31歳サラリーマンで独身な俺が少女を飼うことになった件について。

神崎夜一

第1話 少女とサラリーマン

真夜中な町を黒猫と共に少女は走り抜ける。

少女の髪は亜麻色で黒いジャケットを羽織っていた。そんな小柄な少女が一人で町に居るのはとても危険だ。

ただ、そう思った瞬間には視界から消えて、少女と黒猫はどこかへ行ってしまった。

今のはなんだったのだろうか、一瞬の出来事で理解が追いつけない。警察へ連絡した方が良いのか、探した方が良いのか、はたまた今のが夢だったんじゃないかさえ浮かんだ。ただ、もう少女はどこかへ行ってしまったわけで、こんな真っ暗闇な広い町で警察に頼んでも、自分で探そうにも解決しそうにない。少女のことは明日、駅前の交番に伝えることにして歩き出す。家に帰って残業で疲れ切った身体を早く休めたい。そんなことを思ったが、ズボンのポケットに入っている財布がないことに気づく。


「あれ、財布どこ行った」


あらゆるところを触ったが財布は出てこない。カバンも隅々まで見たが無かった。駅を出たさっきまでは財布はあったはずで、そしたら駅から帰るまでの道で失くした可能性があるわけで。


「まさか...」


あの時のことを思い浮かべると少女は自分に触ってきて、すぐさま走り抜けたように感じた。自分は偶然の出来事だと思ったが、まさか財布を盗むなんて考えられなかった。

 俺は駅までの道を戻り、財布を落としてないかを確認して、自分家へと帰る。

 

「はぁー」


身分証、保険証など、お金以外にも財布には入れていたので色々の手続きが面倒くさい。それに加えて、上司や営業先に媚びへつらって苦しい中稼いだお金が無くなった。そんなことを考えてのため息だった。だが、俺は帰りに駅の交番に相談しなかった。悔しい気持ちと少女を心配する気持ちがあったからだ。自分で探して理由を聞きたい。盗んだ理由と真夜中の町を一人で居る訳を。

ただ、真夜中の町を黒猫と少女が走り去る姿は魅力的に思えた。


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