第33話 ディーネの魔法授業

 みんなで一緒に一階まで下りて、そこからメーデンとエナにはダンジョンに行ってもらいました。


 ダンジョンに行くことがあれば、メーデンとエナに会うことになるでしょう。もう少し体力がついてきたら、ダンジョンに行くことにします。


「ノウィル様。緊急事態の場合のために、転移を覚えるのはどうでしょう?」


「転移ですか?」


「はい。転移魔方陣を簡略化した転移術というものがあったはずです。妖精術の本をリベル様から貸してもらっていましたよね。その本に書いてあると思います」


 そうなのですか。その転移術というものは妖精術ということですね。ディーネなら転移術を使えるのでしょう。本を読んでから、ディーネにも聞いてみましょう。


「やっと部屋に着きましたね。では、読みましょう」


 妖精術とは妖精が開発した術のことで、魔術や精霊術と全く異なる術なのですか。ということは、ディーネは転移術を使えないということでしょうか?


 ディーネが使えるのだとしたら、精霊術として転移できる術があるということなのでしょう。


 転移術は自分と繋がっている妖精のところに、行くときにしか使えないのですね。


「ノウィーお姉ちゃん、大丈夫?」


「ディーネ、いたのですね。ディーネは転移を使えますか?」


「使えるよ。ノウィーお姉ちゃんも千里眼と魔眼を付与すれば、使えるようになるよ?」


「付与は便利なのですね」


「便利だけど、魔力がたくさんいるかなぁ」


 そういうことでしたか。ディーネが付与を気軽にできるということは、魔力がたくさんあるのですね。


 私も付与してみたいです。それよりも、まずは千里眼と魔眼を付与してもらいましょう。


「千里眼と魔眼を付与してもらえますか?」


「わかった。こっち向いててね。できたよ!」


 相変わらず付与するのにかかる時間が早いです。ディーネは子供に見えたとしても、強い力を持つことは間違いないのですよね。


「千里眼は見たいところを想像して、その場所が見えるようになったら成功だよ!」


「アモルがカエルムに扱き使われていますね。カエルムは指示を出すだけですか。休暇ですから、休んでいるのは良いことですね」


「そうだね! 千里眼で見た場所の魔素の流れを感じるの。魔力感知はあっても、魔素感知は魔眼に頼らなきゃ駄目なんだ! 魔素の流れを感じたら、あとは転移するだけなんだけど……その転移する感覚を掴むのが大変なんだ! ノウィーお姉ちゃんなら簡単にできそう」


「やってみます」


 魔眼は千里眼と同じように使えば良いのですよね。空気中に白っぽい色のなにかが流れています。


 これが魔素なのですね。わかりました。あとは転移するだけですね。転移は魔素の流れに沿って空気に溶けるような感覚でしょうか?


 一瞬の浮遊感を感じて、アモルとカエルムの場所へ転移していました。


「主様なのです? さっきは助けてくれてありがとうなのです!」


「私はなにもしていません。私ではなくみんなに感謝をしてくださいね」


「わかったのです! みんなにお礼を言うのです」


 級に転移してきたので、カエルムとアモルが驚いていました。私もこんなに早く転移できるとは思っていなかったので、驚いていますよ。


「ちょっと、話してないで助けてよ」


「助ける義理はありませんので」


「僕の契約者でしょ! 助けてよ」


「失礼します。またあとで会いましょう」


「助けずに帰るの?」


 アモルの言葉は無視します。手を引っ張られて引き止められましたが、それも無視してディーネの元へ帰ってきました。


 アモルは貴族だったのでしょうか? 仕事をしたことがないのは、貴族ぐらいしかいませんよね。


「おかえり、ノウィーお姉ちゃん。感覚を掴むの早かったね!」


「そうですね。魔素の流れに沿って空気に溶けるような感覚と考えていたら、一瞬の浮遊感を感じて転移していました。驚きましたよ」


「空気中に溶けるって考えたのが、良かったんだと思うよ! 魔素の流れのこともちゃんと考えてるもん。ノウィーお姉ちゃんは、精霊術を覚える素質があるね」


「ありがとうございます」


 ディーネに褒められると嬉しいですね。満面の笑みで嬉しそうに褒めてくれるからでしょうか?


 私もディーネを嬉しくしたいです。とりあえず、撫でてあげましょう。


「ノウィーお姉ちゃんに撫でられるの好き!」


「そうですか? いっぱい撫でてあげますからね」


「本当に? 嬉しいなぁ」


 ディーネが嬉しそうにすると、私も嬉しく思います。ディーネが私の膝に乗ってきました。


 浮いて乗っていません? もしかして、浮くことができる術があるのでしょうか?


「どうやって浮いているのですか?」


「これは魔法だよ? 浮遊魔法っていうの。簡単に覚えられるよ!」


 ディーネに浮遊魔法を教えてもらうことにしました。浮遊魔法は覚えておいて損はないでしょう。楽しそうということもありますけれど。


「浮遊魔法は魔力を体中に纏わせて、体じゃなくて魔力を動かすことで動くんだよ!」


「やってみますね」


 魔力を体に纏わせると、動くのが楽になります。浮遊魔法を覚える過程で、良いことを教えてもらいました。


 〈身体強化を取得しました〉


 体が軽く感じるのは、身体強化とスキルおかげなのですね。スキルを使ってしまえば、筋力が鍛えられなさそうですね。いざというときに使いましょう。


「うん、上手だよ! その纏った魔力を動かせば、浮遊魔法が使えるよ」


 転びそうになってしまいますが、浮かんではいますね。あとはコントロールができるようになれば、切り札として使えるようになります。


 〈浮遊魔法を取得しました。負荷耐性を取得しました〉


 浮遊魔法を取得したのは納得なのですが、負荷耐性はなぜ取得したのでしょうか? 気圧の負荷を抑えるために、浮遊魔法と同時に取得したのかもしれません。


「コントロールも上手になってるよ! あとは練習あるのみだね!」


「頑張ります」


「頑張ってね、ノウィーお姉ちゃん」

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