癒着して結合して

舌の付け根が痺れている。


はは


聞き覚えのある声色が、聞いたことが無いほど上機嫌に笑っている。


ふはは


何がそんなに愉しいのか。


あはははは


いや、そんなに愉しそうだと、こちらも愉しくなるから。


うはははは


笑ってしまう。

唇が割れているのか、痛い。


「あ、気付いたー?」


「…溶けて…ねーじゃん…」


「いやいや、溶けましたともふたりとも、どろんどろんにべちょんべちょんに」


「なに…いって……あ…?」


「きづいたー?きづくよなー!やばいよなー!あははははは」


笑っていた理由が分かった男は、両手をしげしげ眺めた。


右手が医者もどきに似ていた、否、医者もどきの物だ。


指も足も身体の至部位が、自分のと医者もどきのと、混ざっている。


そして、笑うその顔半分が、自分の物であるという。


じゃあ、

こっちの、

この、

右側の、

顔は、

違う、


「混ざった…のか?」


「そーみたいだね」


「どこまで…?」


「んんんー…これは脳とか含め全部かな」


半分自分が、笑っている。


半分医者もどきが、愉しそうに。


男は息をひとつ吐き、


「まあ、いいか」


「そうそう、いいじゃんいいじゃん」


半分自分で医者もどきが抱き絞め囁く。


「ぐちゃぐちゃに溶けて混ざり合いたいって望み叶ってよかったね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嗚呼怪我人生 狐照 @foxteria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ