大人になったふたり

「すえわたり」


何度聞いても可愛い呼び声。

それも久し振りとなると倍愛しい。

振り返れば息を切らした赤司が居た。

鼻の頭は真っ赤っか。

金髪は染め直すの時間の余裕がなかったのだろう、根元から黒が大分広がっていた。


「これ…」


小さな紙袋を差し出される。

最近人気の眼鏡屋のロゴが入っていた。

毎年、俺の誕生日であるクリスマスに赤司は眼鏡をくれる。

これで何個めだっけ。

高校からだから、10個目か。

ありがとう、受け取ればもじもじしてから抱きつかれた。


かっわいい。

いつまでたっても赤司は可愛い。

できることなら家の中に閉じ込めておきたい。飼いたい。

そんなことしたら器の小さい男って言われちゃうから、やりません。


「赤司…」


「ん…」


腕の中の愛らしい生き物に俺はおねだりする。


「赤司もちょーだい。大分ご無沙汰」


「…仕事は…?」


「今、平気…だから、ね」


「…ん」


頷かれるや否や俺は赤司を車に押し込み押し倒した。

仕事の用の車ではいやああと抵抗されたものの、久し振りだったから理性はお互いすぎにぶっ飛んだ。


ってなもんで、朝日が昇るまでヤりまくってしまいました。

気絶して寝入った赤司を車内に残しコーヒーで一服していると、


「…その後俺が乗ることは考えてくれたんだよな?」


相棒の野崎が帰ってきた。


「一回赤司送ってくるけど?」


「ひ、酷い…」


「お前だって大抵酷いじゃないか…なんの意味も無い張り込みさせられたのに、一人恋人のとこに行くとか…」


「ちがっ!昨日は上司と部下として会いました!」


「…楽しんだんだろ?」


「…お前ほどじゃねぇっつーのっ」


「楽しんだのかよ…あーなんでこんなのと組まされたんだろ…俺優秀なのに…」


「悪かったな…悪かったよっ」


野崎は唇を突き出しいじけてしまった。


「ああ、本当に迷惑な頑丈だけとりえ体力馬鹿男だ」


「…肉食眼鏡男子めっ」


そんな当然なことを言い合ってもしょうが無いのに。

野崎はしゃがみ込んで、とりあえず送ってきてよ、と惚けた。

なんだかんだで優しい男だ。


「かわいそーだ、こんなのの恋人は…」


その嫌みは褒め言葉として取っておこう。


「昔から変わってないよー、俺は」


コーヒーを飲み終え車内の赤司を見遣る。

変わるつもりもないからねー、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

すえわたりとあかつかさ 狐照 @foxteria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ