第5話 最終話

「私は不妊なのです。王太子妃になることなどできませんわ。ですから私を断罪してくださいまし。アルデリット様の婚約者としてふさわしくないと、切り捨てていただきたいのです」

とうとう言ってしまった。

私はアルデリット様の顔を見ることができない。


「不妊? レオ、それは医者に言われたのかい」

「私は……。私は自分で分かっております」

「どうしてそんなことを思っているのか話してほしい」

アルデリット様が、より力をいれて、私の肩を抱いてくれる。

アルデリット様の優しさが辛い。


「何か勘違いしているのだろう。レオは少し思い込みが激しい所があるからな。まだ婚姻していないから、不妊など心配する必要はないよ」

「私は無知ではありませんわ。侍女のマリナが先月『おめでた婚』で退職しましたもの。結婚していなくても子どもができることぐらい知っておりますわ」

先月マリナがこっそり私だけに退職理由を教えてくれた。

それまで結婚しないと子どもが出来ないと思っていた私は衝撃を受けてしまいましたわ。そして自分が不妊なのだと気づいてしまったのです。


「わ、私はアルデリット様と1年以上閨を共にしておりますのに、子どもに恵まれておりませんもの、不妊なのです」

マリナなど旦那様と出会って3カ月で妊娠したと言っていたのに。

1年以上経つ私が妊娠することがないのだから、やはり不妊なのですわ。


「うーわー、そうきたか。いや私が悪い。これは私が悪いな」

アルデリット様がご自分の両手で顔を覆ってしまわれた。


学園に入学して少し経った頃から、アルデリット様から生徒会室に呼んでいただけるようになって、私は嬉しかったのです。

王宮には毎日のように参内さんだいしておりましたけど、王太子妃教育のためでしたから、アルデリット様とお会いしても、お茶を一緒にすることすら、ままなりませんでしたから。

生徒会長を務めているアルデリット様が人払いをされているらしく、生徒会室では二人きりで会うことができたのです。


唇へのキスも、生まれたままの姿を見せることも、アルデリット様にわれれば、嫌とは言えませんでした。

だって私はアルデリット様を愛しておりますから。

幼い頃から受けさせられた王太子妃教育も、辛くて何度も泣いたことがありましたけど、辞めようと思ったことはありませんでした。

アルデリット様のお側にいることができるのならと、頑張れたのです。


「……レオ。私は王族だ」

「存じ上げておりますわ」

「王族と婚姻する際花嫁は、侍医による診察を受ける。様々な診察内容の中に……。その、純潔も含まれているんだ」

「純潔?」

アルデリット様の仰っていることが、一瞬理解できず、オウム返しのように、その言葉を繰り返してしまいましたわ。そして理解した途端、目の前が真っ暗になる。


「ま、まあ。では私はアルデリット様と婚姻することはできないということなのですね」

それまでなんとか堪えていた涙が溢れ出す。

なんて私は馬鹿だったのだろう。王家が花嫁の純潔を求めるのは当たり前のことだと知っていたのに。

アルデリット様に求められて有頂天になってしまい、頭からそのことが抜け落ちていたなんて。


「レオ、落ち着いてくれ。レオはちゃんと純潔だ」

「いいえ、いいえ、気休めは必要ありませんわ」

「いや、だから、何も心配することは無いんだ」

「放してくださいませっ。私はアルデリット様にはふさわしくないのですわっ」

「レオ、話を聞けっ」

「きゃあっ」

立ち上がって部屋から出て行こうとする私を、アルデリット様が力づくでソファーに押しとどめる。


「あぁっ」

アルデリット様の唇が私の唇を塞ぐ。

今まで何度となくしてきた深い、深い口づけ。

力が抜けてクタリとアルデリット様にもたれかかってしまう。


「レオ。悩ませてしまってすまない。お前に何も教えていなかった私の落ち度だ。だがレオには閨教育を受けさせたくはなかった。許せ」

アルデリット様が私へと頭を下げる。


「い、いけませんわっ」

王族が臣民に頭を下げるなどあってはならないこと。すぐにお止しなければ。でも私の言葉はそれではなく、殊勝に謝っているはずのアルデリット様の手が、私のスカートの中へと入ってきたからですわっ。

何をやっているのですかっ!


「アルデリット様、な、何をされるのですか」

「勘違いをさせてしまったから、レオが純潔なことを私が教えてあげよう」

「あ、何を、やぁっ」

アルデリット様の手は、私の太ももを撫で、そのままショーツの中へと入り込んでくる。


「だ、駄目ですわっ」

一生懸命アルデリット様の手を止めようとするのに、いたずらをしていない方の手で、簡単に私の両手を押さえ付けられてしまった。

ドレスを脱がされたら、自分で着ることなんてできませんのに。

それにアルデリット様からいただいたドレスを、汚してしまいますわ。なんとか身を捩って逃れようとするのに、いつのまにかショーツが無くなっているなんて。私のショーツは何処にいってしまいましたの。


ビクリ。

アルデリット様の手がショーツの無くなった私の腰を撫でる。そのまま足の付け根へと滑り降りてくると、太ももの内側へと移動してくる。

1本の指が足と足の間に触れる。


「いけませんわ。そんな所を触るなんて、そこは不浄の場所です」

「レオ。ここに私自身を入れて子種を注ぐ。それが本当の交わりだ」

「え、そんな……。ひうっ」

ゆっくりと撫でていたアルデリット様の指は、押し分けるようにして中へと入って来る。


「そ、そんな、そんな所に、あんなに大きなアルデリット様自身が入るわけはありませんわっ」

「ありがとうでいいのかな? ここの奥に子種を注ぐと子どもが出来る。レオはまだ1度も私とは本当の交わりをしてはいない。純潔のままだ」

指は浅い部分を行き来して、スルリと出て行く。

その感触に身体が小さく跳ねる。

おトイレの時ぐらいにしか触れることの無い場所なのに、なんだか熱い。


「レオは私から離れるなんて、そんなことを許されると思ったの? 私がレオを手放すとでも?」

アルデリット様の手や唇が、あちこち動き回るから考えることが上手くできない。

それでも今まで押さえ付けていた心が溢れ出てくる。


「わ、私はアルデリット様にふさわしくないと思っていたのです。お側にいることは出来ないと。それでも嫌です。アルデリット様から離れるなんて嫌です。私はアルデリット様と離れなくてもいいのですか?」

捕まれていた手をなんとか振りほどいてアルデリット様にしがみ付く。


「勿論さ。レオ、愛しているよ」

「私も。私もアルデリット様を愛しています」

アルデリット様は私を強く抱きしめ、キスをしてくれる。

キスは徐々に深いもへとなっていき、のように閉じさせられた私の太ももに、アルデリット様は自身を突き立てられたのでした。



その後、侍女に替えのドレスを持ってきてもらうことになってしまい、何があったのかが、お兄様にバレてしまいましたわ。

アルデリット様と私は、お兄様から、それはそれはねちっこい嫌味を延々と聞かされましたわ。


アルデリット様はウンザリとしたお顔をされていましたけど、私は笑顔を扇で隠していました。

だってアルデリット様の隣にいることができるのですから。


悪役令嬢の私は幸せですわ。







*** *** ***

最後まで見ていただいて、ありがとうございます。

次回のテンプレシリーズは、ちょっとお休みです。


ムーンライトノベル様、アルファポリス様に、現在『魔王様は俺のクラスメートでした』を投稿しています。

BLですが、よければ見てやってください。


宜しくお願いします。

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なりきり悪役令嬢 ~さあ断罪をすればよろしくってよ~ 棚から現ナマ @genn-nama

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