第13話

●月●日


 会社でタイムカードがなくなっていたりすることが昔あった。




 そんなとき、なんで自分は働いているのだろうってふっと思った。その出来事を友達に話したところ、『小さなことにくよくよするな』という本を勧められた。




 その中に、なんで自分が生きているのだろう。自分自身がこの世で何をしたいのか、何者になりたいのか、問い直す方法があるらしい。



 それは自分自身の葬式に自分が出ているとしたらと言うことを想像することだと。僕は葬式というものに出たことはない。自分が精神障害を抱えてから冠婚葬祭一切のものに関わらなくなった。親にそういうものには出させてもらえなかったのだった。



だから葬式というものを想像する。自分自身で自分の死に顔を見る。何かを思おうとする。

やっぱり想像なんてできない。今は統合失調症で発達障がいで対人恐怖症で文学賞を取りたいだけの俗人だ。失敗もたくさんした



 自分が、小学生2年か3年のころである。やっぱりこの頃もいじめられていた。



「ばーか、ばーか、ばーか」

「あーほ、あーほ、あーほ」



 そんな風に散々ののしられていた。最初のころは無視だけだった。何を言っても反応してくれない。そのうちにノートに落書きをされたり、鉛筆や消しゴムを隠されたりした。担任の先生などにはいじめを見て見ぬふりをされている。本当に追い詰められていたのかもしれない。



ある日のことである。授業中にノートを開くとノートがびりびり破かれていて、残った頁に大きく鉛筆でき○がいと書かれていた。先生に、

「先生」

 と呼ぶ。

「なんだ!」

「僕はそんなに周りから嫌われるほどそんなに邪悪な存在なのですか」

 先生は、黒板に白いチョークで文字を書いていたが、

「なにかあったのか?」

 僕はノートを見せる。そのとき、先生は、

「自業自得だろう」

 とふっと笑った。そのとき、真っ赤な感情、頭が、ぼおっ、とのぼせるような体が、かあっ、と熱くなるようなそんな状況に陥った。

 僕は机の中からはさみを取り出すと机にぶっ刺した。



「ふざけるな」



 そのとき先生が大股で走り寄ってきたかと思うと、僕のほおを、ぱしーん、と打った。先生が言う。



「おまえこそふざけるな。ちょっと職員室に来なさい」



 そうして僕の腕をぐいぐいとつかむと、教室の外へと連れ出した。

 この後のことは覚えていない。

 この場合どうすればよかったのかは今でも分からない。

 その場所も親の転勤で引っ越すことになった。そのときに同級生たちから寄せ書きをもらった。そこには散々嫌なことが書かれていた。母親はそれをさっさと捨ててしまったが、今思えば捨てないでほしかった。自分自身の研究のために使いたかったのだった。


 記憶の断片にそんなことが残っている。

 

 そんな自分に葬式のときに贈りたい言葉を考えた。それは、



「僕は、発達障害を患い、後には統合失調症にも悩まされていた。小・中学校でもいじめられていたばかりいたそうである。そして会社でもよくのけ者になっていた。お金も健康も地位もない。何も持っていなかった。さらに統合失調症は遺伝病と言われており本当に崖っぷちの中恋愛など普通のー普通とは何かは分からないがー生活を望めず、生きていた。もしかしたら本当に社会不適合者なのかもしれない。しかし、その社会不適合者である僕は、いくつかの自伝的小説を書き残した。そこの文にはこんなことが書かれている。




「障害者ってそんなに社会にいらないの?」

「君は社会からいらないといわれたらそれを素直に認めるのかい」

「障害者だともしかしたらお金はあまりもらえないかもしれない。でも芸術を残すことはできるのだよ」

「僕は自伝的小説を書き残す。自分が生きてきた証をこの世に残したい。だって悔しいじゃないか。生きてから死ぬまでいらない子扱いされるのは」




 思うことは生きてきたことも創作物も含めて、障がい者の為の可能性の道の一つになればと思った。統合失調患者が家にただ閉じこめられるのではなく、発達障がいの人がただ無能だと馬鹿にされるのではなく、自分自身の使命を見つけられたらと思う。確かに障がい者は会社とかでは閑職につけられて将来性もない。給料も低い。だからこそ芸術を残せば良いと思う。夢は叶うかと聞かれれば叶うとも言えるし叶わないとも言える。文学賞や芸術賞を頑張れば取れるかとかそういうものは分からない。ただ芸術を創ればそれはそれだけ作品として残っていく。

 


自分の生きている道がのちに誰かの歩く道の灯火になればいいなと思った、と。

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