第12話
「ポンさん、ちょっといいかい?」
ゲート前で副所長さんに声をかけられた。
もともとはよそで市長さんをやってたらしい。
一見、好々爺風だが底の知れないところがある。
ダンジョン絡みで家族を亡くしているのでダンジョン対策には積極的だ。
あ、ポンは、特定洞窟調査士補助員の登録名な。
ポンコツのポンだ。
「どうも、副所長さん、なんです?」
「ああ、新しい特定洞窟調査士補助員が来るんですよ。それでポンさんに実地研修の付き添いをお願いしたいんですよ。」
「久しぶりですねぇ。いいですよ、報酬の方、期待してますよ。」
「ありがとう、助かります。この前の統括会でカステラが手に入ったんで、あとでお渡ししますよ。」
「おお、ありがたやありがたや。カステラなんていつぶりだろ?」
「ははw。あ~それでですね、新人さんたち、四国出身なんですよ。活動中に調査班が壊滅してね、一命をとりとめて休養している間に、今回の処置になって、特定洞窟調査士補助員への転向を決めた人たちなんです。」
「たちですか?」
「ええ、3名です。」
「ん~、その、折れてますか?」
「私が見た限りは、意気消沈してますね。」
「ならいいんですが、ダンジョン民に必要なのは生き汚さですからね。」
「そうですね、特定洞窟調査士補助員さんたちにはちょっとでも長生きしてほしいですね。」
「はあ。」
「では、のちほど。」
相変わらず、一筋縄ではいかねえひとだ。
***
「ポンさん、疲れているとこ悪いね。」
「ははw。」
「それで、この3人なんだけどね。」
宿舎の食堂に所在無げに3人の若いのが立っている。
「ハイハイ、俺はポンと呼ばれている。お前らもそう呼べ。」
「「「お願いします。」」」
「ダンジョン民は訳ありばっかりだから、あだ名で呼び合う。お前らも本名は名乗るな。」
「「「はい」」」
「明日、一日で必要なことを教える、まあ、あとはおいおいな。」
「「「はい」」」
「副所長さん、こんなもんかな。」
「はい、じゃ、お願いしますね。あ、この宿舎のことは一通り説明してありますから。」
「あ、わかりました。じゃ、お前ら明日の朝、9時に食堂に集合な。ああ、貴重品は身に着けるか、管理事務所のロッカーに預けろ、いいな。手癖の悪い奴がいるからな。」
「「「はい」」」
返事はいいんだけどねぇ。
口で言ってもわかんねえだろうしなあ。
どうすら?
*****
底辺ダンジョン民だけど、なんとかほそぼそやってます。 @mokamoka
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