第2話 俺っ子JK、ちょろい
「よし、一回落ち着いて状況を整理するぞ。俺の超能力で……え?」
「……落ち着いて状況を整理する前に、そもそも俺の胸の音が全然落ち着いてない……って? くっついてる胸から鼓動が伝わってくる?」
「うるせーよ! 分かってて落ち着いた振りしてんだよ!」
「お前もそこは気付かない振りしとけよ! ほんっとにデリカシーがねえな」
「……お前と密着した状態で落ち着けるわけないだろ。バカ……」//小声で
「もういい、お前のノリに付き合ってたら日が暮れちまう。話を進めるぞ。」
「今、俺とお前は、超能力で密着して離れられない」
「俺にN極、お前にS極の磁力を与えたから、磁石みたいにお互いが引き合ってるってわけだ。ここまでは分かるな?」
「ただ問題は、この磁力を発生させた超能力が解除できなくて、俺とお前が離れられないことだ」
「これは推測だが、超能力が解除できない以上、おそらく普通の磁石みたいに、磁力が弱まるのを待つしかない……と思う」
「ほら、古くなった磁石ってあんまりくっ付かなくなるだろ? そんな感じだ」
「だ、だから、それまではこんな風にくっ付いて離れられないまま……になると思う。いつまでかかるは、正直分からない」
「……うん。俺が考え無しでこんな超能力使ったのが悪い。……ごめん」
「嫌……だよな? 俺なんかとくっ付いて離れられないなんて」
「せめて俺みたいな男女じゃなくて、もっと可愛い他の女子だったら良かったのにな……。その方がお前も嬉しかっただろ?」
「いや、いいって。そんな気を使わなくて……」
「……え? くっ付いたのが俺で良かった? 他の女子じゃ嫌だって? おい。そ、それってどういう意味……」
「ま、まさかお前も俺のことが好…………え? 幼なじみの俺となら、気を使わなくていいから楽だって?」
「…………だ、だよなー!? お、俺ももちろんそう思ってた! ほんとくっ付いた男子がお前だから気を使わなくて良くて助かるわー! ほんと助かる! え? さっき何か言おうとしてたかって? 別に何でもねえよ。うるせえ黙れ。ぶっ飛ばすぞ」//台詞後半になるにつれ、殺意を増しながら
//SE 殴られる音
「……とりあえず、当面の問題は下校だな。いつまでも校舎裏にいるわけにもいかねえし、家までの帰り道で誰かにこの姿を見られたら恥ずかしいなんてもんじゃないぞ」
「ん? 良い作戦がある? さすがだな。お前のそういう頭の回転が早いところは正直頼りにしてる」
「で、どんな作戦だ?」
「……うん、まず俺がお前の首に両手を回す、と」
//SE 両手を首に回される音
「……これでいいか?」
「次は……、そのままお前に飛びついて、両足をお前の腰に回す」
//SE 勢いよく両足を腰に回される音
「……うんうん、それで?」
「次はお前が両手で俺のことを支えるように抱きしめる……、と」
//SE 両手を腰に回す音
「……えっ、ちょっと待て! この体制は不味くないか!?」
//SE 慌てて服が擦れ合う音
「ちょ、ちょ……おま! ど、どこ触って……これは完全にだ、抱き合って……え、最後に仕上げがある? まだ何かあるのか!? これ以上何かあったら俺……俺……」
「……」
「……え? 最後に俺がおしゃぶりを咥えて『バブバブー、パパ大好きバブー』って言いながら歩けば、子守中の父親に見えるから大丈夫……って、そんなわけあるかあ!」
//SE 殴られる音
「……お前はそうやっていつもいつもいつも!」
「う~……、もういい! 家までダッシュするぞ! 足引っ張るんじゃねえぞ、このクソ馬鹿鈍感野郎!」
◯◆◯◆
「はぁ……はぁ……はぁ……、なんとか家に着いた」
「さすがだな。俺のダッシュに遅れず付いて来るなんて、やるじゃねえか」
「あれだけの速度で走ってれば、誰も俺達がくっ付いてることなんて気付かなかったんじゃねえか?」
「作戦成功だなっ。イェーイ!」
//SE ハイタッチの音
「ん? どうしたんだよ、首かしげて」
「……どうして、俺の家じゃなくてお前の家に帰って来たのかって?」
「いや……、それは、その。ウチの親にお前とこんな風にくっ付いてること、どう説明していいか分かんなくてさ。悪ぃんだけど、今日はお前の家に泊めてくれねえかな?」
「ウチの親に俺達二人がくっ付いてるところなんて見られたら、「ついに付き合ったのね! 今夜はお赤飯ー!」とか騒いで、あれこれ茶々いれてくるに決まってるんだ……それだけは防がねえと」//小声で
「……え? ばっ! べ、別に深い意味は無いぞ! ほら、昔はよくお互いの家でお泊まりし合ってたし、慣れたもんだろ!?」
「大丈夫だって! ウチの親もお前ん家に泊まるって言えば何も言わねーよ」
「ほらほら、早く入ろうぜ! 色々あって、俺ももう疲れたし」
//SE 鍵を開けて、ドアを開ける音
「……お邪魔しまーす!」
「いやあ、お前の家もなんだか久しぶりだな! オジさんとオバさんは? 今日泊めて貰うんだからちゃんと挨拶しとかないと……え? 二人ともいないの?」
「……昨日から旅行に行ってて、家にはしばらくお前だけ?」
「え、まじで? ちょ、ちょっと待て! って事は今日は二人きりってこと?」
「お、お前は何でそんな平然としてんだよ! 一応俺だって女の子なんだぞ。男と二人きりで一つ屋根の下なんて……」
「……え? 誰にもこのくっ付いた状況を説明しなくて良いから楽って……確かにそうだけど。そうだけど……。そういう問題じゃねー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます