スーパーブルームーン

はる

スーパーブルームーン

押し入れを漁って、その昔遠足に持っていったきりのレジャーシートを引っ張り出した。

開いてみると、自分の体に対してかなり小さい。他のものを探すか迷うも、もう時間がないことを思い出して我慢することにした。

レジャーシートと、スマホ。双眼鏡も持って行ってみるか、役に立ちそうだし。

ピークと言われている時間まであと5分。

早足で部屋を抜ける。

勢いよくドアを開けて、感嘆した。

「空、明るい……」

田舎の夜は暗い。この辺りは特に人通りも少なく、街路灯も満足に無いため、日が暮れるとまったくの闇になってしまう。

それが、今日は違う。

なんとなくわくわくしながらより明るい方へと顔を向けると、そこにはまん丸の月が輝いていた。

早速地面に寝転ぼうと思ったが、一旦思い留まって虫除けスプレーを全身にかけた。

「よし、ほんとに準備完了」

誰に聞かせる訳でもないが呟いて、今度こそレジャーシートに横になった。

しばし無言で空を眺める。

月があまりにも明るいからか、今日は星が見えない。しばらくぼーっとしていたが、ふと思った。

「……青くない」

昔、童話を読んだことがある。

きつねが狼に会ってしまい、逃げようとするも捕まってしまう。が、きつねは近くにあった井戸を指し、こう言うのだ。

『私よりもその井戸の中にあるホットケーキの方が美味しいですよ』

もちろん井戸の中にホットケーキがあるはずはなく、ホットケーキに見えるのは水面に映る満月。だが、それを信じた狼は井戸に入り、怒った狼が井戸を這い上がるすきにきつねは家に帰った―

昔はいまいちぴんと来なかったが、今見ると確かにホットケーキのような色をしている。青というより、薄い黄色。

なんだかお腹が空いてきた。

空腹もあるが、そろそろ寒くなってきた。まだ8月だが、そういえば明日から9月なのだ。これから秋が始まるのだろう。

起き上がって伸びをする。あ、1箇所蚊に刺されたかな。

ひとつ苦笑して、私は空に背を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スーパーブルームーン はる @flower_05

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ