第19話

俺はビチ子を見下ろしていた。


するとスクッと立ち上がって話しかけてきた。


「あ、あのさ修也。ごめん」


謝ってきたけど俺はこう言った。


「誰だっけ?」

「え?」

「悪いんだけど知らない人だな。知らない人とは喋らないようにしてる」


そう言って俺はコンビニの中に入っていったが、それでもついてくるビチ子。


「ご、ごめんなさい。ほんとに」

「なにが?だから俺は何も知らないから」


そう言って俺は食べたいものを買うことにした。


弁当、それから飲み物はお茶を選んだ。

横でビチ子が腹を鳴らしていた。


「修也?ごめん。なにか買ってくれない?昨日から何も食べてなくて」

「知らないよ。なんで俺が奢らないといけないんだよ」


そう言ってレジに弁当を持っていこうとすると俺の手を掴んできた。


で、喚き始めた。

そこに店員さんがやってきて注意していた。


「他のお客様の迷惑になりますので」


やんわりとそう言われていたが。


俺には耳元でこうやって囁いてきた。


「たいへんですね。あなたも粘着されていて」


同情するような目をしてカウンターに戻っていった。


どうやらビチ子のことを知っているらしい。


すっかり有名人になったようだな。

悪い意味で。


それから会計を済ませて店を出る。


ビチ子はまだ話しかけていく。


「お、お願い修也。ちょっとでもいいからさ」


その時だった。

俺のスマホが鳴った。


着信したらしいので出てみることにする。


相手は坂上だった。


『ねね。白銀くん?今度さ料理してあげる!』


どういう風の吹き回しなんだろう?

そんやことを言ってた。


「急だね」

『私もメイドになりたいから!』


そう言ってた。


声が聞こえたのかビチ子が話しかけてくる。


「お、お願い。メイドでいいから雇ってよ。修也今すごい人気ある配信者って聞いたよ」


そう言って必死に媚びを売ってくるらしいビチ子。


「な、なんでもするから!お願い」


頭を下げてきた。


俺はそんなビチ子に質問してみることにした。


「なんでも?」

「う、うん!なんでも。修也が望むならいつだってなんでもさせてあげるから」


そう言ってきたので俺は言ってみることにした。


「ふぅん、なんでもしてくれるわけね」

「うん!なんでも!」


俺はそんなビチ子についてくるように言った。


それから俺は駅に向かった。


「な、なんで駅なの?」

「縁切り料って分かる?」


そう言って俺は財布から金を取りだしてチラつかせた。


「お金あげるから田舎に行きなよ」

「え?なんで?」

「分かってんだろ?こんなとこいてももう無駄だってこと」


悲痛な顔をした。


「悪評が広まりすぎててどうにもならないんだろ?だからお前のこと知らない人がいる所まで行けよって言ってる」


俺の個人的なイメージだけど田舎ならこいつのこと知らない人もいるだろ。


まぁ、知られたら田舎の方がしんどいかもだけど。


「一回有名になっちゃったけど地方で農業してる人がいるって話を聞いたことある。お前もそれでもすればいいんじゃない?」

「の、農業?」

「自分がもう選べる立場じゃないのは理解してるよな?都会がいいとか言うなよ?」


そう言うとビチ子は頷いてた。


「行く。最後にお願いしていい?」

「次はもうなにもしない。縁切り料だからな」


そう言って俺はビチ子が行くって決めたとこまでのキップ代だけくれてやった。


片道代だけだ。

そのキップを買って渡してやる。


「そのキップの使い方は換金じゃないぞ?分かってるな?」

「う、うん」


そう言って駅のホームの方に向かっていこうとしてた。


俺は最後にこう言った。


「もうお前のことは知らない。俺の前に出てきても全部無視する」

「ごめん……もうここには来ないよ」


憔悴しきっているのかほんとに辛そうな顔をしていた。


それから改札をくぐっていったビチ子を見てから俺は寮に帰ることにした。


これでもう関わることは無いし俺の前に現れることもないだろう。


俺は部屋に入ると寮のレンジを使うことにした。


もろもろの問題にかたが付いていつもよりご飯が美味しく感じられる。


俺としてはかつて幼なじみだったやつがあれだけ燃えてると少しだけ同情するような気持ちもあったので、落とし所としては悪くないんじゃないかなと思ってる。


もう十分に反省してるだろうし、俺に関わることもないだろうし、結末としてはこんなものだろう、と思う。


そのとき


俺のスマホがまた鳴った。


坂上からの連絡で俺が知らない間に残り2件、先輩と斎藤からのメッセージもあった。


内容はどれもダンジョンに行きたいとか、遊びに行きたいとかっていうもの。


んー。

どうしようか。





【終わり】


とりあえずこれで完結とします。





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幼なじみがパパ活してたから絶望して超高難易度ダンジョンに人生RTA配信しに行ったんだけど、大人気配信者パーティを助けたせいで伝説の冒険者としてネットで話題になってます。幼なじみは退学になったそうです にこん @nicon

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