第二部 初任務編

第二部 プロローグ

 真夜中。

 とある平和な父子家庭の父親は、窓ガラスの割れる音、そして娘の叫び声で目を覚ました。


「唯(ゆい)! どうした唯!」


 娘の名前を叫びながら部屋へと急ぐ。そこには、部屋の隅でガタガタと体を震わせる五歳の娘、唯の姿があった。

 

「まど! まどがわれちゃったの!」

 

 娘を抱きしめながら彼女が指さした方を見ると、そこには大きく割れた窓ガラスがあった。外からの衝撃で割れたらしい。しかし妙だ。石やレンガなど、ガラスを割ったであろうものが見当たらない。

 ガラスが割れた箇所から、強い風が容赦なく入り込んでいた。


 そう、容赦なく。どんどん。どんどんどんどん。どんどんどんどんどんどん。

 風は勢いを増していく。まるで竜巻のように。


「きゃあああああ!」

「なんだこれは!」


 叫ぶ娘をしっかりと抱え、父親も飛ばされまいと部屋の隅に隠れる。本が、おもちゃが、娘が描いた父親の似顔絵が飛ばされ、風とともにとぐろを巻く。やがて、外から 風ではない、白い何かが大量に入り込んでくる。風はしばらく暴れると、今度は嘘のようにその姿を消した。

 父親は呆然とした。娘は恐怖のあまり泣き叫んだ。部屋のあまりの惨状に。


 可愛らしく飾られていた少女の部屋は、ぼろぼろだった。

 床には、こう書かれた紙が大量に散らばっている。


『オマエが知った秘密を破棄しろ。さもなくば娘の命はない』

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