エピローグ 不思議で満ちる世界

 やっぱり世の中不思議な事は山ほどある。

 幽霊や動く金次郎像、赤鬼、落ち武者、トイレの花子さん、人食い階段と異世界、そして死神と、不思議な事を沢山体験してきた私が言うのだから間違いない。


 世界はもっと不思議な事で満ちあふれている。だから退屈なんて言わないで、本を読んだり外に出かけてみたりすればいいのだ。そうすれば不思議でわくわくすることなんて、きっとそこら中に転がっている。


 ……なーんて、語ってみたりして。少し前まで流されるままに図書委員をやっていた私のセリフじゃないかな? でも本当だよ。世界は不思議で満ちている。


「楓、早よ行こうや」

「はいはい杏ちゃん、今行くよー」


 放課後、私は図書室へ足を運ぶ。大切な親友が待つ図書室で、図書委員の貸出当番をするためだ。きっとそれは退屈なんかじゃなくて、新しい物語の始まりに違いない。


「やあ、遅かったね楓」

「ごめんね葵ちゃん。先生からノートを運ぶように頼まれて」


 いつも元気な杏ちゃん、今日も黒髪輝く葵ちゃん。性格は全然似ていないけれど、二人とも大切な親友だ。


 でも不思議な事はまだまだある。特に葵ちゃんはクールでミステリアス。大人な雰囲気の彼女は、まだまだ私の知らない不思議をいっぱい知っていそうだ。けれど七陣小の七不思議を解決した今、しばらくは平穏な学校生活かな? 物語は物語でも、いわゆる日常系というやつだ。


「ねえ、杏と話していたんだけど、楓はどっちがいい?」

「え、なにが?」


 葵ちゃんは二冊の古そうな本を持っている。ひとつは「我が郷土の妖怪大百科」。そしてもうひとつは「実録! 福博市ふくはくしの都市伝説ベスト10」とある。


「うーん、ベスト10の方が数は少ないし……、でも怖そうだな……」


 どうやら葵ちゃんの知的好奇心は、留まるところを知らないらしい。つまり物語はまたしても不思議系。でもホラーはほどほどにお願いします。


「よし、決めた!」


 さあ、新しい不思議の物語は、もう始まっている。

 だから楽しもう。この不思議で満ちた、不思議な世界を!

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不思議の神隠さんと七陣小の七不思議 青木のう @itoutigou

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