第2話 少女と黒猫
フードを被っている少女は自動販売機の前に座り込む。真っ暗闇の町で少女が一人。少女はどこか虚な目をしながら綺麗な星空を眺めていた。
年齢は14、親から見放されて、学校にも馴染めず、友達も何もかも少女にはなかった。持っているのは親からくすねた3千円で昨日お水を買って2900円になってしまった。お腹も空いて、行くあてもなく、町の隅の自販機で座り込んでいる。少女は泣くわけでもなく、世の中に絶望しているように虚無だった。フードを深く被り、たまに通る町行く人に気づかれないようにしていた。
ある時、少女のお腹が鳴った。真夜中の町ではコンビニくらいしか食べるものが売っていない。お腹を抑えるも我慢の限界で食事を買うしかなくなった。残り少ないお金でコンビニでパンでも買おうと立ち上がる。少女はゆっくりとコンビニがある駅に向かって歩き出す。
コンビニで丸いパンを買った。一番安くてお買い得なパンだった。パンが100円で、残り2800円になった。近くの公園に移動して、椅子に座り、パンを食べようとした時、綺麗な青い目をした黒猫がゆっくりな足取りで近づいてきた。
「にゃぁぉ」
黒猫が鳴き声を上げながら足元まできた。
「これほしいの?」
「にゃぁ」
パンを差し出すと黒猫は鳴き声を上げて返事をする。
「しかたないな。あげる」
少女はパンをちぎり黒猫に食べさせる。美味しそうに食べる黒猫の姿に少女も嬉しくなる。
「にゃ」
「まだほしいの?」
そう呼びかけると黒猫も答えるように頷いて要求してくる。
「はい、あげる。おいしい?」
「にゃ」
「よかった。このパンあげるよ」
少女はそう言うと食べるはずだったパンを全て黒猫に渡した。黒猫の頭を優しく撫でて、少し頬を緩める。黒猫が一緒に居てくれて、少女は少し暖かさを感じた。再度お腹が鳴った少女はパンを買うために公園の椅子から立ち上がる。するとパンを食べ終わった黒猫がついてくる。
「もうあげないぞ」
少女は後ろを振り向き、町の明かりに照らされている黒猫に呼びかける。
「にゃ」
「ほんとにあげないぞ?」
「にゃ」
黒猫はパンが欲しいためではなく、少女に懐いてしまったのだろうか。それに黒猫は少女の言葉に返事を返しているようだった。
「おまえ言葉わかるのか?」
少女はしゃがみ込み黒猫と同じ目線で尋ねる。
「にゃぁ!」
黒猫はそう鳴き声を上げると少女に飛び込んできた。少女は驚きで少し後ろに退くが黒猫を優しく受け止める。
「わぁ⁉︎おまえ賢いな」
「にゃ」
「一緒にくるか?」
「にゃ」
「そうぜつな旅になるかもよ?」
どこにも居場所がなくなった少女はこれからの旅がどのようになるかわからない。ただ楽ではないことくらいは理解できる。
「にゃ!」
「パンも少しだけしかあげられないよ?」
「にゃ...」
「それでも一緒にくる?」
「にゃぁ!」
「これからは相棒だ」
「にゃぁぁ」
「まずはおまえの名前をつけなきゃな。名前はう〜ん、、黒猫だからクロ!」
「にゃゃ!」
「私は咲これからよろしくね。クロ」
「にゃ!」
少女は黒猫のクロと旅に出ることを決めた。寂しくて虚無だった少女は黒猫と出会いで少しは曇りが晴れたように感じた。少女は一緒に居てくれる存在に暖かさと嬉しさから黒猫を撫でる手は優しく、自然と笑みが溢れた。
31歳サラリーマンで独身な俺が少女を飼うことになった件について。 神崎夜一 @guiltycrow
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