第四節 七夕の戀歌

第二十八話

 今日は六家りっかをはじめとする貴族だけではなくて、一般の人々も紫微宮しびのみやに入れるお祭りだ。至るところに笹が立てられ、人々は思い思いに短冊を飾っていた。

 七夕しちせきの祭りは日が暮れ始めるころから始まる。

 次第に空は群青色に染まっていき、星ぼしが現れはじめた。静かに音楽が奏でられ始める。


 天の川が見える。

 降るような星ぼし。

 笹の葉の音。短冊の揺れる音。人々の願いが詰まった、その音。


 あたしは清白王きよあきおうとともに和歌を詠唱するために、大祭殿へと向かう。

宮子みやこ、わたしがいるから」

「うん」

 震える手を、清白王きよあきおうが握り締めてくれて、緊張が和らぐ。


 舞台に出て、用意された大き目の短冊に和歌を書きつける。

 清白王きよあきおうが書いて詠唱し、あたしが書いて詠唱する。

 和歌は旋律となって、天に届くのだ。

 大丈夫、出来る。


「宮子、始めよう」

 清白王きよあきおうが紙を高く掲げると、騒きがぴたりとおさまった。


 

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