第4話 俺っ子JK、もう限界

「……それで、なんだけどよ」


「お前と……その……つ、付き合うことになったこのタイミングで、すげー言いにくいんだけど……」


「……」//恥ずかしがる


「……トイレに行きてえ」//少し小声で


「……」//恥ずかしがる


「……いやいやいや、待て待て待て。『よし、じゃあトイレいくか』じゃねえんだよ!」


「なに普通に連れション行くみたいな空気出してんだよ、ぶっ飛ばすぞ」


「……く、び、を、か、し、げ、てんじゃねえ!」


//SE 殴られる音


「お、お前とくっついてるこの状況で、普通にトイレ行けるわけないだろうが!」


「そ、そんなことしたらお前に全部……ぜんぶ見られて……」


「っ! ……この変態! スケベ野郎!」


「あ、叫んだら余計に我慢が……」//声を震わせながら


//SE 股を閉じてズボンが擦れる音


「ん……んんふぅ……、ヤバい。もう我慢でき……ない……」


//SE もじもじしながら、体をくねらせる衣擦れの音


「ん、んんん~……、うう……、出そう……まじで出そう……ううふぅ……」


//SE 我慢できずに足をバタバタさせる音


「ど、どうしよう……もう、無理だよぅ……」//半泣きになりながら


「……え? 目隠し……を、する? 絶対に見ないように……する? それならくっついたまま二人一緒に、トイレに行っても……大丈夫?」


「ば、ばか……、見ないようにしても、……ほら、音、とか……聞こえちゃう……」


「そ、そんなのやだ……、恥ずか……しくて、死ぬ……」


「けど、このまま……だと、お前の前で、出ちゃう……」


//SE もじもじしながら、体をくねらせる衣擦れの音


「だ、だめ……だ。も、漏れちゃうよぅ……」


「……え? 作戦がある?」


「な、なんだよ作戦って! 早く教えろ、もう……限界……!」


「この作戦は、あんまり教えたくない? なんで!? もったいぶるんじゃねえよ! こっちは……今にも……漏れ……そうだって言うのに……」

//徐々に苦しそうに


「お、教えてよぅ……教えてくれたら……な、なんでも……お前の言うことなんでもきく……からぁ」


「……え? 俺に超能力でN極の磁力を与える? え、それだ……け?」


「……っ! そういうことか!」


//SE ぽんっと何かの力を付与しているような音


「うおおおおおおおおおおおおお!?」

//勢いよく声が遠ざかりながら

//SE お互いが弾かれて離れる音


//以降しばらく数メートル離れたところから会話


「やった! やったぞ! 離れた!」


「俺とお前、両方にN極の磁力を与えることで反発させるなんて、やっぱお前天才だな。頼りにな……」


「……え? いいから早くトイレ行けって?」


「……っ~! そ、そうだった! も、漏れちゃうー!」//更に遠ざかりつつ


//SE 離れたところから、バタバタと走り去って行く音



◯◆◯◆



//数メートル離れたところから会話


「……一時はどうなることかと思ったけど、くっ付き磁石問題が何とかなって良かったな」


「俺にN極が付与されてるんだから、お前に同じN極を付与すれば反発して普通に離れられるんだもんな」


「まじ盲点だった。正直、トイレとか風呂とかどうしようと思ってたからさ」


「あ、先に風呂借りてサンキューな。ずっとくっついて汗かいたからさっぱりしたー」


「……ん? なに不満そうな顔してんだ?」


「良かったじゃねえか。お前もくっついたままで大変だっただろ?」


「え? 磁力が反発したままだとお互い近づけない?」


「そ、そりゃそうだけど、ずっとあのままいるわけにも……え、なに? 離れてると寂しい……?」


「……な、ななななな何恥ずかしいこと言ってんだよ!」


「……そ、そりゃ……俺だって寂しくないことは……」


「いやいや、駄目だ駄目だ。そ、そもそも付き合ったばかりなのにくっ付き過ぎだったし……」


「……そ、それにお前とずっとくっ付いたままとか、心臓が持たないっつーの」//小声で


「い、いや、何でもない。何でもない」


「とにかく、もう寝る時間だしこのまま寝るぞ」


「お前は自分の部屋で寝ろよ。私はどこかの部屋に布団ひいて寝かせてもらうから」


「なんだよ、仕方ないだろ。磁力が反発して、同じ部屋に入れないんだから」


「……え? さっき何でも言うこと聞くって言ったって?」


「そ、それは……、言った……けど……」


「あれは、緊急事態だからっつーか……、必死だったっつーか……」


「……」


「……あー! もう! 分かったよ。俺に二言はねえ!」


「お前の言うこと、なんでも聞いてやる」


「……お、おい。なんだよそのニヤケ面は」


「ま、まさか……。だ、だめだぞ! 何でもって言ってもあんまりエッチなこととかは……その! ほら、俺たちまだ付き合ったばっかりだ……し……」


「……え? もう一回さっきまでと同じようにくっ付きたい?」


「し、しししかもそのまま一緒に寝たい!?」


「そ、そそそそそんなことできるわけないだろっ」


「一緒に寝るってことはお前……だって……」


「……っ! ず、ずりぃぞ! そんながっかりした顔したって……俺は……おれは……」


「……~~!」// 葛藤している


「……い、一緒に寝るだけだぞ?」


「ぜ、ぜったいエッチなことはしちゃダメだからな?」


「……うー……。お前ほんとうに分かってんだろうな……」


「……せ、急かすんじゃねえ。俺にだって心の準備があんだよ!」


「ったく……。じゃあ、また俺にS極の磁力を与えるぞ」


「たぶんまた凄い勢いでくっつくから、気をつけろよな」


「……んん~はっ!」


//SE ぽんっと何かの力を付与しているような音


「……うわっ! わわわわわわわわわっ!」

//勢いよく近づきながら

//SE 勢いよく近づいている音

//SE 勢いよく二人がぶつかる音


「う~……、いてててて。分かってても凄い勢いだな、これ……」


「お前も大丈夫か……って、なんだよその顔……」


「……俺とまたくっつけて嬉しいって?」


「……~っ!」//照れる


「ば、ばかっ。……恥ずかしいこと言ってないで、とっとと寝るぞ」

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