第9話

●月●日


 夏は食中毒に気を付けようと思った出来事。


ある街で友達とルームシェアをしていた。友達も僕も給料が雀の涙のほど。それから家賃や食費などが消えるとほとんど手元に残らなかった。当然倹約生活しなくてはいけなかった。




 食事でもっとも節約できる食べ物それは、鍋物とカレーだった。一週間ほどの肉と野菜を買い込み、鍋で、ぐつぐつと煮る。すると鍋とかカレーのできあがりである。カレーに関しては、一日目はカレーを食べ、二日目にカレーを食べ、三日目にカレーが少なくなってきたら、ご飯と一緒に炒める。カレーチャーハンのできあがりである。二人で、




「うまいねえ」

「そうだねえ、おいしいねえ」




 そういいながら食べたものである。その友達が一度だけこれは食いもんじゃないと言った料理がある。それはキュウリの煮物である。なんてことはない。きゅうりを鍋の中にぶちこんでみたのだった。キュウリの煮物を食べるとやたらに汗が出てきた。だけどおいしくはなかった。創作料理は刺激になるし発見もあるが、失敗をするとえらい目にあう。





 とある年の7月の半ばにいつもの通り、肉や野菜、カレー粉をたくさん買い込んでカレーを作っていた。じゃがいも、にんじん、たまねぎをそれぞれ切り刻む。じゃがいもは芽を取り除き、皮をむき、一口大に切る。にんじんもおなじく水で洗い、一口大に切る。鍋に肉とじゃがいも、にんじん、たまねぎを入れ炒め、水を加え煮込む。あくを取ると、カレールーを入れてかき混ぜてできあがりである。



 火を消して一時間ほど待ってからご飯にカレーをよそう。

 あつあつのカレーを冷ましながら口に運ぶ。スパイスの香りと味が口の中いっぱいに広がる。じゃがいももほくほくでおいしい。肉もジューシー。肉も近くの専門店で買ってきた特売品の豚肉である。安くておいしくてまさに庶民の味方だと思う。



 そんな庶民の味方であるはずのカレーが一度だけ僕に牙をむいたことがあった。



 いつもの通りにカレーを作る。一日目、二日目は平気だった。三日目いつもの通り、カレーに火を入れる。そしてカレーが温まったら白米の上に乗せる。思えばこのとき匂いが変であった。生ゴミのにおいがする。



 いやいやいや、それでも胃の中に入れてしまえば問題ないと思った。なにせ一週間分の夕飯代一万円がすべて詰まっているのである。ここで全部捨ててしまったら大赤字である。ルームメートはそのカレーを一口食べるなりトイレへと駆けこむ。そして、



「おええええええええええええええ」



と吐いていた。そして、

「●、これ食いもんじゃないから食べない方がいいよ」

 そう言われると食べないわけにはいかなかった。カレーを作った張本人が責任を持って食べないと。僕も一口食べる。

 生ゴミのにおいがした。そして口に入れたカレーが外に飛び出そうとしている。それでも、一万円のカレーである。食べなくては! ただただ胃の中にカレーを突っ込んだ。そうして食べ終わった。胃の中がぎゅるぎゅると鳴っている。



 息が生臭く感じる。洗面台に行き水を飲む。すると、おえっ、とえずいてしまいさきほど食べたカレーがびちゃびちゃと胃から口の外へと吐き戻される。



 思わずその場にうずくまってしまった。頭がぐるぐると回る。ルームメートに告げる。

「ごめん、救急車呼んで!」

 しばらくして救急車が到着する。担架で運ばれる。そのときもう一回吐いてしまった。しばらくして病院に運ばれる。



 診察の後、ベッドに寝かされる。点滴を打ってしばらく寝ると気持ち悪いのがなくなった。

その後、一日寝る。祖父が面会に来てくれたらしいが夢うつつだった。友達にいつも飲んでいる精神薬を持ってきてもらった。




 次の日に退院したのだが、会計の値段を見て驚いた。五万円くらい取られたのだった。お金がないのに手痛い失費だった。

 食事には気を付けないといけないとつくづく思った。衛生面とか。衛生面とか。衛生面とか。飲食店に従事している人は大変だし、こだわりがないと続けられないと思った。食中毒の問題もあるし。

 



 飲食店にバイトで入ったことがあるが、やっぱり清掃ばっかりだった。そこの店長に教わったのだが、飲食店は8割の仕事が清掃とのことである。

 それに動画をみたのだが、匠と呼ばれる人もやっぱり清掃のシーンを多く流していた。何の本かは忘れたが、基本は清潔が大事だと載っていた。



 今回何事も清潔と清掃の大切さと大変さが分かった。とりあえずこれから机の上を片付けようと思った。

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