飛び立て銀河こうもり傘で

狐照

飛び立て銀河こうもり傘で

宇宙に向かって飛び立つ自由な列車の窓に、彼はあの人を見つけた。

町中ですれ違う度に気になっていたあの人は、あの列車の乗客だったのだ。

球体の半分しかないこの世界では、宇宙に向かって飛び立つ列車が一番の娯楽になっていた。

早々切符は手に入らない。

誰しもが憧れるプレミアムチケット。

そんな列車にあの人が乗っていた。

彼は思わず追いかけた。

汽笛は鳴り、空へ、宇宙へ。

あの人は、窓から身を乗り出し、おいでよ、と。

彼は一番高い塔の屋上からこうもり傘を開いて飛び降りた。

ピンクの雲が下層でもやもや。

必死になって列車に手を伸ばした。


「無茶をするタイプだったんだね」


全身汗だく息も絶え絶え、手を伸ばしなんとか車内に引き入れてもらった彼に痛烈な一言。


「……無茶苦茶するタイプはお嫌いですか……」


からからの喉を唾で潤し答えると、「ううん、大好きだよ」綺麗な、この世のものとは思えない笑顔を浮かべてくれた。


列車は汽笛を鳴らして大気圏。

窓の外にはあっという間に、銀河星屑、スターオーシャン。


「みてごらん、宇宙だよ……君と一緒なら、あの星でも良かったけどね」

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