爆発爪

「この世で一番強い武器ってなんだと思う」

「え〜武器ぃ? そんなのアレでしょやっぱり銃とかじゃないの」

「違う」

「え〜じゃあ大砲とかそういうこと? あロケットランチャーか! ロケランロケラン!」

「違うね」

「んじゃ何よ」

爆発爪ばくはつづめ

「爆発爪!!!?!?!???!?!?!??!??!??!?!!?!?!??」

「そう」

「爪が爆発するってこと?」

「うん」

「バルログみたいな爪がついててそれをブシューて刺したらドーンていくってこと?」

「そう」

「自分も死んじゃうでしょ」

「大丈夫。爆発爪使いは気持ちが強いから」

「気持ちの問題じゃねんだよ。だったら気持ちの強いロケラン使いが一番強いよ。それに爆発するんだったら一回使ったら終わりじゃん」

「いや。20回」

「ん?」

「20回使えるから」

「指一本一本個別で使うってこと!?」

「そう」

「人差し指失ったら次は中指ですってことね! そりゃ確かに気持ちが強くないと使えないわ!」

 ないわ…!

  いわ…!

   わ…!

    …!


 ◆


 最後の一本をどう使うか考えていた。

 任務は完全に失敗したと言っていい。二人だけで敵の本拠地に潜入して中から叩く。うまく行っていれば、の話だった。

 地中に複雑に張り巡らされた穴ぐらの一室で、俺は息を潜めている。部屋の外は敵兵に包囲されていた。今ごろ俺をどう血祭りにあげるかの算段でもしているだろうか。

 ここに逃げ込むまでに19本の爪を消費した。その逃げ込んだ先が敵陣のど真ん中、袋の鼠状態だとは。小野田が知ったらどんな顔をするだろうな。

 小野田とはもう何時間も会っていない。これまで何の連絡もよこさない時点で、生きているとは考えにくかった。


 手の小指の爪だけが残っていた。

 選択肢1。敵兵の集まるところに投げる。

 却下。この部屋からは一歩も移動できない。

 選択肢2。壁を爆破して逃走ルートとする。

 却下。壁の向こうは硬い岩盤がずっと続いている。

 選択肢3……。


 ドアの向こうで敵兵が何かを話している。動きが慌ただしくなってきた。

 どうやらタイムリミットが近いらしい。

 やるしかない。

 敵兵をこの部屋に集め、十分に集まったところで、最後の爆発爪を使。 

 俺にできるだろうか……。

 小野田の飄々とした顔がよぎる。

 できるでしょ。お前なら。

 そうだよな。

 自分に言い聞かせる。

 大丈夫。爆発爪使いは気持ちが強いから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ランダムタイトルショートストーリーズ 鯵坂もっちょ @motcho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説