第3話

『死んだはずなのに…』


土岐のでかい腕の中で呟く。


「またそれか…良い経験をしたな、死に損ない」


土岐はさらっと、そんなことをいう。

本心ではないことぐらい、もう知れている。


土岐はあの日、俺の魂を捕らえ勝手に術を施しやがった。

俺の返事なんざおかまいなしに、だ。


施された術は、反魂ではなく召還生成。

俺は、土岐の召還獣にされたのだ。

死者をそれに変えるのはよくある話しだが、普通魂を選んでなんてできない。

こういう規格外なことをやってのけるのが、こいつなんだけど…。


『土岐…』


「なんだ、ひっつき虫」


『名前呼べよ』


「…成瀬虫」


『…土岐はよっぽど俺が好きなんだなぁー…』


嫌みたらたらで言うと、土岐は炎のような色で俺を見つめる。


「…ああ」


そうして素直に白状しやがる。


『仕方ねぇなぁー…』


呆れて腕にすりよると、息が詰まるくらい抱きしめられる。

死ななくて、ほんと良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

しんだ 狐照 @foxteria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ