第4話 うちのメイドは思っている以上にすごいです

 ホーラにとんとんと背中を優しく叩かれていたらあっという間に寝てしまいました。


 そして朝である今、ものすごくすっきりしています。ベッドがとてもふかふかだからですかね。


 現実でも寝具を新調しましょう。そして、今更ながら睡眠の重要さを自覚しています。


 〈睡眠により、ステータス値が向上しました〉


 上昇ではなく向上なのですね。上がってはいないけれど、質がよくなるということでしょう。


 それは上がっていると同義ではありませんか? 思ったよりも睡眠は必要なのかもしれません。


「ノウィル様、お目覚めになられたのですね。朝食をご用意いたしました。お飲み物はどうなさいますか」


「レモネードが飲みたいです。ありますか?」


「はい、ございますよ。色々なものを取り揃えておりますので、欲しいものがあればお聞きください。大抵のものはご用意できます」


 すごいです。万能メイドですね。ですが、あまり無理はさせたくないです。


 それにしても、朝食まで食べることになるとは思っていませんでした。ホーラが作った食事は美味しいでしょうね。


 なんというかホーラは、熟練のメイドという雰囲気を出しています。


「あっ。レモネードなのですが、氷も入れてほしいです」


「わかりました。朝食をお持ちしますので、少々お待ちください」


 朝食を食べるのならば、食堂に行きますよね。寝起きだからと配慮してくれたのでしょうか。


 広い食堂でぽつんと一人で食べるのは可哀想だと思ったからかもしれません。確かに一人で食べると寂しいので、ここで食べるというのは良い案でしょう。


「お持ちしました。今日の朝食はパンケーキにいたしました。生クリームやラズベリーとお食べください。甘いものですので、レモネードは甘さを控えめにさせていだだきました。ゆっくりと味わってお食べください」


「いただきます。んんっ! とっても美味しいです。バターの風味がたっぷりのパンケーキに、濃厚な生クリーム。少し酸味のあるラズベリー。全てが合わさると、表現できないほど美味しいです! レモネードも甘いだけではなく、酸っぱさもあるのでたくさん飲みたくなる味で…。もう堪りません!」


 ものすごい勢いで私はパンケーキを食べます。だって美味しすぎます。ホーラの料理は世界一です。


 私が自分で作った料理は、食べる価値なしと判断しそうなぐらい美味しいのです。


 もうホーラの料理以外では満足できません。これが胃袋を掴まれるということなのですね。


「お褒めにあずかり光栄です。ノウィル様はとても美味しそうに食べるのですね」


「そうですか?  ホーラの料理が美味しいだけだと思います」


 話をするのは大切ですね。いつもより食事が美味しく感じます。ホーラの料理の腕前が凄いというのはもちろんですが。


「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」


 〈食事により、ステータス値が向上しました〉


 食事も大事なのですね。それにしても本当に美味しかったです。昼食は食べたいもののリクエストをしたいですね。


「ありがとうございます。昨日のうちにノウィル様の部屋を整えておきましたので、ご案内いたします」


 そういえば、私の部屋を用意すると言っていましたね。どちらかといえば、ここは男性の気に入る内装のようですから。


 さすがに可愛すぎるのは嫌ですね。適度に可愛い部屋が良いと思います。言わなくてもわかってくれているといいのですけれど。


 もし可愛すぎたとしても私が言わなかったことが原因ですから、ホーラのことを責めることはありませんよ。


 そこまで我儘ではありませんし、子供でもありません! ホーラに期待しているというだけです。


「そういえば、私って何歳に見えるのでしょう?」


「見た目だけで言えば、十二歳ほどに見えます。ですが、言動を加味すると十二歳では幼すぎます。ですから私は、ノウィル様のことを十六歳ほどだと認識しています」


「当たっています?」


 思わず疑問で言葉を返してしまいました。だって、おかしくないですか!?


 本当に私は十六歳なのですけれど、なぜわかるのでしょう。もうホーラのことだったら、何があっても驚かないです。


 ホーラは思っていた以上にすごいのですね。


「ノウィル様付きの侍女と執事を選んでおきましたので、不便なことがあればお申し付けください。私は主にお屋敷の案内をさせていただきます」


「侍女と執事ですか。ここに人はいませんよね? 誰が侍女と執事の仕事を任されているのでしょうか」


「侍女の二人は侍女妖精と呼ばれる侍女の仕事を生きがいとした妖精です。補足しますと、妖精というのは感情から生まれます。侍女の仕事に誇りを持った少女の感情が具現化し、妖精となった存在が家事妖精です。執事の一人は先程の侍女妖精と同様に執事妖精でして、執事の仕事を生きがいとした少年から生まれた存在です。私は機械種と呼ばれる存在ですね。機械種は衰退した種族で、今は私以外にはいないと思います。全てを見通すことのできる種族とも言われていますね」


 〈エクストラクエスト〝宵闇の図書館の守護者の正体〟が終了しました。宵闇の図書館の守護者の正体は神話時代の伝説の存在である機械種。実は神話に出てくる血染めの機械種とは宵闇の図書館の守護者のことです〉


 なにやら物騒な言葉が聞こえてきましたね。血染め…想像するだけで恐ろしい。ホーラは怒らせないようにしましょう。


 〈クエスト達成により、アルカナを取得しました。取得条件はエクストラクエストをゲーム内時間、二日以内で達成することです。アルカナはタロットの大アルカナに属する二十二の存在を呼び出すことができます〉


 まだアナウンスが続くのですね。それにしても、タロットを元にしたスキルですか。


 面白いですね。存在ということは人格があるのでしょう。気になるのであとで呼んでみましょうか。


 〈ワールドアナウンスです。プレイヤー名ノウィルにより妖精の発現について解明されました。以後、種族概要が書かれている本に妖精の記述が増えます。又、機械種についても解明されました。機械種について神話の記述が増えます。プレイヤーはキャラクタークリエイトで妖精、機械種を選択することができるようになりました〉


 もうこれでアナウンスは終わりですよね? 終わったと思ったらアナウンスが続いて驚きました。

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