第32話 ダンジョンコア
「開かない扉などはありませんか?」
「綺麗な宝石が埋め込んである扉が、開かなかったと思います」
その場所に案内してもらったのですが、扉の宝飾がとても綺麗で圧倒されてしまいます。その中に二つ平凡な宝石がありました。
平凡といっても水晶のような透明感のある綺麗な宝石ですが、色々な色の輝く宝石に比べると平凡だと思ってしまいます。
ですが、なぜか私はこの宝石に惹かれるのですよね。二つの宝石を触ってみましょう。
『マスターの魔力を登録しました。ダンジョンコア№0と申します。名前を付けてください』
『マスターの魔力を登録しましたぁ。ダンジョンコア№1と申しますぅ。名前を付けてくれますかぁ』
ホーラがダンジョンを魔物だと思っていると言っていましたね。魔物ということは命があるということ。つまり、喋るダンジョンもあるということですね!
「ダンジョンコア№0と名乗った貴方はメーデン。ダンジョンコア№1と名乗った貴方はエナです」
『マスター、これからよろしくお願いします。ダンジョンについてはメーデンにお任せください』
『マスター、これからよろしくお願いしますぅ。魔物についてはエナにお任せしてほしいですぅ』
「メーデン、エナ。よろしくお願いしますね。一つ聞きたいのですが、ダンジョンコアはどれだけいるのでしょうか?」
メーデンとエナのように喋るコアだと思いますから、人だと思って接しましょう。そもそも、私の周りにいるのは人じゃないですからね。
『わからないよぉ。メーデンが主人核だっていうのはわかっているけどねぇ。メーデンの核が割れて個々に散ったのがエナたちだからぁ』
「だから最下層にコアがなかったのですか。もしかして、図書館自体もダンジョンなのですか」
『はい。そうですよ』
メーデンが返事をすると、ホーラが驚いた表情になります。いつもと同じように、表情はほとんど変わっていないのですけれど。
私が考えた可能性というのは、図書館そのものがダンジョンだということでした。最下層にないのならば、最上階にあるのではと思ったのです。
『メーデンの居場所を探し当てるなんて、マスターはすごいですね』
「ありがとうございます。コアが喋るとは思いませんでしたけれどね」
『メーデンは人工的に作られたコアですから、喋ることができるのですよ。このダンジョンも人工的に作られましたからね』
メーデンの言葉からすると、魔素溜まりからコアが生まれて、ダンジョンが生まれるようです。
もしかしたら、魔素を濃く錬ればコアが作れるのではないでしょうか? 私の魔力は魔素に近いのでしたよね?
試してみましょう。魔力を錬っていくと、透明な両手に乗るほどの丸い水晶のような宝石ができあがりました。
「できてしまいましたね」
『すぐに再現してしまいましたね。マスターは天才です』
『メーデンの言う通りですぅ。マスターはエナたちを作った研究者より天才ですぅ』
〈古代錬金術を取得しました。レシピにコアが追加されました。コアに魔素を与え続けると、ダンジョンが生まれます。純度の高い魔力を与えても良いです〉
古代錬金術ということは、今の時代にも伝わる錬金術があるのでしょう。
エナの言うことが本当だとしたら、今の錬金術の上位互換が古代錬金術なのかもしれません。
「コアに魔素や純度の高い魔力を与え続けると、ダンジョンが生まれるようです」
「ダンジョンを生み出すのは、やめたほうが良いでしょう。コアを作ってしまったのですよね。コアを死なすのはもったいないですし、どうしましょうか」
『魔力を注ぐときに、作り出したいダンジョンを想像すると良いですよ。繊細なところまで想像が行き届くと、よりダンジョンが完成しやすくなります』
そうなのですね。ふと思ったのですが、ダンジョンを想像するという固定概念にとらわれていませんか?
ダンジョンを想像しなければ、ダンジョンじゃないものができあがると思うのですが……。
「ダンジョン以外を想像すれば良いのでは?」
『そうですね。ダンジョンを想像しなければ、良いのかもしれません』
『マスター、やっぱり天才ですぅ』
「そうですね。ダンジョン以外でしたら、なにが想像できますか」
ダンジョン以外のものですよね。思い付いたのですが、繊細なところまで想像するのが難しいです。
頑張るしかありませんね。その前にもう一つコアを作って……作れました。魔力を注ぎましょう。
「できました!」
「これはなんでしょうか?」
「メーデンとエナの器です。ディーネのように水で作れないですから、コアで作ろうと思ったのです」
『入ってみても良いですか?』
「もちろんです」
器をメーデンの核の近くに持っていくと、光を放ってメーデンの核が吸い込まれていきました。
白銀の髪と紫色の瞳を持つ少女になりました。頭には耳へと丸まった角があって、その角は水晶のように透明です。
「よろしくお願いします、マスター」
メーデンの器への移動が完了したので、次はエナに器へ移動してもらいましょう。メーデンと同じく、光を放って核が器へと吸い込まれていきます。
「よろしくお願いしますぅ、マスター」
エナは白銀の髪と黄色の瞳を持つ少女になりました。頭には耳の上から頭に向かって丸まった角があります。
その角はメーデンと同じで、水晶のように透明です。同じ核から生まれたからでしょうか? 髪と角は色が同じですね。
「二人にはダンジョンの管理を任せたいのですが、良いでしょうか?」
「もちろんです、マスター」
「マスター、魔物は私が抑えるからねぇ」
「ありがたいです。むやみな殺生は避けたいですからね。ダンジョンの管理者がほしいと思っていました」
「良かったです。では、お願いしますね?」
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