第一幕 ニュウタイ④

 そして時は現在に戻る。今日は、健生の超常警察特殊機動隊の入隊式だった。

 たった一人のために行われた入隊式を進行するのは、第一班の班長、兵頭だ。

 

「ではここで、超常警察特殊機動隊隊長、長法寺珠寧隊長からのお言葉をいただきます」

 

 兵頭がそう言うと、長法寺と日下部が入室する。日下部は車椅子を押し、健生の目の前につける。長法寺が持つ独特な圧が、健生を直接襲う。それはまるで、この隊に入るための洗礼のようだった。


「っ……」

 

 健生は拳を握りながらもその圧に耐える。その様子を見て、長法寺は満足そうに微笑む。


「私の目に狂いはなかったな。冨楽健生、君はこれから、その身に宿った能力を使い、任務や訓練に臨むことになる。難しいことは言わん。これだけは心得ておけ」


 長法寺は息を吸い、はっきりと健生に宣言する。


「強き力は、弱き者を救うためのものだ」


 きっと、たくさんのものを見てきたのだろう。きっと、多くの時間を過ごしてきたのだろう。

 長法寺の言葉には、それだけの厚みと重みがあった。

 言葉の意味が、重みが、健生の肩にのしかかる。その重みは、健生の足を地につかせた。

 健生の表情、様子を見て意味が伝わったと確信したのだろう、長法寺は「以上だ」と言って部屋の脇に移動した。

 長法寺が移動したのを見て、兵頭は式次第を進行していく。

 

「続いて、隊員手帳を贈与します。冨楽健生君、前へ」

「はい」


 名前を呼ばれ、健生は前に進み出る。一足早いが、社会人としての第一歩だ。

 健生がその重みを踏みしめていると、兵頭が黒い手帳を差し出してきた。中央には黄金のΨマークが記されている。


「これが超常警察特殊機動隊であることを証明する手帳です。決してなくさないように。迷ったときにはこれを読んで、一つの道しるべにしてください」

「ありがとうございます」


 手帳を受け取る。黒い色も相まって、見かけ以上の重みを感じた。

 健生が席に戻ると、兵頭が式を締めくくる。


「これで、超常警察特殊機動隊入隊式を終わります。この後は隊員……第一班の班員との交流会です。こちらは、気兼ねなく楽しんでね」


 そう言って、兵頭は慣れないウインクをしてみせるのだった。

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