第13話 魔法と古代魔術の違い

「スペアリブのジャム煮でございます。セフィロトの樹の実で作ったジャムでスペアリブを煮込みました。お米とパンがありますが、どちらにしましょうか」


「お米でお願いします」


 とても良い匂いがします。スペアリブが見るからに柔らかそうで、美味しそうです。


 違いました。美味しそうではなく、絶対に美味しいです。食べていなくても断言できます!


 お米も艶がありますね。スペアリブとお米の組み合わせは合うと思います。


「では、いただきます。んんっ! とても美味しいです! ジャムの甘さと塩味の相性が抜群ですね。甘みの奥にある果物特有の爽やかさが、アクセントになっています。しっかり味のある大根もとても美味しいです! お米と一緒に食べると、より美味しく感じます。パンに挟んで食べるのも美味しいでしょうね」


「お褒めいただき、ありがとうございます。スペアリブをパンに挟んだものは、夕食にご用意いたしましょう」


「ありがとうございます。パンに挟んだものも食べたかったので、食べられるなんて嬉しいです」


 ホーラの料理は美味しいので、同じ料理を何度も食べたいぐらいです。違う料理も美味しいので、同じ料理を食べたい気持ちもありますが、我慢してます。


 お米と一緒に食べるのと、パンと一緒に食べるのは全然違うのです。どちらも食べたいと思うのは欲張りでしょうか?


「ごちそうさまでした。美味しかったです」


 〈食事により、ステータス値が向上しました〉


  またステータス値が向上しました。規則正しい生活をすると、ステータス値が向上するのでしょうね。


 食事の終わりや寝起きにアナウンスが流れるのでしょうが、今度からは無視します。


「まだ時間がありますね。魔法と古代魔術の違いの話をしましょうか」


 まだ時間があるというのは、どういうことでしょう。何の時間のことを言っているのでしょうね。気になりますが、聞くほどのことでもありません。


「わかりました。その前に何月なのかを教えていただきたいのですが」


「今日は水月の十五日です」


「水月ですか?」


「はい。古代魔術に関係してきますので、詳しく話していきます。その前にまずは魔法からですね。魔法は魔力を術式に変換させて使います。そのため、魔方陣を描くことが重要となってきます。魔方陣は魔力を媒介として、術式に変換する力を持ちます。その術式は魔方陣を正しく描かないと発動しません」


 大変そうですね。魔方陣を描くのも大変そうですが、それよりも魔方陣を理解するまでが大変そうです。


 正しい完成した魔方陣から、少し効果の違う魔方陣を描くのは簡単かもしれませんけれど。


 完成した魔方陣があるということは、その魔方陣を描いた人がいるということです。


 その人は偉い人に使い潰されるのでしょうね。ご愁傷様です。


「はっきり言って、繊細な魔方陣を自分で描くのはお勧めしません。最初の頃は魔方陣を手描きで描いていましたが、スキルを取得できるようになってからは、スキルに頼ることとなりました。スキルに頼れば、魔方陣は必要ありませんからね。結果、魔方陣は廃れました」


「そうでしょうね。苦労して魔方陣を描いたとしても、その魔方陣が間違っていたとしたら。効果は弱くなるけれど、魔方陣を描く手間はない。そう考えれば、スキルに頼る人が増えるでしょう。魔方陣が間違っていたら、せっかくの苦労が台無しですしね」


「ええ、そうです。苦労に見合わないという決断が下されました。次に古代魔術ですね。地月、水月、風月、火月は四大精霊様が完全に顕現できる日を指しています。土の精霊様であるノーム様、水の精霊様であるウンディーネ様、風の精霊であるシルフ様、火の精霊であるサラマンダー様が顕現できる日が八十日ずつと決まっており、月日の名前に四大精霊様の司る属性を使用することで敬う気持ち込めたのです」


 ここで精霊がでてくるのですね。ホーラの説明的に精霊は四大精霊であるノーム、ウンディーネ、シルフ、サラマンダーしかいないようです。


 今は水月なのでウンディーネ様が顕現できるのでしょう。私が読んだ本には霊でも人でもない存在と記されていました。


 普段は霊体で過ごしていて、顕現すると実体で過ごすことができるのではないでしょうか? さすがにそれだけでは、敬うほどの存在とは言えません。


 ですから、霊体のときは力が軽減し、実体のときは地形が変わるほどの力が出せるのではないでしょうか。


「古代魔術は顕現した四大精霊様の力を借りることで、国を一掃できるほどの力を得られます」


「魔法は四大精霊様のような力を、気軽に使えるようにした力ということでしょうか」


「はい。そうなりますね。模造品人間のくせに生意気だと最初の頃は思いましたが、今では純粋に称賛しています」


 〈エクストラクエスト〝魔法と古代魔術の違い〟が終了しました。達成報酬はエクストラクエスト〝魔術の心得〟の発生です〉


 魔術を覚えるのは楽しみです。使いどころを見定めないといけませんね。それよりも、人間が模造品とはどういうことでしょう。


 ホーラは機械種ですよね。人間と直接的な関係はないように思えますが。


「模造品とはどういうことですか?」


「実は人間は、私……機械種を模倣して創られた存在なのです。言われたことを淡々にこなす、ただの機械でした。最初の主様神様が人間を褒めているのを聞いたのです。そのとき、怒りがこみ上げてきました。それが私の初めての感情です」


 もしかしたら、ホーラは世界初の感情を持ったAIなのかもしれません。それも、私の話で自我が目覚めたというAI。


 私が好きなものを詰め込んで創られた私のためだけの少女。すっかり忘れていましたが、もしそうなのだとしたら。これほどまで嬉しい再会はありません。

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