第14話
●月●日
今会社に通っているのだが、会社でなりふり構わずに仕事をするのと、帰ってから小説を描くのとで他のことは何も手につかなかった。
会社のことは規則で決められているので描けない。ただあるとき上司に面談室に呼ばれた。何か失敗とかしてしまったのかとかネガティブ思考になる。
「ちょっと呼び出してしまって申し訳ありません」
「はあ」
僕が入り口のところに突っ立ったままでいると、
「ドアを閉めてこちらに座ってください」
上司は向かい合う椅子を指さした。
「はい」
胃がきゅるきゅると鳴き傷んでいる。座ると、上司が話す。
「仕事を一生懸命行ってくれていることは分かります」
「はあ」
「ただ、二点注意したいことがあります」
「一点目は勤怠です。自分でも分かりますよね。午前休みを使う頻度があまりにも多いです。今月は毎週使っていますよね。何か会社に伝えたいことがありますか?」
「すみません。無いです」
「勤務表を見ると月曜日休みが多いですね?」
「はい。すみません」
僕はただただ謝っていた。
「きちんとしてください。このまま行くと勤務態度不良で辞めさせられますよ!」
「本当に申し訳ありません」
「ここからが本題です」
僕はただただ下を向いていた。
「●さん、ちょっと立って自分の格好を見直してみてください」
立って身だしなみを確認する。ズボンからシャツが出ていた。心の中で、ぎゃああ、と叫び声を上げると、シャツをズボンの中に入れる。
「身だしなみが本当にだらしないです。シャツのサイズがあっていないのではないですか?」
「すみません」
「さっきからすみませんばかりじゃないですか。言葉じゃなくて行動で示してください。これは注意です」
「すみません」
「自分の姿を鏡で見る癖をつけてください。話は以上です」
あわててトイレに行き鏡で自分の姿を見る。ワイシャツはよれよれだし、マスクを外せばひげはぼうぼう。目やにはついている。なんていうか身だしなみは全くできていなかった。っていうかそもそも鏡で自分の姿を見る習慣はあまりなかったので改めて姿格好を見て恥ずかしかった。
帰って食事のときにルームメートと会話する。
「やっぱり僕って身だしなみ出来ていないよね」
「うん。全く出来てない」
「そうか」
「っていうか俺も出来てない」
身だしなみをどうしてボロボロでいいのか思ってしまったのか振り返ってみた。いろいろ紙に考えたことを書き出す。結論から言うと、身だしなみが出来ていないことに関してはある意味自分に酔っていた感じがした。
自分がよく見ていたテレビドラマとか映画とかアニメでは主人公はいつもぼろぼろの服を着ていた。その主人公たちに自分を重ね合わせていたのだと思う。
しかし、時代は、江戸時代や明治、大正ではない。昔はどうか知らないが、今の時代は身だしなみの乱れは心の乱れと言われる時代である。
家においてあるビジネスマナーの本を読む。そこには、身だしなみが汚いと一生懸命に仕事をしていても信用してもらえないと書かれていた。
いつも会社に持って行くビジネスリュックも見てみると、穴が空いていた。いつリュックに入れてあるものが地面に落ちてしまってもおかしくなかった。そうして決めた。
この際だからビジネスリュックとワイシャツ五枚を買おうと思った。
土曜日の休みの日に紳士服店に行く。
紳士服売り場に行くと、いろんな種類のワイシャツが置いてあった。まずはビジネスリュックを見に行く。僕はそんなに会社に持って行くものがないからそんなに大容量が入るバッグでなくてもいいのだ。筆記用具と業務指示を受けたとき用に使うメモ帳があればそれでいい。大容量のバッグだと電車に乗ったときも荷物が多くて人に迷惑をかけてしまう。だから小ぶりの黒いリュックを買うことにした。
次にワイシャツである。いろんな種類があってどのワイシャツを買えばいいのかがわからない。レジで店員さんがなにか作業をしている。少し聞いてみる。
「ワイシャツが欲しいのですけどどの種類を買えばいいのかが分からなくて」
「はい。ワイシャツですね」
店員さんは巻き尺を取り出すと、
「少しごめんなさいね」
と言って、僕の首回りを計った。
「Lサイズですね? えっ?」
店員さんは僕の姿をまじまじと見る。僕の身長は160センチしかなくてサイズから言えばMサイズである。少し太りすぎてしまった。
「もう一回失礼します。やはりLサイズですね」
ビジネスリュックとワイシャツ五枚を買う。しめて25000円だった 普通に生きていくだけのための身だしなみにもかなりお金を使うのだなあと思った。ただワイシャツはふくよかな人が着るワイシャツを買ったので少し割高だった。アニメとコラボしているかっこいいワイシャツも売っていたがそれは普通の体型の人が着るものだったので買えなかった。少しやせようと思った。
今回身だしなみには気を付けようと思った出来事だった。
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