でカフェに行った。それぞれ思い思いのクレープを食べながら、この後のショッピングの予定を立て始める。
「さっちーって、普段はどんな服着てるのぉ~?」
「私服は基本的に動きやすいものですね。お洒落には疎いかもしれません」
「え、そうなのぉ⁉」
「お姉様、色々と動きますものね……」
「じゃあじゃあ、好きな服の系統とかは⁉」
「あまり良く分からないです……」
「……これ、先に雑誌を見た方がいいわよ」
茜はそう言って、学生鞄から女子高生向けのファッション誌を取り出す。茜が好みそうな、ゴシック系や地雷系ファッションの雑誌だ。
「……アンタは肌も白いし、黒とか深めな色がよく映えると思うわ、大人っぽくなるし。……茜ちゃんみたいな地雷系ファッションは似合わないかもだけど、参考程度にはなるんじゃない……って、何よ、その目は」
ファッションの話題になると話し出した茜に、美緒と恋羽が目をキラキラさせる。ファッション誌と茜を交互に見て、ワクワクした表情を見せる。
「茜ちゃん……!」
「茜先輩……!」
「だ、だから何よ」
『ファッションが好きなんだぁ~! (好きなんですのね!)』
「へ……?」
「これとかめちゃ可愛い~! 今度みんなで私服デートだぁ~!」
「はあ⁉」
「わたくしもこういうの試してみたいですわ! 着た事ありませんもの!」
「メイクも上手そ~! 何かさっちーのデート計画、上手くいきそうじゃない?」
「ですわね! ね、お姉様!」
「そうですね」
「ちょ、しれっとメンバーに入れないで……!」
「もう逃げられないもんねぇ~!」
「茜さん、こうなったら美緒は引きませんよ」
「う、嘘……」
「楽しくなってきましたわ~!」
女子組も何だかんだ交友を深めながら上手くいきそうだ。幸は今まで経験したことのない女子高生らしい青春を、それを過ごせる幸せを噛み締めるのだった。
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