第5話 次の大食いメニューは何にする?

 俺・藤咲さん・諸星もろほしさん・滝名たきなさんの4人は店を出て適当に歩き出す。…店から離れ、周りの邪魔にならないところに来たから、忘れる前に2人に言わなくては!


「藤咲さん・諸星さん。犬も猫も可愛いけど、店内では声のトーンを抑えてね」

周りの視線が厳しかったからな。


「ごめんなさい…」


「はい…」


2人とも反省してるっぽいし、これ以上言うまい。


「さたけんに迷惑かけちゃったから、私達2人で何か奢らないとね」

諸星さんはそう言って、藤咲さんを観る。


「そうだね。あたしは佐竹さんに嘘付いた罪滅ぼしもしたいし」


「…罪滅ぼしって何? 部長?」

滝名さんがツッコむ。


「あたし、佐竹さんを呼ぶために『パフェの大食いチャレンジに付き合って欲しい』と言ったのよ」


「マジで!? まどかが迷惑かけてゴメンね、さたけん」


「その件は水に流したから良いよ。“次からは正直に言う”って条件でね」


嘘は嫌いだが藤咲さんの嘘は許せるな。彼女は可愛らしいし、動機も『俺のことをもっと知りたいから』なんだぜ? 怒る理由が見つからないってもんだ。



 諸星さんがさっきの店で何を食べたかは知らないが「まだ小腹がすいてる」と言ってきたので、俺達は運動がてら彼女が行きたい店まで歩く事にした。


 「さたけんのような男の人が好きそうなのって…、やっぱりラーメン?」


さっきから諸星さんが考え込んでいたが、奢るメニューについてだったのか。


「ラーメンはもちろん好きだぞ」

味の好みはともかく、ラーメンが嫌いな男っているのか?


「んじゃ、私とまどかが奢るのはラーメンに決定!」


諸星さんの決定に藤咲さんは同意し、滝名さんは頷いた。


「佐竹さんはどの味が好み?」

藤咲さんが訊いてきた。


ラーメントークは盛り上がりそうだ。食事の定番ネタだからな。


「悩むところだが…、『塩』かな」


「塩? 男の人は豚骨が好きなイメージだな~」

諸星さんが指摘する。


「疲れた時は、あっさりしたのが食べたいんだよ…」

そういう時にこってりしたのを食べたい人もいるようだが、俺は違う。


「…社会人って大変なんだね」

滝名さんがつぶやく。


「ああ。大学生が羨ましいよ…」

愚痴っても意味ないが、つい言ってしまう…。


「あたしも塩が好きなんだ~。佐竹さんとは気が合いそう!」

嬉しそうに話す藤咲さん。


猫好きも被ったからな。偶然とはいえ、俺も嬉しいぞ。


「私は醤油かな~。一番安定感があるから」


諸星さんの言う通り、マズイ醤油ラーメンは聴いたことがない。豚骨はニオイがキツイのがあったりして、好みが分かれやすいが…。


「…わたしは味噌。栄養的に味噌一択」


ラーメンに入れる味噌って、そんなに多くないよな? 栄養的に大差ないと思うが、よくわからないから滝名さんにツッコめない…。



 ……この辺り、何やら香ばしい匂いがする。一体何を焼いてるんだ? …その匂いの正体は、諸星さんが足を止めた店前から漂っていた。


どうやらみたらし団子のようだ。焼いてる過程を目の前で観ることができ、多分パートのおばちゃんが懸命に作業中だ。


「さたけんとたきなんには奢ってあげる。まどかに奢ると高くつくし…」


「別に奢られるつもりないから。佐竹さん、あたしも奢るからね」


「そ…そうか」

ここは大人しく奢られよう。


俺と滝名さんは店の敷地内のベンチに腰掛け、2人を待つ。


「…2人に気に入られたみたいだね」

滝名さんは俺を観ながら微笑んだ。


「えっ?」

彼女はいきなり何を言い出すんだ?


「…だって、2人ともいつもより楽しそうにしてるから」


「俺は知り合って間もないからよくわからんが、滝名さんがそう言ってくれると嬉しいよ」


学年の差があれど、2人と一緒にいる時間は絶対俺より長いからな。


「佐竹さん・芽依ちゃん、おまたせ~」


藤咲さんと諸星さんが戻って来たぞ。ここからはおやつの時間になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大食いチャレンジで知り合った女子大生が可愛くて無防備な件 あかせ @red_blanc

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ