第6話
中学校でいじめられた話を洗いざらい主治医に話してしまうと、そのあとでこう付け加えた。
「こういう風ないじめです」
先生はしばらく腕組みして、口を閉ざしていたがやがて言う。
「いじめが統合失調症になった原因のひとつだとは思います」
「そうですか。やっぱり、嫌だなあ」
思わずははっと笑う。そのとき、つうっ、と一筋の涙がこぼれ出た。それからどんどん涙がこぼれ落ちた。
「何で涙があふれ出るのかな。そんな悲しくないのに」
部屋に戻るとなにもやる気がしなくて、ただただ眠りたかった。すごく眠たかった。疲れた。疲れた。本当に疲れた。
布団に潜り込むと、目を閉じた。そうして一日中眠りについた。頭の中がトロンと、そしてぼーっとする。そしてなんとなく身体が冷たく感じる。もう身体が動かない。
たぬきの子がシャワーを浴びている
たぬきの子がシャワーを浴びている
ああ、眠い、眠い、眠いの子
ああ、眠い、眠い、眠いの子
ぐーぐーぐーぐーぐー
ぐーぐーぐーぐーぐー
人を呪い呪われの人生 ちょっと疲れちゃったな
人を呪い呪われの人生 ちょっと疲れちゃったな
シャワーを浴びてみそぎをおこなうのだ
嫌なこと全部、文字通り水に流してしまうのだよ
「蒼・・・・・・、蒼さん」
遠くで声が聞こえる。それにしてもなんて布団の中って気持ちいいのだ。
「蒼・・・・・・、蒼さん」
僕のことを呼んでいる? ふわーっと身体が持ち上がる感じがする。目を開けると、カーテンが開けられ外がまぶしかった。看護師の●●さんがカーテンを開けていた。看護師が言う。
「いつまでも眠っていたら身体に毒です。そろそろ起きてご飯を食べなさい」
身体に力が入らない。
「放っておいてください。疲れたので少し休みます」
「疲れたってあんたねえ」
ぐう。ぐう。ぐう。ぐう。ぐう。
ぐう。ぐう。ぐう。ぐう。ぐう。
目を閉じるとまた眠くなった。●●さんが何か言っている。しかし、あいかわらず眠い。眠いのだ。
ぐうーっと意識がまた落ちていった。
熊が洞穴で冬眠するみたいに、僕も布団の中にもぐり込んではこんこんと眠り続けていたのだった。
そんなときにまた主治医との面談が行われたのだった。いつもみたいに布団の中に入って眠っていると、
看護師の●●さんが部屋にこんこんとドアを叩いて入ってきた。
「蒼さん、今日の午後1時から主治医の先生と面談だから」
「分かりました」
時計を12時30分に合わせた。そうしてまた目を閉じて夢の世界へと誘われていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます