第5話

 統合失調症になった原因はなんであろうか。思い当たることはいくつもあるが、中学でのいじめが原因ではないかと思った。

 主治医の先生との面談の時に、中学校で散々いじめられたことを話した。そして主治医に聞いてみる。

「中学校のときにかなりいじめられていたことがあるのですが、いじめられたことが引き金となって、統合失調症を発症することもあるのですか?」

 主治医はしばらく黙っていたがやがて、

「どういう風ないじめを受けたのですか?」




 時は数年前のことになる。中学2年生になった僕は、ある地方に引っ越してきた。元々親が転勤ばかりする職業についていて僕自身も学校を2年くらいいるぐらいで転々としていた。

 引っ越しして新しい中学校に転入して、僕は一人になった。しばらくの間は教室で自分の椅子に座っていると生徒が僕の周りを取り囲んできた。

「どこから来たの?」

「前の●●はどんなところだったの?」

「部活とかには入っていた?」

 今ではどうしてあんな騒いだのかはわからないが、そこでめちゃくちゃ毒舌を吐きまくってしまったのだった。もともと人と関わるのはすごく苦手だったがここの場所でも思い切り人見知りが発動してしまったのだった。人から注目されると緊張しきってしまい頭の中がいっぱいいっぱいになってしまい、わーわーと騒いでしまうのだった。




 そんな中しばらくしてからいじめが始まった。自分の椅子に座っていると、数人のグループに囲まれて股間の部分をモップの柄の部分でつつかれたり、筆箱を窓から外に捨てられたり、トイレの個室に閉じ込められたりした。



 いじめられることが決定打となった出来事は、体育祭の練習だと思う。



 今でも行事として行っているかは分からないが、当時体育祭と呼ばれるいわゆる運動会では人間ピラミッドなるものが行われていた。5段で下から5人。4人。3人。2人。1人。と手とひざを地面について乗っかっていくのである。そこの立ち位置でクラスメートともめてしまったのである。最初右端だったのだが、文句を言っていたところ真ん中に変えてもらいやっぱり端っこに戻してもらいたいといったところケンカになってしまったのである。


僕は短期記憶がかなり悪いが、当時それに気づかず、自分の発言に対してそんなこと言っていないと言い張り、その結果、学校の先生をはじめ生徒たちから総スカンを食らい、嘘つき呼ばわりされ、それから積極的にいじめられるようになったのだった。




 今では言える。短期記憶が悪いので覚えていませんと。もっと言えば学校生活よりも楽しいものがあったので学校生活は消化試合であり優先順位が低いのでなにをしたか細かいことはよく覚えていませんと。当時そのことに気づかず、いろいろと弁明したのですが、ちゃんとよく覚えていませんとしっかりと先生に伝えればよかった。嘘つきと言うよりはどちらかというと記憶力が悪いのですと。




 先生たちの発達障害についての知識がなかっただけなのか、それとも悪意があったのかは分からない。いじめられるきっかけは確かにぼくが自分で作った。だけどみんなして結束して群れて僕のことを叩かなくても良いじゃないのかと当時はそう思った。

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