第2話
朝、昼、夕食後、寝る前にそれぞれ10錠くらい薬を出され、それを水とともに飲み干す。一回で薬を飲みきれなくて何回かに分けて飲む。
精神薬を飲むと、ものすごく眠たくなる。一日中ベッドの白い布団の中で眠りにつく。
たぬきの子 たぬきの子
ゆらあり ゆらあり
お薬飲んで お薬飲んで
夢のお国へ 夢のお国へ
たぬきの子 たぬきの子
ゆらあり ゆらあり
ブランコこいで ブランコこいで
夢のお国へ 夢のお国へ
たぬきの子 たぬきの子
ゆらあり ゆらあり
今だけは 今だけは
悪夢を忘れて 悪夢を忘れて
ねんねしな ねんねしな
それでも一ヶ月近く眠りに眠っていると少しずつ目が覚めてくる時間が増えてくる。そこへある疑問が湧いてくる。
(僕の病気は何?)
看護師が常駐しているスペースがありそこはこの病院では、ナースステーションっていうのだが、そこに寝間着のまま行く。
「すみません」
看護師がドアの所に駆け寄ってくる。
「ひとつ聞いても良いでしょうか?」
「なんでしょう」
「僕の病気はなんていう病名ですか?」
看護師はしばらく黙っていたが、
「私はお医者様じゃないので詳しいことはわかりません。お医者様に聞いてみたら良いんのじゃないでしょうか」
「分かりました。ありがとうございました」
しかし、なかなか主治医となった先生は捕まらなかった。
それにしても病院食はまずかった。本当に薄味なのだ。それに少量しか出なかった。高校生で食べ盛り、育ち盛りの僕としては本当に物足りなかった。ハンバーグとか鮭のフライとかの料理が出る時もあるが、それでもやっぱり薄味で少量だった。だからよく購買でサンドウィッチやおにぎり、チョコレートなどを買ってはよくむさぼり食べていた。
部屋でチョコレートをむさぼり食っていたある日のこと、白衣を着た主治医が、がらっと、大きくドアを開けて入ってきた。
「少し面談しましょうか」
一緒に面談室に入る。先生が奥の椅子に座り、向かい合って僕が座る。
先生が先に話し始める。
「蒼くんの体重がものすごく増え始めているけどどうしたのですか?」
「それは・・・・・・」
「それはそうと聞きたいことがあるのじゃないの?」
そうだった。
「先生、僕の病気はなんていう病気なのですか」
先生は口をへの字に曲げる。
「あなたがそれを知ってなにになると言うのですか?」
「自分のことが知りたいだけです。僕が今どのような状態なのか、今後どうなっていくか」
「そういうことか」
「蒼さんは今疲れていて、幻の声や幻の思考が頭を駆け巡っている状態です。これはちゃんと真面目にお薬を飲んでいれば改善されていきます」
「はあ」
「病名はまだ分かりません。今後の経過を見ていく過程でついて行くとおもいます。これでどうですか?」
「分かりました。ありがとうございました」
(幻の声、幻の思考・・・・・・)
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