第31話 妖精は不思議な存在です
「いやぁ、そうじゃの。わしは本が好きすぎて図書館に籠りっきりなのじゃ! うぅ、恥ずかしいのじゃ!」
「わかります! 私も本を読んでいると時間を忘れて、図書室に籠りっきりになってしまいます」
「わかってくれるんじゃな! お主をあるじに選んで良かったのじゃ!」
「それは光栄です。もう少し本を読んでからになりますが、もしよければ本について語り合いませんか?」
「楽しそうじゃ! どういうことなのじゃ? 本が好きなのに、読んだことないのはおかしいのじゃ」
リベルにもゲームのことを話しましょうか? 本の内容を全て覚えるためには、本に費やす思考の場所を空けておかなければなりません。
そのため、意味のないことは覚えようと思わないでしょう。簡潔に話せば良いですね。
「私はこの世界の人ではないので、違う世界の本を読んだことしかないのですよ」
「そういうことなのじゃな…………って、違う世界の人じゃと!」
「そうですよ。違う世界から、この世界に来ています」
「そうなのじゃな。良いことを思いついたのじゃ! わしはこの世界の本のことを話して、あるじはあるじの世界の本のことを話せば楽しそうだと思うのじゃ」
リベルがこの世界の本のことを話してくれるのですか? そして私は自分の世界の本のことを話すということですね。想像してみると、心が躍ります。
「それは楽しそうですね!」
「絶対に楽しいのじゃ! 今日はここまでじゃの。あるじのことをホーラが呼んでいるのじゃ。これと、これなのじゃ! この二冊は絶対に読むのじゃぞ?」
〝契約師について〟という本と〝妖精術について〟という本を渡されました。
ふむ。ディーネの使う精霊術と同じように、妖精が使う妖精術というものがあるのですね。
あとで見てみましょう。リベルにお礼を伝えようと振り向いたのですが、いなくなっていました。小さいので隠れる場所がたくさんありそうですね。
「ノウィル様、こちらにいたのですか」
ホーラにそう言われたのですが、ホーラが私を探し当てた場所はリベルの部屋ではありませんでした。
なぜでしょう? 本は手に持っているので一緒にいたのでしょうが、リベルがいたという痕跡が全くありません。
もしかして、これが妖精術なのでしょうか? リベルが意味のない本を持たせるはずがありませんからね。
「その本はどこから持ってきたのですか? あの方が認めない限り本を読むことはできないはずです」
「あの方ですか?」
「はい。この図書館の司書をしている司書妖精です。あの方は重度の本好きですから〝自分と同じぐらいの本好きじゃないと認めないのじゃ!〟と言っていました」
絶対にリベルですね。思ったよりも似ています。それにしても、リベルはそんなことを言っていたのですか。
ホーラがあの方と言っていましたから、ホーラよりも生きているのかもしれません。
「そうなのですね。リベル…その司書妖精とは契約しましたよ」
「相変わらず報連相がなっていませんね。リベルと名付けたのですか。良い名前ですね」
「ありがとうございます」
報連相はここでも使うのですね。もしかしてここにも、通話のような伝達魔法があるのでしょうか? 覚えられるのなら、覚えてみたいですね。
「リベルはこの図書館が作られたときからいるのですか?」
「そう言われています。私達はここに来たときの記憶が曖昧ですから、ここに閉じ込められている理由は全くわかりません」
「閉じ込められているとは、どういうことですか?」
「浮遊しているので、地上に行く手段がないのですよ。転移魔方陣があれば地上に移動することができるのですが、未だ見つかっていません」
転移魔方陣というものがあるのですね。その転移魔方陣がないということは、意図的に閉じ込められているのかもしれません。
どういうつもりで閉じ込めているのかはわかりませんが、一方通行のはずはありませんからね。どこかに転移魔方陣があるのでしょう。
「緊急事態に備えて訓練をしないといけません。どうしましょうか?」
そういえば、ダンジョンには魔物がいるのですよね? ホーラがその魔物を食料にしていると言っていましたから、間違いないでしょう。
ということは、どこからか動物の入り込む隙間があるのですね。魚が空中にいるはずがありませんから。
転移魔方陣の存在有無は定かではありませんが、どこかに繋がっているということは間違いありません。
「ダンジョンの最下層は六階層なのですよね?」
「そうです。違うのでしょうか」
「コアは見つけましたか?」
「ずっと捜索しているのですが、コアはどこにも見当たりません」
そうなのですか。そのコアのところに秘密があると思います。魔物が生み出される方法は聞きましたが、ダンジョンの発生方法を知りません。
ホーラは知っているでしょうか? 聞いてみましょう。
「ダンジョンはどうやって発生するのでしょうか?」
「ダンジョンの発生源は魔素溜まりです。魔素が分散しないまま留まっている場所のことを言います。魔素溜まりにある魔素はやがて構築されて、ダンジョンへと生まれ変わります。ダンジョンの再生には魔素ではなく魔力が使われているので、機械種には魔物として扱われていました。他の種族にどう思われているのかは知りません」
「ちなみにホーラはこの図書館をどう思っていますか?」
「ダンジョンに建てられた変わった建物だと思っています。それがどうかしましたか?」
わかったかもしれません。可能性としては低いのですが、行ってみましょう。
リベルに聞いたのですが、コアを壊されると再生ができないので、コアは最下層にあることが多いようです。
隠し部屋にコアがあるところもあるようですが、この場所には絶好の隠し場所があります。
「最上階はどこでしょうか?」
「案内します」
数十分ほど歩き続けたでしょうか? なぜこんなにも広いのでしょうか。文句を言っても仕方のないことですけれど。
ようやく最上階に着きました。疲れましたね。少し休憩しましょう。
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