ゲーム内の友達とリアル学校のクラスメイトが、最近俺に対して何かをしようと企んでいるようだ

武 頼庵(藤谷 K介)

最近友達が俺に対して何かをしようと企んでいるようだ



「それじゃまた明日なぁ!!」

「またなぁ!!」

「おつ!!」

「ばいばぁ~い!!」


 それぞれがお別れの挨拶をすると、それまでみていたディスプレイ上からも、ボイチャからも一人また一人と去って行く。

 誰も何も言わなくなり、少しだけ耳元に流れるささやかなノイズを聞きながら、俺はふぅ~っと深呼吸をして、ゲームからログアウトした。

 そして静かにディスプレイの電源を落とす。


 春に高校2年生になった俺、角先灯里つのさきとうりはあらゆる面でいたって普通の男子高校生だ。

 特に頭が良い訳でもなく、学年でも成績は常に中位中の中位。運動面での活躍が出来るかといわれれば、中学生時代に少し野球をしていたことが有る位で、そこまで運動神経が良い訳でもない。因みにその時も常にレギュラーなんて夢のまた夢、ベンチどころかベンチ外。つまりは応援要員でしかなかった。

 それならば外見で勝負? そんな無謀な勝負を誰が受けるかっていうくらい、平凡な日本人顔である。

 多少は整えられた顔立ちだとは思うけど、特徴もなく、似顔絵を描いてもらえばもれなく特徴が無くて書きづらいと言われる始末。

 

 ならば両親の階級で勝負しようかと思っても、父親はいたって普通の商社のサラリーマンだし、母親は美容院の美容師をしている。どこをとってもいたって普通。どこにでもいると言っていい程普通の高校生だ。


 まぁ両親が共働きで、しかも時間的にも遅く帰って来るという事もあり、割と自分の時間が取れる生活を送ることが出来ているのは感謝したい。そしてそんな時間だけを持て余しそうな俺に両親はパソコンを買い与えてくれた。


 そのおかげで、小学生の頃からもれなくパソコンにどっぷりとハマり、中学生になってからはオンラインでゲームをするにいたり、その時から今までずっとハマるゲームを変えつつ同じような生活を続けている。


 先ほどまでも高校に入学してから始めたオンラインゲームで知り合ったクランメンバーと共に一冒険した後で解散した直後だった。


「アイツら……最近妙に俺にちょっかいかけてくるんだよなぁ……」

 誰もいない家の中独り言ちる。

 ゲームとはいえ真剣に冒険をしてると、日常会話以上にしゃべる様になって、気が付くとのどがカラカラになっている事が有る。

 そんな喉を潤すために、俺はヘッドホンを外し、椅子から立ちあがって部屋を出る。階段を下りてキッチンへと行くとすかさず冷蔵庫の中を漁り、お目当てのコーラを取り出してがぶ飲みした。


 そして先ほどまでの事を思い出す。


「トーリってさリアルで彼女いないんだろ?」

「ビユ、前から言ってるけど俺はモテた事がない!! 断言する!!」

「あははは!! 断言するなんて本当にモテないんだね!!」

 トーリというのはゲーム内での俺のハンドルネームで、ビユというのは俺と同じクランの筋骨隆々の聖騎士。本当にモテないと笑っているのがエミリアという魔術師の女の子だ。


 この二人以外にも俺が所属するクランには3人程いるのだが、今日に限って用事があると一緒にゲーム内で遊ぶことはできなかった。


「本当に彼女いないのか?」

「くどいぞビユ!!」

「あははは……じゃぁさ……私がそのユーリの彼女になってあげようか?」

「え? いやいやいや!! からかうなよエミリア。それにそんなこと言ってお前実は男なんだろ?」

 ネットゲームでは性別を違えてキャラを作る事は良くある。だからこそ俺はエミリアの言っている事を軽く受け流していた。


「あはははは……またフラれちゃった……」

「エミリア頑張れ!! 俺は応援しているぞ!!」

 シュンと気落ちするエモを出しつつ声を落とすエミリアに、ビユがポンポンと肩を叩いて慰める。


――まぁ、こういうやり取りが出来るようになって楽しさも増えたんだけどな。

 二人の様子を画面越しに見ながら、俺は口角が少しだけ上がる感覚を感じていた。


 そしてまた三人でバカ話や、本当に他愛ない身近にあった近況報告などをしながら、冒険に戻るのだった。






「おはよー……」

 ガラッと引き戸を開けながら、自分の所属するクラスの中へと入っていく。誰も俺に返事を返してくれる事は無く、静かに自分の席へと歩いて移動し、椅子を引いてカバンを机のわきにかけ椅子へと腰を下ろした。


「よう灯里!! おはようさん!!」

「おう大悟おはよぉ~」

「どうした眠そうだな。またゲームか?」

「まぁなぁ……。その後に動画見てて眠れなくなって……」

 ガハハと笑いながら俺の肩をバシバシ叩くのは、大鳥大悟おおとりだいごという所謂イケメン男子で、俺の前の席に高校2年の初めから座っている。

 大悟はあまり意識してはいないようだけど、かなりクラスの女子達から注目されている男子だ。そしてそんなイケメンぶりは陽キャ陰キャ問わず誰にでも同じように優しく接している事でもわかる。

 あまり目立つことがないこんな俺にも、毎日声を掛けてくれる優しい男子なのだ。


「おはよぉ~!!」

「おはようございます……」

 俺達が話をしているところへ、ぱたぱたと足音を立てながら近寄って来る二人の女子。元気に挨拶したのが宮田千佳みやたちかで、その元気に違わず小さい頃からバレーボールをしているという活発系女子だ。

 その後に少し大人しい感じで遠慮がちに挨拶してきたのが若松英美里わかまつえみり。実は高校2年生になって初めて知ったのだが――というか大悟から聞いたのだけど――男子生徒の中でも人気ナンバーワン女子生徒らしい。何でも陰で男子達で行われている『彼女にしたい女子』アンケートで去年と今年の二冠を達成したらしい。


 外見は黒髪をさらさらと腰まで伸ばしていて、卵型で小さな顔に少し大きめな瞳、そして整えられているであろう色白の肌という、何とも男子たちの『なにか』を凄く刺激してもおかしくない容貌を持っている。

 成績の方も常にトップ20に名を連ねる程なので、俺からしたらもう高嶺の花どころか、声を掛けてもらえる事が奇跡に近い。しかし何の奇跡か実は隣の席だったりする。


――神様ありがとう!!

 隣の席が彼女だと知った時には本当に神に感謝したね。


「何の話?」

「ん? あぁ灯里が昨日のゲームでな――」

 宮田が大悟の隣の席に腰掛けると、大悟へ話しかける。そこからは三人での会話が始まるのだけど、俺は自分の事が話題になっているのにその輪の中に入る事が出来ず、静かに頭を伏せつつ腕を枕に少し眠りの中へと入っていく。


「…………」

 

そんな俺を見ている人が居るとも知らずに。




 学校生活は割と平穏無事に時間が過ぎていく。

 友達も自分なりには居る方だと思っているので、クラスの奴らともまぁまぁ仲良く話をするし、話しかけられることは珍しくはない。


 ただ――。


「あの……」

「どうした若松」

 俺の方を見ながら困った顔をする若松。

「教科書……見せてもらえないかな?」

「え? 珍し……くはないか……」

 時々ではあるけど、隣の席の若松は教科書を忘れてくることが有る。まぁしっかりと見えるようで意外とそそっかしいのだろうと思っていたのだけど、その頻度が『時々』と表現していいか分からないくらいの頻度で有る。

 その都度机を寄せて一緒に教科書を見る事になるんだけど、なんというか若松の寄って来る距離感がおかしい。


 一つの教科書を二人で見るのだから当たり前といえば当たり前なのだけど、俺が隣を見るとすぐ側に若松の顔が有るのはどう見てもおかしいと思う。

 もちろん真横にあるというわけじゃないけど、その位の距離間にいる感じ。


――これはこれで役得なんだけど、クラスの男子からの視線が痛い……。

 殺気ともとれる視線を感じつつ、隣りの若松にソレを悟られない様に授業を受けるのは辛いものがある。


 そして若松とのことはそれだけじゃない。


「灯里君、この本そっちにお願い」

「ほいほい」

 なんと俺と若松は図書委員に一緒に任命された。任命されたというのはおかしいのかもしれない。俺はやる人が居ないからという理由で先生に指名されたのだけど、若松は自分から立候補したのだ。

 そんなわけで、週に一度は若松と共に学校の図書室にて、貸し出しや返却の作業を行う事になっている。

 そうなるとどうなるか。段々と話をする事も多くなるし、仲良くもなっていくのである。お互いに趣味の事や休日に何をしているのかなどを話すようになると、更に他の人が知らない事を知っているという様な優越感も生まれる。


――若松っていい子だよなぁ……。

 学校の中で『彼女にしたい女子』人気ナンバーワンに選ばれるのもわかるなぁ。なんて感想が俺の中で生まれる事になる。しかしそこで勘違いしてはいけない。同じ委員の仕事をしているからだし、同じクラスだし、席が隣なだけで全てが偶然なんだ。

 自分にそう言い聞かせるのが日常になった。


 かくして、日常は過ぎていく事になるんだけど、一緒にいる若松は俺の事を見ながら何故か何か言いたそうな顔をする事が有る。その度に「どうした?」と聞くのだけど、「何でもない」と返される。

 ただしその後に「まだなのかな」とか「そろそろかな?」などと独り言をつぶやく様子がある。そういう時は聞こえているけど聞こえないふりをするようにしている。

 俺がへたにツッコんでいいのか分からないから。







「さて今日も頑張りますか!!」

「あははは今日も元気だねぇミチカは」

「そういうダンゴだって何か張り切ってるよね?」

「もちろん!! 今日はが実装されるからな!!」

「あれ?」


 いつものように学校が終わり、家に帰って軽く夕飯をすませパソコンの前に座り、ゲームをしていると、どこからともなく集まって来るクランメンバー。


「なぁ、あれってなんだ?」

 俺がダンゴというハンドルネームの拳闘士に声を掛けると、俺に向けて両手を広げるエモを出しつつ答える。


「なんだトーリ知らないのか? てっきり……」

「てっきりなんだよ……」

 俺が更に質問しようとすると同時に、ゲーム内でアナウンスが表示された。


『本日アップデート!! ついに実装!! 結婚システム!!』

 

 ババーンという大きなBGMと共に流れたそのアナウンスを見て、ダンゴが言っていたあれがこの事だったのかと思い至る。


 そして――


「トーリ!!」

「え?」


 俺のキャラクター前にトトトと走って来る女の子のキャラクター。そして俺の目の前で立ち止る。


「トーリ!!」

「は、はい!!」

「わ、わたしと、けけけこけこつきつきつつ……」

 俺の前にはエミリアの姿があり、エミリアは花束を両手で持っていた。そんなエミリアをクランメンバーが落ち着くようにと宥めている。


「ふぅ~!! トーリ!!」

「うん……」

「改めて!! 私と……………………」


――うん。長いな!! なんだバグったのかな? 

 俺の頭の中にハテナマークが浮かぶ。


「付き合ってください!!」

「は?」

「結婚を前提に!!」

「はぁぁ!?」

 俺の目の前に花束をバッ!!と差し出すエミリア。


「良く言ったぁ!!」

「ひゅーひゅー」

「あついねぇ!!」

「はやくこたえてやれよぉ~」

 などとクランメンバーが囃し立てる。

 

「ダメ……かな?」

 ボイスチャットから聞こえるエミリアの声は少し震えているように感じた。



「いいよ。俺で良ければ」

「え? ほ、本当に!?」

「うん。俺もエミリア好きだし」

「や、やったぁ!! つきつきつつつき!!」

「「「「落ち着け(きなさい)エミリア」」」」

 またも情緒不安定になったエミリアをクランメンバーが落ち着くようにと声を掛ける。

 俺もまたその中へ笑顔のまま仲間に加わった。


――そうか……結婚システムって、そういう感じなのか……。

 ダンゴがあの時何かあるようなニュアンスで語っていたのは、今目の前で行われたことを知っていたからなのだなと心の中で苦笑いした。


 前もってこのアップデートのある事は知っていたけど、自分には関係ない事だとどこか流していたので、まさかこの俺がアップデートされたその日に申し込まれるとは思ってなかった。しかもちょっと前――いや、このメンバーになる少し前にエミリアに出会った時から、段々と仲良くなりたいなと思っていた相手である。嬉しくないわけがない。


 エミリアとの出会いはこのゲームをダウンロードしたその日に起こった。高校に進学が決まりそのお祝いにと両親や親戚からいろいろと貰った中で、金銭的にも余裕が出来たからと当時リリースされたばかりの新作をパソコンへ導入した。

 導入二日後に始まりの町で出会ったのが、まったくノービス装備のままだったエミリア。街中でウロウロと何をしたらいいのか迷っているようだったのでチャットをしたのだ。俺も他人ひとの事が言えるような装備では無かったけど、エミリアよりも1日だけ先にしていたこともあって、クエストやモンスター退治の仕方などレクチャーをしていたら仲良くなり、そのまま離れるのもどうかな……と思った俺は、思い切って一緒にクランを作らないか? と勧誘した。


 普通ならちょっとは抵抗するかと思ったけど、エミリアは意外なほどあっさりと俺の誘いを承諾し、それ以来クランに入る人が少しずつ増えて来て今に至る。


――まぁ、クランメンバーはほとんどがエミリアが連れて来た人なんだけどな。

 俺から声を掛けて入ってもらうという事は考えないでもなかったけど、エミリアと仲良くしてくれる人ならという条件で考えたら、エミリアが連れて来た人や紹介してきた人ならばと俺が承認したのだ。


 そういういきさつがあって、今のクランはとても仲良しに運営することが出来ている。中でも俺というよりもエミリアを中心に結束している感まである。


――仲良きことは良い事だな。

 エミリアを中心にして、未だに先ほどの事を喜んでいる連中を画面越しに見ながら、俺は心の中で喜んでいた。







次の日――。

「はよぉ~……」

 今日も今日とて教室の引き戸を音が大きくならない様にしながら開けつつ、声も小さいながらもしっかりと挨拶をしながら中へと入っていく。


「ほぇ!?」

 自分の机について椅子を引くと、見慣れない紙が机の中に入っているのが見えた。


――何だこれ……?」

 そのままとりあえず椅子へと腰を下ろし、その紙を確認する。


――てが……み? え? これって……。

 ピンク色のその紙は良く見るとかわいい手紙で、しっかりと封がされていた。しかし裏を確認しても差出人の名前が無い。


 そこで俺はピンときた。


「おい大悟」

「ん?」

「これ……間違って俺の机に入ってたみたいだ」

「「「え?」」」

 先に来ていて、既に席にいた大悟の名前を呼び、俺の方へと顔を向けたのを見計らって大悟の前へと手紙を差し出す。

 すると大悟だけではなく、宮田も若松も驚いたような声を出した。


「いや……灯里、中は見たのか?」

「いや……。でも俺になんて手紙をくれる女子は居ないだろ? だとすると考えられるのは席を間違ったんだと思う」

「……正気か?」

「は? なに言って――」

 ガタガタ!! と大きな音を立てて席を立ち、凄い勢いで教室を出て行く若松。そして俺をキッ!! と睨みつけてから追いかけていく宮田。

「灯里、追いかけろ」

「え? なんで?」

「いいから!! 追いかけろ!!」

「わ、分かったよ……」

 いつもは優しい大悟が俺に向かって怒るなんてそうそうあるわけじゃない。大悟の迫力に押される形で俺は二人の後を追いかけた。



 かなり出会遅れた俺は教室に向かう途中のやつらに二人の行き先を聞いて、その方向へ向かう。


「はぁ……はぁ。いた!!」

 校舎の裏庭に大きな噴水があり、そこにベンチが何個かおいてある。そこに宮田と若松は二人で並んで座っていた。

 若松は両手で顔を覆い、下を向いている。それを肩を抱いて慰めているのが宮田。



「あ、あの……」

 恐るおそる二人に声を掛けながら近づく。


「灯里……」

「…………」

 俺の姿を見た宮田は俺を睨む。


「あの、その……」

「どうして中を確認しないの?」

「え? 何のことだ?」

「手紙……」


――手紙? え? もしかしてあの手紙か?


「あれは英美里から灯里への手紙なのよ」

「え? 俺に?」

 どう反応していいかからない俺はその場に立ち尽くしてしまう。


「ほら……」

「……うん」

 すると宮田の声掛けに反応して若松がベンチから立ちあがった。同時に宮田が俺の後ろの方へと視線を向けつつスッと若松から離れる。



「と、灯里君!!」

「え? あ、はい!!」

「えっと、あの……」


「「「頑張れエミリア!!」」」

 いつの間にか俺の後ろに大悟と、大房美雨おおふさみう竹下薫たけしたかおるのクラスメイト女子二人が居た。その三人が若松へと声を掛けている。


――あれ? エミリア?

 聞き覚えのある名前が聞こえる。



「トーリ!! わ、私と付き合ってください!!」

「え?」

「高校受験の日、あの日私は凍っていた道路で転んでしまって荷物をそこら中にばらまいちゃって……。時間もないし高校の場所も良く分からないし焦っていたら一人の男の子が助けてくれました」

「…………」

「その子はとっても優しくて、一緒に荷物を拾ってくれて、受験する学校が同じだとわかったら一緒に学校まで行ってくれた」

「…………」

「受験する場所が別々だと分かって離れる時に、その男の子は私に言ってくれたの」

「「受かったらまた会おう」」

 俺の中で忘れていた記憶が若松の話を聞いて蘇る。


 高校受験の日、夜からとても冷え込んで道路が少し凍っていたその日、受験する学校のかなり手前の道で道路に両手両膝をつきながら、泣きそうな表情をして荷物を拾う女の子がいた。

 俺はその子の事がどうしても放っておけず、おせっかいかとも思いつつもそれを手伝い、荷物の中にあった受験票を見て同じ学校を受験するのだと分かったので、その子を絶たせた後に一緒に学校へと向かった。


 そして別れ際に、もう二度と会えないかもしれないけどと思いながらも、その女の子が落ち着いて受験して貰えたらと思い、一声かけたのだ。


「あの時の……」

「うん……。あの時はありがとう!! そして……あの時からあなたが好きです!!」



「良く言ったエミリア!!」

「よっしゃ!!」

「ひゅーひゅー」

 俺の後ろがうるさい。


「エミリア……え? 若松……英美里……あ?」

「うん……。エミリアは私です」

「そんな……え? マジで?」

 と、いう事はもしかしてと後ろを見る。


「俺、ダンゴ」

 ニコッと笑う大悟

「私はビユ」

 少し恥ずかしそうに笑う大房

「私はミチカだよぉ~」

 いつものように元気にサムズアップする宮田

「わ、私はカールです……」

 竹下はくいっと眼鏡を片手であげる仕草をする。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!! お前ら皆クランメンバーかよ!!」

 竹下はクラスの中であまり絡んだ事が無いけど、ゲームの中では唯一の教会聖女として一緒に何度も冒険している。


「な、な……いつから……」

「初めからさ。初めから俺たちはエミリア……若松に誘われたんだよ」

 そういうと大悟は俺の肩をバシバシと叩く。



「私がみんなに相談したら、協力してくれるって言ってくれて、ゲームの中にも入ってくれたの」

「マジかよ……」

 みんなの行動力に俺は驚いた。



「で?」

「え?」

 俺の顔を見ながら大悟は笑う。


「返事は?」

「返事……か……」

 俺は改めて若松の方へと顔を向けた。



「返事はもちろん――」
















「今日も元気に一狩りいきましょぉ~!!」

「「「「「おう (うん)(はい)!!」」」」」


 俺達クランメンバーが久しぶりに全員そろって広い草原を走っていく。

 先頭を走るダンゴの後をそれぞれが楽しそうにしながら。

 

 それの隣には左手の薬指に指輪をはめ、それを嬉しそうにさすりながら走るエミリアがいる。


 ゲームでは俺の嫁になったエミリア。

 そしてリアルでは俺の彼女の英美里が――。


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