冷たく美しい雪の話
あの子みたいに、なりたいと思った。
優雅で気品溢れる彼女は、幼い頃の私にはとても輝いて見えた。彼女には何一つ及ばない私だけれど、それでもあんな風になれたらな、と羨望の眼差しを向けていた。
彼女は私の事なんてこれっぽっちも知らないだろうけど、私はあの美しい姿を見れるだけでこの世の何よりも得難い幸福を得ることが出来た。
いつか、彼女と2人で話してみたいな、なんて。
────そんな叶わない希望を抱いて。
彼女は、ある日突然失踪してしまった。
彼女の家には、大量の血痕と何か儀式が行われたような形跡があったらしい。
警察は誘拐、殺人事件として捜査を進めている。遺体が見つからなかったことから、誘拐という線も視野に入れているのだとか。
私は、酷く絶望した。
どうして。どうして。どうして。
あんなに完璧で非の打ち所が無い彼女がどうして。
私の中の完璧な彼女のイメージが、ガラガラと崩壊してしまった。
彼女は、完璧なんかじゃなかった。本物じゃなかった。歪で、醜悪な、偽物だったんだ。
許せない。許さない。
本物じゃないのなら、無くなってしまえばいい。価値のない塵のように、切り捨ててしまえばいい。
それが、私が貴方から学んだ事なのよ。
貴方が本物じゃないのなら、私が本物の
他人を蹴落として、見下して、擦り切れるまで酷使する。
それが、絶対的な女王というものでしょう?
滅びの美学 棺田 @dandanka
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