第30話 司書妖精リベル
〈エクストラクエスト〝記憶の喪失〟が終了しました。クエスト達成により、宵闇の図書館の全権限の移行を行います。完了しました。ダンジョンマスターを獲得しました。ダンジョンマスターの称号効果によって、魔物の言葉がわかるようになります〉
ダンジョンマスターということは、ホーラが言っていた地下にあるダンジョンのマスターになったということですね。
全権限の移行ですから、ダンジョンを管理する役目が私に与えられたのでしょう。
〈国主を獲得しました。国主を獲得したため、国民に好かれやすくなります〉
国主とはどういうことでしょう? 六階層を改装して、千人ほど住んでいると言っていましたね。もしかして、その者達が国の民ということしょうか?
〈ダンジョンマスターを獲得したため、支配域を取得しました。国主を獲得したため、幻想郷を取得しました〉
不思議なスキルを取得しました。使ってみないと効果がわかりませんね。
ダンジョンの関係で支配域というスキルを取得しましたから、ダンジョンで使ってみましょう。
支配域というスキルは少し想像ができますが、幻想郷というスキルは全く想像できません。
「ご主人様っ! さっきはカエルムを助けてくれて、ありがとうございますっ」
「私が助けたわけではありませんよ。私に感謝するのでしたら、みんなにも伝えてあげてください」
「わかりましたっ! 伝えてきますっ」
あっという間に行ってしまいました。なにをすれば、あんなに速く走れるのでしょうか? あそこまで速くなくて良いのですが、早く走ってみたいですね。
「とりあえず、ダンジョンについて知りたいですね。大変そうですが、図書館から探し出しましょう」
ホーラはディーネを連れてどこかに行ってしまったのですよね。ホーラが傍にいたら、本に書いていない話まで聞けるのですが……仕方ありませんね。
「どこに行ったらいいでしょうか? 図書館というだけあって、ほとんどの部屋に本が置いてありますからね」
光が漏れている部屋がありますね。誰かいるのでしょうか? 本がある部屋みたいですし、入ってみましょう。ダンジョンの本ある場所は全くわかりませんけれど。
「本を探しているのじゃな? わしにお任せあれじゃ!」
「どこから聞こえるのでしょう?」
「ここじゃ、下を見るのじゃ!」
下を見てみると、掌に乗るほど小さい妖精の子供がいました。人型なこともあって、より小さく見えますね。フルメンとマルよりも、小さいのでしょうか?
「本への思いに免じて許してやるのじゃ!」
「ありがとうございます。さっそくですが、ダンジョンことが書いてある本の場所を教えてほしいです」
「それなら、まずは契約が先じゃ! わしは司書妖精なのじゃよ」
「そうなのですね。では、書物という意味のリベルはどうでしょう?」
「リベルじゃな? あるじ、これからよろしくなのじゃ!」
気に入ってくれたようで良かったです。リベルは黄土色の髪を腰まで下ろしていて、黄緑色の瞳をしています。
小さいので目立たないですが、頬に黒色の入れ墨があります。ハートを半分にしたような形をしていて、その中に複雑な模様が描かれています。
「その頬の入れ墨はどういうものなのですか?」
「知らないのじゃ? 契約紋っていうのじゃよ。野良妖精と見分けるために、契約者のいる妖精は契約紋が浮かび上がるんじゃ。契約してる妖精はわし以外にもいるじゃろ? 契約する妖精によって模様が違うから面白いから、見せてもらうと良いのじゃ」
見えない場所にあるのかもしれませんね。機会があれば、見せてもらいましょう。どんな模様なのでしょう?
そういえば、私の瞳の中にも模様が描かれているのですよね? 私もみんなとおそろいですね! とても嬉しいです。
「あるじ、どうしたのじゃ?」
「私の瞳にも模様があるから、おそろいだと嬉しく思っただけですよ」
「確かにそうじゃな。おそろいのものというのは、嬉しく感じるものじゃ」
私よりも生きているような貫禄があります。人を見た目で判断してはいけないと言いますが、確かに妖精も見た目で判断してはいけないのでしょう。
人ですら良くわからないというのに、妖精という現実にはいない存在ですから、見た目で判断できるほどの知見もありません。
「それで、ダンジョンのことが書いてある本の場所じゃな? 着いてくるのじゃ」
ゲーム内での初めて読む本ですね。色々なことがありましたから、本を読めなかったのですよね。
魅惑的な本が近くにあるというのに、読めないのは苦痛でした。やっと読めるので、いつもより楽しみです。
「まずは〝ダンジョンについて〟を読むと良いのじゃ」
初心者に知ってもらいたいことが書いてあるようです。リベルはその者に合う本を選ぶことができるようですね。
とても良い司書です。これからも私が読みたい本や興味を引く本を教えてもらいましょう。リベルなら絶対に私の望む本を選んでくれる気がします。
「よろしくお願いしますね、リベル」
「こちらこそなのじゃ!」
リベルが用意してくれた部屋で本を読みます。ふむ。ダンジョンはコアというものを核として存在しているのですか。
ダンジョンに入ってきた動物に魔力を帯びさせて、その状態で一か月間をダンジョンの中で過ごすと魔物へと変化する。
ということは、魔物はダンジョンから生み出されるということなのですね。さらに興味深いことがわかりました。
ダンジョンは生み出した魔物の命を糧として生きているようです。
「怖いじゃろ? 人間はダンジョンにある宝物欲しさにダンジョンに入るんじゃ。ダンジョンが魔物化させる動物には人間も入っているから、屍人が生まれるんじゃな。ダンジョンから生まれる魔物は動物からじゃから、その魔物の名前を呼ぶときは〝屍〇〇〟と呼ぶんじゃよ」
「そうなのですか? ダンジョン以外で生まれる魔物もいるのでしょうか?」
「そうじゃの。なんらかの理由で大量の魔力を浴びた場合に魔物が発生するはずじゃ。そのときは大量発生する場合が多いから、スタンピードと呼ばれて恐れられてるそうじゃよ? わしは体験したことがないのじゃがな」
笑ってなにかを誤魔化すように私から顔を背けています。どうしたのでしょうか?
どこにも聞かれて悪いことはなかったはずです。聞かれたくないのなら、聞きませんけれど。
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