第12話 雷妖精と仲良くしよう
「毛玉のようですね。白くて触ったら、もふもふとしていそうです。浮いていますが、風がありませんね。どのような原理なのでしょう」
誘われるようにふわふわの毛玉へと手を伸ばします。静電気が発生しているようで、少し指が痛くなります。
毛玉に近づくほど静電気が強くなりますが、辛いほどではありません。
「触っちゃ駄目っ!」
「どういうことですか? 大人しく撫でさせてくれますよ?」
「ふえっ! ど、どういうことっ?」
「痛くないのです?」
そういうことでしたか。静電気が発生しているため、近づくと痛いということですね。可愛さに勝るものはないので、痛みは我慢できるのですよ。
「少し痛かったですが、もっと痛い静電気はありますからね。全然大丈夫ですよ?」
「静電気っ? 普通に雷撃を食らわせてくるんだけどっ?」
「主様は妖精に好かれやすいのです。この子は温室に住み着いている雷妖精なのです。もう少し大きくなると、人型になれるのです」
妖精は毛玉のような形から生まれ、やがて人型になることができるということですか。そもそも、なぜこの形のままでは駄目なのでしょうか?
この姿でも十分に可愛いではありませんか。人型になる必要はないのではと疑問を持ちます。
毛玉のような妖精が話せるようになり、やがて人型になるというのは、ゲームの要素として良いものなのかもしれませんね。
やはり、相棒が話せるというのは憧れますし。
「ボク、スキ! ナマエ、ホシイ!」
「か、可愛いです! 名前が欲しいのですか? わかりました。少し考える時間をくださいね」
瞳はどこにあるのかわかりませんが、私の手に擦り寄って〝スキ〟と言ってくれました。とても可愛いです。私は思ったよりも、可愛いもの好きなのですね。
「稲妻という意味のフルメンはどうでしょう?」
「フルメン、フルメン! ボク、フルメン!」
フルメンから光が放たれます。これはもしかして。人型にならなくても良いのですよ?
人型になっても可愛がりますが、どうなるのでしょう。光が収まりました。結果は!?
「僕、進化したよ! ありがと!」
「毛が金色になったのですか。とても可愛いですよ。似合っています」
心配は杞憂でした。毛玉のままで、毛の色が少し金色になりました。相変わらず瞳の位置はわからないままです。
一番変わったことと言えば、言葉が流暢になったことでしょうか。
「ほんと! 嬉しい! 褒められるの嬉しいな! ねえ、ねえ! ずっと一緒にいても良いよね!」
「良いですよ。そうでした。私の名前はノウィルです。これからよろしくお願いしますね」
「それじゃあ! 一緒にいても良いんだね! 嬉しいなあ! これからよろしくね! ご主人様!」
フルメンも可愛いですね。フルメンのふわふわとした感触がたまりません。この感触は人型になってもなくなってほしくありませんね。
ほのぼのとした気分になっていると、視線に頬を膨らませたウェスペルが見えました。どうしたのでしょう?
「ご主人様は駄目ですっ! ご主人様と呼ぶのは許しませんっ」
そういうことでしたか。ウェスペルだけがご主人様と呼んでいましたね。ご主人様という呼び方は私だけのものということですね。
「フルメンはどうしますか? 私をご主人様と呼びたいですか?」
「じゃあ! ご主人さまって呼ぶ!」
「ちょっと違うから良いよっ!」
「ほとんど変わらないのです」
私もカエルムと同じことを思いました。違うところを挙げるとすれば、ウェスペルの〝ご主人様〟に比べて、フルメンの〝ご主人さま〟は可愛い感じがしますね。
理由がわかりましたよ。フルメンの〝ご主人さま〟は少し子供っぽい感じに聞こえるようです。
「一件落着ですね。呼び方を決めるだけですし、あまり長引かなかったのは良かったですね。喧嘩をしたというわけでもありませんでしたし」
「確かにそうなのです」
ウェスペルとフルメンが仲違いしなくて良かったです。一度打ち解けてしまえば、楽しそうに話し始めていますね。
「私はウェスペルだよっ。これからよろしくねっ! フルメンっ」
「ウェスペルお姉ちゃん、よろしくね!」
「か、可愛いですっ!」
フルメンの可愛さはウェスペルの心も鷲掴みにしているようです。もちろん私は鷲掴みにされていますよ。
フルメンの可愛さはもちろんのこと、もふもふの毛並みにも鷲掴みにされています!
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