第15話
●月●日
暗黒面に落ちたとき自分でもびっくりした
僕は対人恐怖症や統合失調症の被害妄想も持っている。世間一般ではどういうのが対人恐怖症というのかが分からないが、僕の持っている対人恐怖症は、人の視線や投げる自分の視線が怖いというものだった。まっすぐ見て歩くとよく人と視線がぶつかるから斜め下を見て歩く。すると、今度は人の一部が視線に入ると憔悴しきってしまうようになった。それがどう統合失調症の被害妄想とつながるかというと、自分の視線が人の迷惑を掛けているのかも知れない。いや、きっとそう違いない。人間社会は本当に怖いところだ。
友達にそのことを相談する。
「物事が起こる前に悩むのじゃなくて物事が起きてから悩めば。見ていると大変だなってよく思うよ」
「そうだけど」
「極論を言えば明日隕石が落ちて人類が滅亡してしまうとかそんなことで悩んでいるのだよ」
「うん」
「怒っていると思っている人でも実際には自分に余裕がなかったりして怒っているようにみえたりとかもあるよ。人間の心は水のような心でそんな簡単に理解できないものなのだよ」
「分かった」
頭では分かったつもりになっているが、行動が追いついていかない。余裕がなくなってくると、教えてもらったことが頭から吹き飛んでしまう。
この日も会社でも目がおかしくなり視界に入る人が怖くて仕方なかった。目がおかしくなるとはどういうことなのかというと、視界に入る人すべてが気になってしまい緊張しきってしまいまた疲れ切ってしまうのである。
一回上司に相談したことがある。
「目がおかしくって、自分の前に座っている人に対して緊張してしまうのです。ついたてとかしても大丈夫ですか」
上司はそれを聞くと、
「みんな何かしら抱えて生きているのです。そしていろいろと耐えて仕事をしているのです。●さんだけ特別にというわけにはいかないのです」
「分かりました。申し訳ありませんでした」
会社で疲れてしまって目がおかしくなってしまってどうしようかって思うときは多々ある。どうして疲れてしまうのかというと、楽しくて夢中になって100%以上の力で仕事を行ってしまうからである。いつの間にか体に疲労が蓄積していて心身ともによれよれになっていたことはよくあることである。さきほどの目の調子がおかしいのも疲れ切ってしまい、統合失調症の症状である被害妄想が出てしまう。自分の視線が相手を恐れさせてしまい、精神病院などに連行されてしまうのではないかとか因縁をつけられて殴られるのではないかとか本当に生きた心地がしない。そんなことを考えてしまうからどんどん心や体が憔悴しきってしまい、どんどん目の調子が悪くなるのである。中学時代のいじめられた経験とかも病気に大いに影響していると思う。
それはちょうど8月頃だった。この日も一生懸命に仕事をしてその結果目がおかしくなっていたとき、ふと視線の端に青いワイシャツが通り過ぎた。いやだなあと思いながらも視線を気にしないようにする。すると、
「ちっ!」
という舌打ちが聞こえた。反射的に僕も、舌を鳴らして舌打ちをした返した。
「ちっ!」
そのときには何も思わなかったが、やはりショックだったのだと思う。心臓がばくばくと鼓動したりして、人の視線が怖くなってしまうことがずっと続いた。
夜意識がないままパソコンをいじくってしまっていたこともある。メールにグーグルアカウントとかどうとかこうとかたくさん来ていた。
ルームメートに話を聞く。
「僕、夜起きていたことあった?」
ルームメートは
「夜中にむくむくと起き出してご飯を食べたり、パソコンをいじくったりしていたことがあったな。あれ意識無かったの?」
「そんなことあったのだ。意識ないよ」
次の日、14時まで倒れこんでから会社に行った。まっすぐに上司のもとに行く。
「申し訳ありませんでした。少し具合が悪かったので」
「何かあったのですか?」
「少し面談室いいですか?」
そこで、舌打ちされたことを話した。
「●さん、一ついいですか? 障害者だからって、弱いままじゃいけないのです。本当に優しい人っていうのは、強い人のことを言うのです」
「強い人?」
「何を持って強い人っていうのでしょうかね。ケンカが強い人? お金を持っている人? 経営者?」
「違うと思います」
「私の思う強い人というのは、人の痛みを知って、なおかつ嫌なことがあったらしっかりと嫌といえる人だと思います」
僕は必死になってメモをした。
「それはともかく大変でしたね。まあ会社っていうのはいろんな人がいますから」
「ありがとうございます」
「まあ、話を聞くだけだったらいくつでも聞きますよ。また何かあったら報告よろしくお願いします」
上司に同僚に舌打ちされたことをぐちってからふっと気が楽になった。統合失調症の症状である被害妄想での目の異常も少し和らいだ。
今回闇に染まるっていうことを改めて経験して驚いた出来事だった。
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