第3章 閑話1
第22話 友達のお姉さん
「ノウィルという名前のプレイヤーのことを、知っていたりは……しませんよね?」
パーティーを組んでる現実でも友達のウィレンが、僕にこそこそと話しかけてきた。
別にこそこそするほどのことじゃないのに。ウィレンは銀髪碧眼でとても綺麗な顔立ちをしている。
女の子にめちゃくちゃモテるんだよね。気付いてないけど。
「知らないよ? 聞いたこともないし、今まで名前が挙がったこともない」
「そうですよね。やはり、お姉様でしょうか」
「お姉様ってよく話してる?」
「うっ、そうです」
ウィレンはシスコンを隠したがってるみたいで、お姉さんのことあんまり話してくれないんだよね。
だって、今の今まで名前も教えてもらえなかったんだもん。
「お姉様にゲームを勧めはしましたが、こんなにも早くワールドアナウンスで名前が流れると思っていませんでした。そのこともあり、琉生…ルゥに聞いた次第です」
ただ、それだと女の子っぽいからルゥにしたんだ。読めなくもないでしょ?
「そっか。だから、情報通の僕に聞いたってことなんだね」
「そういうことです。それにしても、その情報を自分自身に使うことは、できなかったのでしょうか?」
「う、うるさいなあ」
銀色よりの青い髪を首の辺りで纏めて、光の加減で変わる紫色の瞳にしたんだけど……。
それが女っぽく見えるみたいで、男の人に見えてほしいっていう願望と真逆になっちゃったんだよね。
ウィレンはお姉さんのことを言われた腹いせに僕を揶揄ってるのかな? 珍しいから怒らないけど。あっ、他の人だったら怒るよ?
「ログアウトしたら、お姉様に聞いてみないといけませんね」
「なんで? メールすれば良いんじゃないの?」
「メール機能を知らないという可能性が高いので、メールをしても時間の無駄かと」
「えっ! 嘘でしょ、そんな人いるの?」
「はい。先程は可能性と言いましたが、ほぼ確実に知らないといえるでしょう」
知らないって逆に凄いような気がする。僕がゲームを教えてなかったら、ウィレンも同じ感じになってたのかな?
ウィレンがゲームをしていない状況を考えると、ちょっと面白い。
僕が教えたせいではあるけど、ウィレンがゲームしてない姿って想像つかないもん。
「そうなんだね。じゃあ、また後で聞いてきてね」
「時間が合わないかもしれませんので、明日までには聞いておきます」
「うん、よろしくね」
僕がウィレンの言葉に返していると、手を振る金髪灼眼というどこかライオンをイメージさせるラノンがやってきた。
前にライオンって言ったら、獣人族だから、耳と尻尾をしゅんとさせていた。
僕とは違って、普段は厳ついから可愛い系を目指していたらしい。みんな、悩みはあるよね。
「そういえば、ノウィルって誰なんだ?」
「ラノンも気になった? ウィレンのお姉さんだって」
「えっ、本当にノウィル様なのか。会いたいな、久しぶりに」
「なんで知ってるの? というか、ノウィル様ってなに?」
ラノンがウィレンのお姉さんに会ったことあるとか初めて聞いたんだけど。
それよりも気になるのは、お姉さんに〝様〟って付けてるとこだよね。誰でも気になるんじゃない?
「俺、ノウィル様を見守る会の親衛隊長だから」
「はあ? なにそれ」
「ああ、学校が一緒だったんだ。ノウィル様がウィレンのお姉様だって最初の頃は知らなかったんだよな。桜のような儚さを醸しだしてて、なんか心配だったんだけど……なんやかんやあって、学校内でノウィル様を見守る会を作るぞって。それで、俺がノウィル様を布教してたから、親衛隊長になったってわけ」
布教ってなにそれ? っていうか、厳つい男が布教する姿って笑えるんだけど。
たまに僕の黒い面が顔を出しちゃう。最近は抑えられてきたと思ったんだけどなあ。
ふとしたときに、出ちゃうんだよね。口に出さなかっただけ、ちょっとマシかな?
「ちょっと黒い顔すんな。まあ、俺の布教する姿が面白いとか思ってたんだろうけど」
「良くわかったね! あっ」
「気にしなくて良い。どれだけお前と一緒にいると思ってんだ?」
「厳つい顔だけど、やっぱ良い奴だね」
「厳つい顔は余計だ!」
二人で話していると、ウィレンが拗ねていた。意外とウィレンって無表情に見えて、表情があるんだよね。まあ、僕達にしかわかんないみたいだけど。
「ウィレンも気軽に話に入ってくれていいんだぞ?」
「そうそう。遠慮しなくて良いよ」
「そうですか。わかりました、遠慮しないで言わせてもらいます。お姉様のことを語るなら、ちゃんと語ってください。お姉様がどれだけ素晴らしい人物なのか、お姉様のたまにお転婆になるところなど、語るところはたくさんあります」
「おおっ、シスコンはもう隠さなくていいのか?」
僕も思った。ウィレンのほうをじっと見てみると、恥ずかしそうに耳を赤く染めていた。
僕と目は逸らさなかったけど。たぶんシスコンを隠してたのは、単純に恥ずかしかっただけっぽいね。
「二人に知られているのですから、隠す必要もないでしょう?」
「そうだね。隠そうとしてるのも、可愛くて良かったけど」
「可愛いと言わないでほしいのですが、息をするように可愛いと言葉が出ているので注意するのも無駄でしょうね」
「正解! 良くわかってるね」
「わかるだろ! 俺のことだって、面白がってるくせに」
まあ、こんな感じでいつもくだらない雑談ばっかり。でも、そういうのが一番楽しかったりするんだよね。
ウィレンのお姉さんに会いたいと思ってたけど、敵として会うなんて…このときの僕達は予想してなかったんだ。
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