第25話 

 高校に戻ることになった。高校三年生時代はむちゃくちゃだった。一生懸命に勉強しても1点とか3点とかの点数をたたき出すことがしょっちゅうだった。文系の頭なのに理系に行ったことで勉強がまったくわからなかったこともそうだし、幻聴も少しずつ聞こえ始めていた。まさしく暴走機関車が周囲にぶつかりながら進んでいくようだった。不気味に思われて友達というか電話番号を交換する友達はできなかった。必死だった。



それでもなんとか成績表オール2で卒業ができた。高校を卒業してから何ヶ月かは眠り込む日々が続いていた。体力、精神力を使い果たしてしまったのだった。



 寝込んでいる間にも入院中に買った小説の書き方の本を読み込んでいた。

 まずはプロットというか設計図を書いてからその上で肉付けをして小説を作っていくことや、毎日小説を書くことが上達するコツとか書いてあった。



 小説の設計図を書き、そのうえで、小説を書こうと努力したが、やっぱり書けなかった。仕方ないので川柳ばかり作るようになった。そうして思った。やっぱり小説を書くには小説の学校にいくしかないと。



 文学部に行って小説の勉強をして小説を書けるようになりたい! できればあの冊子の話者と同じ大学の文学部に行きたい!



 そうだ! ●●大学の文学部に行きたい! ●●大学の文学部に行きたいのだ!



 母親に相談してみる。

「また大学受験をしたいって言ったら怒る?」

 母親は甲高い声を出して案の定怒り始める。

「あんたねえ、また出来もしないことに無駄遣いをして! 親に申し訳ないと思わないの?」

「分かったから! もういい!」

 母親は聞く耳をもってくれない。



 今度は主治医に相談する。

「●●大学の文学部に行きたいのですけど、受験してもいいですか?」

 主治医はぽかんと口を開けて僕のことをしばらくみていたかと思うと、

「まあ、大学受験は誰でもできますから」

 だった。



 まずはインターネットでどの参考書がおすすめか調べる。そうして本屋に行くと、少しずつ貯めたお小遣いで参考書を買う。国語はこの本、数学はこの本、英語はこの本とか。



 家に帰って本を開いて勉強をするが、ほぼ分からなかった。そのままなにも分からないまま高校を卒業してから初めての一年目は大学浪人となった。



 そして二年目の春に突入し、このままじゃいけないと思って、予備校の門を叩いた。国語と英語の単科講座を受ける予定である。資金源は今まで貯めたお年玉を全部降ろして用意した。

 予備校の受付に行く。自分が病んでいるのが目に見えて分かるのか、みんな奥に引っ込んでしまい誰も出てこなかった。しばらく待ってもやっぱり誰も出てこない。



「すいません! すいません! 講座の申し込みがしたいのですが!」

 すると奥からおじいさんが出てきた。

「何か御用ですか?」

「講座の申し込みがしたいのですが?」



 すると、おじいさんは、ほうっ、とため息をつくと、また奥に引っ込んで、なにやらA4の紙を持ってきた。

「それじゃあこの紙に必要事項を記入してください」

「分かりました。ありがとうございます!」

 A4の紙に必要事項を書くと、おじいさんに提出した。おじいさんは一言。

「まあ、それじゃあ、頑張って!」


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